33 負けを知る事




立海では本日から部活の本入部受付が開始された。
仮入部時点で既に入部を決めていた者も、本格的に部活に参加出来るのは今日からだ。
昨年、幸村と真田と柳が仮入部の時点で既にレギュラーと試合をしていたのは、勿論異例中の異例であったのは言うまでもない。
今年は特にそのような特例もなく、男子テニス部でも通常通りの本入部受付が始まった。


「にしても多くね?俺らの時より断然!」

「だな……これも全国制覇した事と、幸村達の存在の影響だと思うが」

「あー……なるほどね」

「ミーハーそうな奴も目立つしな」

「さあて、この中の何人が一か月後に残ってるか……」


ブン太はそう言うと、ガムを膨らました。


受付には人だかりが出来ており、ここを任されている新二年生はあまりの人の多さに慌てていた。
ブン太とジャッカルは列の整理に回り、柳はカウンターを片手に新入生の人数を数える。
柳生は受付の椅子に座り、入部希望者から名前とクラスを聞く係を、仁王はその傍らで欠伸をしていて柳生に怒られていた。

そんな中、桜華と幸村、そして真田は部室に来ていた。
朝練の時に部長に呼ばれていたのだ。
何故呼ばれたのか全く見当のつかない三人だったが、部長に呼ばれてはと部室に足を運んでいた。


部室に着くとまだ部長は来ていなかったため、彼の到着を暫く待つ事にした。


「部長、どうしたんだろうね……何か問題でもあったのかな?」

「そうだね……俺も特に思い当たる節はないし」

「うむ。事情は部長から聞くしかないが、気になるな」


三人で部長は一体何の用なんだろうかという話を暫くしていると、部室のドアが開いた。


「ああ、三人とも来ているな。遅れてすまない」

「大丈夫ですよ!……それよりもどうしたんですか?」

「いや、新入部員の事なんだが……」

「新入部員、ですか……?」


去年の秋に部長になった眞下が不安そうに口を開いた。
新入部員の話らしいが、まだ今日から本入部の受付が始まったばっかりだ。
そんな傍から、彼は一体何を不安に思っているのだろうか。
三人はますます訳の分からないと言った様な顔をした。

彼等の反応はごもっともだと思いながら、眞下は更に重苦しい口調で続けた。


「俺にはとても手に負えそうにない奴がいてな」

「部長の手に負えないって……誰の事ですか?(うーん、思いつかない……)」

「切原……と言っていたな。髪の毛がワカメみたいな奴だ。凄く威勢のいい……と言うか、生意気と言うか」

「!」


眞下の口から出た「切原」と言う名前に三人は驚いた。
何故部長が知っているのだろうと。
彼は今回一度も仮入部に参加していなかった為、何もない限り面識がないはずだ。


「赤也君の事ですか……?」

「何だ、あいつの事知ってるのか?」

「あ、はい一応……でもどうして彼が?部長、赤也君と面識合ったんですか……?」


眞下は深く溜息をつくと、悔しそうに呟いた。


「この間の仮入部の日、部活が終わった後突然切原に声を掛けられてな……彼は仮入部にも来ていなかったし何だと思ったが、そこで試合を申し込まれたんだ。最初は断っていたんだがあまりにもしつこいんで1ゲームだけだと言う約束で試合をしたんだが……」

「……部長、もしかして」

「……幸村の考えてる通りだよ。完敗した」

「!」


寂しさが混じっている苦笑いを見せた眞下は、とても申し訳なさそうに「すまない」と謝った。
その表情を見た三人は何も言えなくなってしまう。
立海テニス部の部長である彼が、まだ新入生の一年に負けてしまったなど……これ程に言い辛い事はないはずだ。
気持ちを察しながら、彼にかける言葉を探す。


(どうしよう……部長になんて声をかければいいのかな……)


