・ずっと、ずっと【後篇】※

(やけに時間がかかっているな……)


精市に教室に忘れた筆箱を取って来て貰う様にと頼んでから暫く。
彼にしては思ったよりも時間がかかっており、少し心配になる。
別に何かあった訳ではないと思うのだが、それでももしかしたらどこかで倒れているのでは……と一抹の不安を過らさざるを得ない。


(精市が病気を治してからもう三年近く経っているんだ、それはない……はずだ)


そう自分に言い聞かせながら、目の前の事に集中しようとしたその時。
やっと彼が帰ってきた……その事にほっとした俺は、次には彼に怪訝な表情を向けていた。


「(何故その様な表情をしているんだ……)精市……」

「ああ蓮二、どうしたんだい?」

「少し時間がかかっていたので心配したぞ。大丈夫だったのか?」

「平気だよ。待たせてすまなかったね」


あえて彼の表情には触れず、声をかける。
俺のこの顔を見てもあまり反応しない辺り、やはり今の精市はどこかおかしい。
ふわふわと何か幸せを振りまいている様な、そんな雰囲気。


(この数十分の間に何があったんだ……?)


流石の俺でもそこまでのデータは生憎持ち合わせていない。
やはりどうしても気になり、俺は尋ねる事にした。


「精市、先程から表情が緩み切っているが……何かあったのか?」

「え?」

「気付いていなかったのか……?」

「そんなに分かりやすく出てた?」

「ああ、ここに戻って来た時には既にその顔だったぞ」


そう指摘すると、精市は「隠せないもんだなあ」と言ってへらっと笑った。
しかしそれも幸せが満ち満ちている気がして、俺は更に気になって仕方なくなってしまった。


「して、理由を聞かせてもらおうか」

「……そうだね、今回の件に関しては蓮二にも感謝しなきゃいけないし」

「俺に?(一体どういう事だ……?)」

「うん。蓮二の筆箱を取りに行ったお陰で……」

「?」


一度言葉を切り溜める様にすると、また幸せそうに笑った精市。
そして俺も予想だにしていなかった事を口にした。


「桜華とね、よりを戻せる事になったんだ」

「!」

「ふふ、すごいでしょ?」

「流石の俺でも予想出来なかったな……まさか桜華と……。いや、何があってそうなったんだ」

「それがね……」


精市から一通りの流れを聞いた。
成程、本当に偶然の産物だったという事か。
俺も凄いタイミングで精市に頼み事をしたものだ。


(しかし桜華か……久しくその名前を聞いたな)


桜華は中等部の頃テニス部のマネージャーだった。
いつも真面目にマネージャー業に取り組み、勉強面は少し不安な所もあったものの、それでもいつも明るく媚びない、部員にも大いに信頼されていた桜華。
彼女を慕っていた者も少なからずいた。
精市もその一人だという事は勿論知っていた……そして桜華が精市を好きだという事も。
二人が付き合い始めたと聞いた時はやっとか……と、どこか親の様な気持ちでほっとしたのだが、その関係はすぐに幕を閉じてしまった。


(本人に直接は聞けなかったが、噂で聞いた話だと原因は精市の浮気だったな……)


あんなにも桜華に恋焦がれていた精市が浮気何て信じられなかったが、二人が別れたのは事実で。
その時の精市の荒れっぷりは思い出すだけでも背筋が凍る程。
部員達があまりにも怯えるものだから、精市を彼等から遠ざけたりと弦一郎達と苦労したものだ。
桜華は部活には出ていたものの、精市と別れる前に比べ俺達と距離を置くようになり……そして引退した頃にはほぼ話をしない関係になってしまっていた。


(丸井や赤也辺りは話しかけに言っていた様だが……桜華は以前の様な笑顔を見せる事はなかったな)


高等部に上がった際には、もう桜華はテニス部のマネージャーになる事はなかった。
実質、ほぼ無関係の人間同士。
クラスも同じになる事もなく、向こうも俺達を避けていたから、あえては彼女に触れる事はなかった。


(勿論全員の心に寂しさはあった……誰も口にはしなかったが)


精市は桜華と別れた後、一切の浮いた話がなかった。
いくら誰に告白されても、紹介されても……全てを一蹴。
それは絶対の確率で彼女に未練があり、そしてただ一途に焦がれていた現れだろう。
あの時浮気したのも、何か彼なりに考えがあった事なのだろうとは思うが……。


(それでも浮気は許されないな)


そして月日が流れ、今。
まさか精市と桜華がよりを戻す事になるとは、青天の霹靂だ。
こんなにも精市が浮かれているのも頷ける。
彼にとっては、思ってもみなかった事……そして何よりも待ち焦がれていた幸せだったに違いない。