桜華も一生懸命に考えるものの、中々いい言葉が見つからない。
そんな重苦しい空気の中、幸村がゆっくりと口を開いた。


「……切原の事、俺達に任せてくれませんか?」

「今日はそれをお願いしようと思っていたんだが……すまない、こんな空気にしてしまって」

「構いませんよ。それに、部長に勝った実力俺も気になりますし」

「そうだな。しかしあまりに無礼な態度を取るなら、容赦はせん……叩き潰してくれるわ」

「赤也君……(大丈夫かな……はあ、何だか心配)」


桜華は部長の事、そしてこの場にいない赤也の事を心配しつつ、視線を幸村に向けた。
彼女の視線に気付いたのか、幸村は少し険しくなっていた表情をふっと和らげ「大丈夫だよ」と声をかけそっと頭を撫でてあげる。
その一言と態度に、桜華はほっと胸を撫で下ろした。


(精市なら何とかしてくれるよね……うん、今は信じるしかないや)


桜華はそう思いながら、とりあえずはこれから始まる部活に気持ちを切り替えるのだった。




「立海男子テニス部へ入部おめでとう。これから厳しい練習があると思うが、レギュラーを目指し日々頑張ってもらいたい。共に全国優勝を目指そう」

「「「はい!」」」


本入部受付が終わり、新入部員はコートに整列していた。
先程まで元気のなかった部長も新入部員の前ではしっかりと威厳を見せており、桜華は少し安心した。
流石に部長があの調子で出てきたら新入部員達は戸惑うに違いない。
そう思っていた彼女だったのだが、その心配は不要だったようだ。


(やっぱり部長は部長だね)


そう、桜華が思っていたのも束の間。
列の最後尾、一番端に赤也の姿を見つけ焦ってしまう。
彼の表情が何とも挑発的で、今にも喧嘩を売りかねない空気をむんむんと感じさせる。
眞下もそれに気付いたのか、小さく顔を歪めた。


「……部活の詳しい日程は先程配られた紙に書いてある通りだ。無断欠席は厳禁。した者には罰を与えるので心しておくように」

「「「はい!」」」

「それと、返事は『はい』ではなく『イエッサー』だ……分かったかな?」

「「イエッサー!」」


元気よく返事をする新入部員。
ただ、赤也だけは例外だった。
返事をせずに未だ挑発的な視線を送っている。
何だかこの先とんでもない事が起きそうな気がして、桜華は小さく身震いをした。


「では、ランニング後一年は球拾い、レギュラーは練習試合、それ以外の二年と三年は空きコートで打ち合い、以上解散!」

「「「イエッサー!」」」


眞下の一言で新入部員達はランニングへと向かった。
しかしその中で一人だけ動かなかった人物がいた。
それは勿論、ワカメ頭の彼だ。


「桜華先輩の彼氏って人!俺と勝負して下さいっす!」


そう彼が大きな声で叫んだと思ったら、またとんでもない事を言いだした。
辺りがざわつく。
全員の視線が今叫んだ新入部員へと向けられた。
赤也に御指名を受けてしまった幸村はと言うと、腕を組みながら真っ直ぐに彼の事を見つめていた。
しかしその視線にも一向に怯まない赤也、とんだ精神力だ。


「……俺と勝負して、君はどうしたいんだい?」

「勿論、あんたから桜華先輩を奪って、立海のナンバーワンになるんす!あんたがここで一番強いんでしょ?部長が言ってたっすよ」

「へえ……。ねえ、君は部長を倒したんだよね。どう?強かった?」


何て事を聞きだすのか、全員が同じ事を想ったに違いない。
幸村の質問に少し動揺している眞下。
しかしその質問にもきっと何か意味があるのだと、眞下は彼を信じぐっとその動揺を抑え込む。

幸村の質問に、赤也は飄々とした態度で答えた。


「あー……ぶっちゃけそんに強くなかったっすね。全然俺の敵ではなかったな!」

「そうなんだ。……ねえ切原」


赤也の返事を聞いた幸村は、すうっと目を細め、冷たい視線を彼に向ける。
先程の視線には怯まなかった赤也も、この何もかもを凍えさせてしまいそうな眼に、一瞬びくっと震えた。

そんな赤也の様子を見ながら、幸村は静かに口を開いた。


「人を馬鹿にしている間は、君は本当に強くはなれない」

「!」

「お互いの実力を認め合って初めて人は強くなるんだ」

「(精市……)」


赤也に言い聞かせるかのように強く言い放った幸村の言葉は、彼に届いたのか。
周りの人間は「どうか分かってくれ」と言わんばかりに懇願するかの様な視線を一様に赤也に送る。

しかし当の赤也はきっと幸村を睨みつけると、手に持っていたラケットをぶんっと振りかざした。


「うるせえ!何でもいいから俺と勝負しろ!」


鼓膜が破れてしまいそうな程の大声で幸村に向かって叫んだ赤也。
幸村は分かってもらえなかった悔しさと、どうにかしないといけないという重い責任感に、はあ……と一つ溜息をついた。

そして再び赤也を見据える。


「そこまで言うならいいよ、勝負してあげる。だけど、最初に相手するのは俺じゃない」

「?」

「真田、お前が最初に切原と試合をしてくれないか。1ゲームだけでいい……分からせてやってくれ」

「いいだろう。俺も最初からそのつもりだったからな」


真田はすっと前に出ると、着ていたジャージを脱いだ。
赤也は幸村が相手じゃない事に思い切り不満そうな顔をしていたが、「この人を倒したら戦ってくれるんすよね?」と幸村に問い、「勿論」と返事が来たため一気に挑発的な表情へと戻した。


「あんた強いんすか?」

「……相手をすれば分かるだろう」

「凄い自信っすね!まあそれでも……チャチャッと倒しちゃいますよ!」


舌舐めずりをしてラケットを構える赤也。
真田はその挑発的な態度にも冷静に対応していた。
対峙する二人を見て柳は「面白いものが見れそうだな……」とノート片手にコートを見つめる。
桜華は目の前で起こっている事にただただ不安に思う。


しかしそんな彼女の不安はすぐに払拭される。


(弦一郎容赦ない……!)


彼女がそう思うのも無理はない程の展開。
試合は思った以上に一方的だった。
真田の風林火山が発動した事により、赤也は手も足も出なかった。
結局、何もさせてもらえないまま、赤也は真田から1ポイントも取る事なく試合は終わった。
息を乱しコートに跪いている赤也を真田は見下ろした。


「っ、何なんすかアンタ!本当はこの部で一番強い人なんじゃないんすか!」

「たわけが。……俺はこの部で一番強い訳ではない。俺以上に強い奴はいる」


真田は幸村に目をやった。
赤也はやはり信じられないのか「嘘っす!」と真田を睨んでいた。
「本当だ」と言う真田だが、赤也にとってはあまりの強さにこれ以上を想像できなかったのだろう。

真田に負けた赤也は幸村に試合を申し込まなかった。
約束は一応守るらしい……変な所で律儀だ。

赤也はそのままコートから去ろうとしたが、それを彼の一言が止めた。


「どこに行くんだい切原。俺と試合をしないのか」

「……あの人に負けたから」

「ふふ、そんな事最初から分かってたよ。君が真田に勝てるなんて思っていなかったからね。……いいよ、俺と試合しよう」


幸村は凛とした態度でコートに立つ。


「さあ構えて。サーブ打つよ」

「っ……今度は負けねえ……!」

「(大丈夫かな……精市も容赦ないからなあ……)」


桜華の不安を無視するかの様に幸村の打ったボールが鋭く赤也のコートを抉った。
その威力とスピードに赤也は一歩も動く事が出来なかった。
「次行くよ」と幸村が言いサーブを打つも、赤也は結局1ゲーム全てのサーブをラケットに掠らせる事も出来なかった。
幸村のサーブを見て、惨い……と見ていた誰もが心の中で思った。


「っ!バケモンなんすかあんたら!(強いとか言うレベルじゃねえ……!こんな強い奴、俺は知らねえ……!)」

「失礼な。ただの一テニス部員だよ。なあ真田」

「ああ」

「そんな訳ねえ……!そんな……っ」


赤也は言葉を詰まらせたかと思うと、走ってコートから去って行った。
彼がいなくなった瞬間ざわつく部員達。
眞下が「お前ら静かに!部活始めるぞ!」と一喝したためすぐに治まったが、やはり気になるらしく皆一様にそわそわとした態度を隠しきれていなかった。
それは桜華も同じで、どうしても赤也が気になると彼女は眞下に声をかけた。