俺は精市の気持ちを考えると、自然と笑みを浮かべていた。


「よかったな」

「うん、本当に……。まさかまた桜華と付き合えるなんて思ってもみなかったから、本当もうどうしたらいいか分からなくて……」

「幸せなんだろ?そのままでいいと思うが」

「ありがとう蓮二……俺、今最高に幸せだよ」


精市は今まで見た中で一番綺麗に笑った。
彼は本当に本当に幸せで仕方ないのだ。
そして同時に、俺も心の中で思っていた。


(また、桜華と話す事が出来るだろうか……)


俺も、再び桜華と話せる日を焦がれていた。


(この柳蓮二も、桜華に恋焦がれていたうちの一人だったのだから)





「精市」


私が名前を呼ぶと、精市は幸せそうに笑った。
ずっとずっとこの顔が見たくて……だけれどももう見られないと思っていたそれはあまりにも甘美だ。
精市のその顔は、媚薬の様なもので。


「何、桜華」

「……好き」

「うん、俺もね……桜華が大好きだよ」


精市の部屋で、精市の腕の中に収まりながら呟く。
中学生の時はこんな感じじゃなかったなあ……なんて思う。
精市もこんなにもがっちりしてなかった気がするし。


(中学の時は精市も色々あったしね……今は元気だから大丈夫なんだろうけど)


以前とは違う彼の身体。
あの頃よりもずっとがっちりとしていて、男らしい。
どきどきして、苦しい。


(ああもう、本当に精市が好きなんだなあ……私……)


精市とよりを戻してから、キスはした。
甘くとろけるようなキス……精市も私も三年振りのそれに、最初した時は思わず目を合わせて笑ってしまった。
でも精市はあんまりにもブランク?を感じさせないから、少しかまをかけてみた。


「精市……この間も思ったんだけど、本当にキス、久し振り……?」

「勿論だよ……桜華以外とキスなんてしてないからね。あの浮気の時だってキスはしなかったから……。ねえ、どうしてそんな事聞くの?」

「だって、全然久し振りな感じしない……慣れてるみたいな……?」

「はあ……これでも俺、すっごく緊張してキスしたんだけど?」

「そうなの?」


「当たり前だよ」と、疑われた事に少しむっとしている精市が可愛くて。
思わずくすくすっと笑うと、精市もすぐに小さく笑ってから私に尋ねた。


「……もう一回キスしてもいい?」

「あ……」

「だめ……?」

「だめ、じゃない……」

「よかった……。俺、桜華との時間を埋めるために沢山キスしたいんだよね……今まで出来なかった分も、全部するくらいに」

「どれだけすればいいのか分からないよ……」

「ふふ、どれだけでもしたいよ……桜華とのキスならね」


精市は小さく「愛してる……」と言いながらその綺麗な顔を近づけ、そして唇を触れさせた。
一度ちゅっと軽く口付けたと思ったらそれだけでは終わらず、何度も何度もちゅ、ちゅっ……と啄ばむ様にキスをする。
それがどこかくすぐったくて、もどかしくて……だけどそれでも幸せで。


(いつまでもキスしてたいって思っちゃう私は変なのかな……)


そんな事を考えていたら、段々と精市からのキスは深くなっていった。
よく考えたら、中学生の頃はこんなキスはした事なかったような……。
精市は確かめる様にゆっくりと舌を入れると、私の咥内をゆっくり舐める。
恥ずかしい、だけど嫌じゃない……初めてのその感覚に何か身体が疼いて仕方なかった。


「はっ……桜華……」

「せ、いち……ぁ……」

「嫌じゃなかった……?今の……。こんなキスはした事なかったよねあの頃は……」

「大丈夫だよ……その、何か身体がうずうずするのだけ気になるけど……」


「なんだろうね……?」と、私が言うと、精市は少し目を見開き、そして恥ずかしそうな顔を見せた。
どうしたんだろう?私変な事言ったかな?
そう思ってると、精市はやっぱり少し恥ずかしそうに私に言った。


「ねえ桜華……俺もね、桜華と同じなんだ」

「精市も身体がうずうずするの……?」

「そうだね、まあ俺はうずうずって言うかその……」


精市はさっきよりもより恥ずかしそうな顔をしていて。
本当にどうしたんだろう?
私が不思議そうな顔をしている事に気付いたのか、精市は諦めた様に……それでいて決心したかの様に私の手をおもむろに取った。

そして何を思ったのか、その私の手を自分の下半身に触れさせた。


「精市っ!?」

「……桜華が好き過ぎて、さっきのキスだけでこうなっちゃった……」

「あ、その……(精市の大きくなってる……!)」

「それだけでって思うかもしれないけど……ほら俺、童貞だしね」


へらっと言ってのけた精市は、私の手を離す事はせずそのままに、次には真剣な顔になって。
私は精市が次に言う事がなんとなく分かった。
だって、私もきっと同じ事を考えてるから。