「部長、あの……!」

「どうした?」

「私、赤也君の事が気になるので……追いかけてきてもいいですか?このままじゃ、いけないと思うんです。赤也君にも、立海テニス部のためにも」

「……ああ、そうしてくれると助かる。はは、やっぱりマネージャーがいるのはいいな」

「?」

「いや、何でもない」


眞下は微笑みながら桜華の頭にぽんっと手を置いた。
彼女は許可が出た事に安心し、「なるべく早く帰ってきますね!」と言い残し赤也が走って行った方向へ追いかける様に走って行った。


暫く探していると、水飲み場に赤也の姿を見つけた。
どう見ても落ち込んでいるその様子に、桜華は少し声をかけるのを躊躇ってしまう。
しかしふっとこちらを見た赤也と目が合ってしまったため、慌てて言葉を取り繕う。


「赤也君!ほら、みんなランニング行っちゃったよ?赤也君も走らないと!もうテニス部員なんだから!自由行動は禁止だよ?」

「……俺、テニス部辞めるっす」

「どうして……?」

「あんなバケモン、どうしようもないっす……」


赤也は泣いていたのか、目を真っ赤に腫らしていた。
もしかすると負ける事に慣れていないのだろうか。
部長にも勝ったほどの実力だ、新入部員だとしても、その実力はかなり上だと言う事は分かる。
自分より強い人間が周りにいなかったのだろうか。
桜華はそう思うと何だか彼が可哀想に思えて、どうにかして彼の気持ちを分かってあげたいと思った。


(今はとりあえず赤也君を……)


赤也の弱々しい言動に、桜華はふっと優しい笑みを浮かべそのまま赤也をふわりと抱き締めた。


「桜華先輩!?」

「赤也君、テニス部辞めちゃうの?」

「……っす」

「寂しいな……まだ何も始まってないのに。赤也君と一緒に部活出来るのずっとずっと楽しみにしてたのに」

「先輩……」


桜華がもじゃもじゃの頭を撫でながら言うと、赤也は「俺だって……桜華先輩と部活したかった……」と涙声で答えた。


「じゃあ、もうつまらない意地張らないで一緒に部活しようよ、ね……?」

「でも俺は負けたんすよ……?そんな……」

「負けたら部活辞めなきゃ駄目なの?そんな事誰も言ってないし、それに負ける事って悪い事なのかな?」

「え?」


その言葉に赤也は少しきょとんとした顔をしながらも桜華を見つめた。
今まで勝つ事が全てだと思ってきた自分に浴びせられたその言葉に驚いたのだ。
負ける事は悪だとさえも思っていた赤也にとって、それは自分の考えを根底から覆される一言だった。


「負けることは全然悪い事じゃないよ。むしろ、赤也君はもっともっと強くなれる!精市や弦一郎にも負けない位強くなれる……きっとね?」

「でも俺っ……!」

「……精市達が努力もしないで強くなったと思う?」


桜華は一度言葉を切り、そして赤也に諭すように言った。


「私は精市とまだ一年しか一緒にいないし、精市は入部した時から誰よりも強かったから昔の事は分からない。だけど、テニス部にいて努力を怠った事はなかったよ。誰よりも練習していたし、強いからって自惚れる事も手を抜く事もしなかった」

「……」

「精市はレギュラーメニュー以外もこなしてた。それは弦一郎や蓮二もだけど……みんな、最初から強かった訳じゃないと思うんだ。負けて悔しいって泣いた時もあったと思うよ。でもそういう積み重ねがあったから今があると思うの。……赤也君も最初から強かった訳じゃないでしょ?」




その言葉に赤也は思い返す様に、「……最初は、ボールも全然打てなかった」とぽつりと漏らした。
桜華はそんな彼の様子にくすっと笑うと、より赤也をぎゅーっと抱き締めた。


「(む、胸が……!)桜華先輩苦しいっす……!」

「赤也君が部活辞めないって言わない限り離してあげない!」

「(そんな横暴な……!この人もなかなか手強い……!)っ、わ、分かったっす!辞めないから離して下さい……色々やばいんで!」

「(色々やばい?何だろう……まあいっか!)今の言葉、信じるからね」


桜華は悪戯っ子のような表情を浮かべると、そっと彼を解放してあげた。
色んな意味でどきどきしてしまった赤也は、けほっと息を吐きながら真っ赤な顔で目の前の彼女を見る。


「桜華先輩ずるい……」

「だって赤也君の事好きだから辞めてほしくなかったんだもん、ちょっと意地悪過ぎたかな?」

「!」


好きだから。
その言葉は赤也の心に深く刺さった。
まるで恋のキューピッドが矢を放った様なそんな感じ。
先程の言葉が頭の中でループされる。
今までまだ少しぼんやりとしていた彼女への感情が、今確信へと変わった瞬間である。

赤也はそれに気付くと更に顔を真っ赤にし、しかし次には桜華に、にっと笑いかけた。


「俺、やっぱり桜華先輩の事好きっす!」

「ふふ、うん!私も好き、赤也君の事」

「だから、あの人から絶対に奪ってみせます、桜華先輩の事!」

「赤也君なんか話がずれてない……?」

「部活も辞めませんよ!約束っす!だって、立海のナンバーワンにならなくちゃいけないんすから!」


そう言うと今度は赤也の方からぎゅうっと桜華に抱きついた。
いきなりの彼からの抱擁に焦る桜華。
「桜華先輩柔らかい……」と言いながら胸に擦り寄る赤也にたじろぎながらも、調子を取り戻した姿に内心ほっとし、ようやく安心できると桜華は思うのだった。




「精市、いいのか?」

「今だけは切原に貸してあげるよ……まあ、後でお仕置きだけどね」

「(……俺が止めるべきか?いや、いい機会だという事にしておこう)」

「胸に擦り寄るなんていい度胸だね……俺だってしたことないのに。桜華も普通にさせちゃうなんて悪い子だな。言い聞かせないと」

「……(もう何も言うまい)」


そんな二人の光景を幸村と柳が陰から見ていた事に、桜華も赤也も全く気付いていなかった。



「赤也君、部活戻ろっか」

「っす!」

「ちゃんと先輩達には敬語も使わなきゃ駄目だからね?」

「分かってるっすよ!」

「ならよし!」

「へへっ」


赤也の希望で手を繋ぎながら戻る事になった二人。
先程とは打って変わった幸せオーラが彼女達を包み込んでいる様。
赤也の表情もとても晴れやかだ。


「桜華先輩大好きっす!」

「(か、可愛い……!)うん、私も大好きだよ赤也君の事。だからこれからもよろしくね」

「はい!あ、先輩先輩、俺の事は赤也でいいっす!君っていらない!」

「じゃあ、赤也!」

「そっちの方が嬉しい!」


そんな穏やかな会話も一瞬。
戻ったコートで、先に戻っていた幸村が静かに微笑みながら「切原、桜華に手を出しちゃだめだよ?」と言いながら彼を締め上げかけた事は、新入部員全員に「絶対に彼に逆らってはいけない」という恐怖心を植え付けたのだった。




(桜華、気をつけてね?)
(え、何を?)
(切原だよ。桜華、可愛いとか思ってるんでしょどうせ)
(だって赤也可愛いもん)
(切原だって男なんだから……油断してたら駄目だよ?)
(精市心配し過ぎだよー!)
(でも胸擦り寄られてたでしょ?)
(何で知ってるの!?)
(ふふ、俺も今度させてもらおっと。いいよね、俺は桜華の彼氏なんだから)
(えっ!?(精市にされると思うと恥ずかしい……!))





あとがき

これでようやく本当に赤也が入り、いよいよフルメンバーが揃ったと言う所でしょうか?
赤也君の奮闘は、立海列伝とはまた別物になりました。
彼には彼なりの信念があると思うので、それを覆されてしまった事は大きな出来事だったのではと。
それではまた次回。