「……桜華を抱きたいって言ったら……?」

「私、何て答えると思う……?精市なら分かると思うんだけどなあ……」

「……俺の浮気の事とかでもしまだ無理だと思ってたらと思って」


真剣な顔で言ったくせに、次にはしょげたような顔をしている彼がおかしくて。
私はくすくすっと笑ってしまった。
そして告げてあげる、彼の望んでいるであろう答えを。


「精市とそういう事したくないなんて事ないよ……。浮気の事も、もう大丈夫だから……」

「桜華……」

「あ、でも……」

「?」


そこで一度言葉を切ると、改めて伝える。


「あの時精市が彼女にしていたのと同じ様にはしないでね……?たくさんたくさん、好きって思いながら触ってほしい……」

「そんなの、当たり前じゃないか……。俺のありったけの愛を込めるね」

「えへへ、ありがとう精市……大好き」


私の言葉を聞いた精市はゆっくり私をベッドに寝かせた。
どきどきなんてもんじゃない、もっともっと強くて……このまま心臓が飛び出てこないか思わず心配しちゃうくらい。


「まさか桜華を抱ける日が来るなんてね……夢じゃないよね……」

「夢じゃないよ、ふふ……精市変なの」

「もうこんな事絶対にないと思ってたからね……ああ、幸せだな……」


言いながらゆっくりと私の服を脱がしていく精市。
焦らないようにしている様だけど、その手は少し震えていて……精市の緊張が、興奮が伝わってくる様で。
私まで、余計に緊張してしまう。

私の上半身の衣類を全て脱がした精市は、自分の服も脱ぎ始めた。
程よく筋肉の付いている綺麗な身体……見惚れてしまう。


「……ねえ、今更の確認なんだけど……」

「……?」

「桜華も初めて、だよね……?」

「!」


精市に聞かれた内容に驚き、そして少しの怒りと共にぽかぽかと彼の身体を叩く。
何を聞いてくるんだろう、本当。
もしそれを疑われていたのだとしたら少し悲しい。


「精市は、私がそういう事簡単にする人間だと思ってたの……?」

「違うよ、ただその……三年ってやっぱり長かったから……」

「ばか、最低……してるわけないでしょ……」

「うん、分かってるよ……確認したいって思った俺も悪かったよね……ごめんね、失礼な事を聞いてしまって」


精市は本当に心底申し訳ないと言う様な顔をして私をぎゅっと抱き締めた。
触れる身体が熱くて、さっきちょっとだけ感じた悲しさもすぐなくなっちゃって。


(どこまでも精市には甘いんだろうなあ……浮気だけは絶対に許さないけど)


「は……桜華、触ってもいい……?」

「いい、よ……?」

「……さっきから胸が身体に触れてるだけで興奮して……我慢出来ないよ」

「ぁっ……」


そう言った精市は性急に私の胸を揉みだした。
ふにふにと感触を確かめる様に触る精市はいやらしい。
でもその手付きに私は当然かの様に感じてしまう。


「桜華の胸、ふわふわだね……はあ、もっと早く触れたかったな……」

「精市が浮気しなければねっ……」

「ああ、そうだね……本当に本当に馬鹿な事をしたと思っているよ……」

「あっ、ゃっ……」

「だからその分、これからは我慢しないから……」

「せっ……いちぃっ……」


言うが早いか、精市は両方の胸を下から持ち上げる様に揉み出した。
先程よりも強く、それでいて優しく触れるその手は余りにもずるくて。
胸を揉まれるだけでこんなにも気持ち良くなれるなんて、思ってもみなかった。


「あっ……ぁ、せいいちっ……はぁっ……」

「桜華のその声も、ずっと聞きたかったんだよ……ふふ、嬉しいな……こうして聞けて……」

「そういう事言うの、だめっ……だから……」

「言って桜華を恥ずかしがらせたいんだよ……そんな桜華も最高に可愛いからね」


精市は微笑むと、きゅっと私の乳首を摘み指先で器用に弄り始めた。
胸を揉まれた時よりも強い刺激。
さっきよりももっと声が出ちゃう……我慢なんて出来ない。


(しようと思っても絶対に精市が許してくれないだろうけど……)


「ひぁぁっ……ぁんっ……ふ、ぁっ……」

「乳首も好き?……桜華はどこ触っても気持ちよくなるのかな……」

「ぁっ……わか、ないっ……」

「分からないの……?」


こくこくと頷く。
精市は私の反応の全てを楽しんでいる様で、それでいて興奮している様で。
「……じゃあ俺が全部触って確かめてあげる」そう言ったかと思えば片方の乳首を口に含み、精市の綺麗な舌で舐められ、吸われた。
ぞくぞくっとした快楽。
人に舐められた体験何てある訳なくて……それに、精市のその赤ちゃんみたいな行動に私の興奮も高まる。


「ぁんっ……ひぁっ……あっ」

「んっ……ん……はっ……」


ただ喘ぐ事しか出来ない私。
だけど精市はそれでも全然構わないみたいで、夢中で私の両方の乳首を手で、口で弄っている。


「あぁっ……せ、いちっ……せーいちぃっ……んっ」

「……はぁっ……ねえ、桜華はどこまで可愛ければ気が済むの……」

「なに、それっ……」

「……優しくしたいのに、理性が持たない」

「ひぁっ……」


精市は俯きながらそう言うと、突然一気にスカートを剥いだ。
でも私に驚く暇なんてなくて。
だって、ぐいっと開かれた足の間にあるそこを、下着の上から指でつーっとなぞられたから。
びくんと身体が反応する。


「ゃっ……だぁっ……あんっ」

「下着の上からでも気持ちいいの……?ここ……」

「ぁっぁぁ……いい、きもちっ……いいっ……」

「……だから本当、俺にもう少し優しくさせて」

「せいいちっ……!?」


精市の余裕はもうないに等しいのか、スカートと同じ様に下着も一気に脱がした。
脱がしたはいいけど、もうそれはそれはまじまじと私のそこを見つめてる。
見られる恥ずかしさ……でも精市だから大丈夫って言う不思議な感覚。
むしろ見られれば見られるだけ、そこがきゅん……として疼くのが止まらない。


「せ、いち……ちょっと見過ぎだよ……」

「あ、いや……ごめん……。……見てるより触った方がいいよね(こんなにも釘付けになって……駄目だな、本当……)」

「ぁっ、も……そういう意味じゃっ……」

「俺も桜華を気持ちよくしたいから……」


精市の指が触れた瞬間、今までで一番の快感が襲う。
触らなくても分かる、ぬるっとした私のそこを焦る様に何度も指を動かし続ける精市。
ぐちゅっ……といやらしい音まで聞こえだして、私の理性も崩壊寸前。
もっと触れてほしくて、堪らない。


「せ、ちぃ……あぁっ……ぁっ、もっと……ふぁぁ」

「エロいね桜華……はっ……最高に可愛い……」

「あぁんっ……」


精市は今まで少し避けていた、一番敏感な場所を集中して撫でだした。
声が止まらない、気持ちいい。
彼も相当やばいのか、はあはあと息を荒くし、そこを撫でながら口ではまた私の乳首を吸った。

二人の興奮が交わる。
止まらない私の喘ぎ声、どんどんと荒くなる精市の呼吸。
私はもう精市のが欲しくて欲しくて堪らなくなって……。


(初めてなのに、こんなの変なのかな……)


でも欲しい気持ちは強くなる一方。
いつの間にか私の中に入っていた精市の指がぐちゅぐちゅと掻き回すそれだけでイってしまいそう。
もう指なんかじゃ満足出来ないと……身体が、そこが精市のものを求めている。


「せ、いちっ……もう、もうせいいちのがほしいっ……よ……ぁぁっ」

「!」

「おねがい、も……我慢出来ないっ……」

「……桜華におねだりされるなんて思ってなかった……っ」


カチャカチャとベルトを外し、精市は下着ごとズボンを脱いだ。
現れた精市のそれは大きくて太くて……これが今私の中に入るんだと思うだけで濡れる。
すぐに避妊具を付けた精市は、またゆっくりと私に覆い被さりそれを宛がった。


「いれて、せーいち……」

「焦らないで……ちゃんと、挿れてあげるから……っ」

「うん……っ、あっ……!」

「っ……はぁっ……」


ぐいっと腰を押し進めて私の中にそれを挿入した精市の顔は快楽に満ちていて……堪らなくなっちゃう。
私はもっともっと痛いと思っていた初体験がこんなにも痛くなくて、むしろただ気持ちいだけだなんて思ってなかったからそれに驚いている。
精市のが私の中に入ってる……ああ、処女を精市で捨てられて本当によかった。


「せいいちっ……ぁっ……すごい……」

「ね、痛くないの……?」

「変なのかもしれないけど……全然痛くないの……なんでかな……?」

「でも血は出てるよ……」

「あ、そうなの……?えへへ……精市とだから痛みなんか感じないのかも」

「だからそう言うのは……」


「反則だから」……言うとすぐにぐっ、ぐっ……と、腰を動かし始める精市。
その動きに一々感じてしまう私の身体……自分で言うのもなんだけど結構エロイのかもしれない。
精市の動きに合わせてパンパンと鳴る音がいやらしい気持ちをより高める。
私と精市の肌がぶつかって……ああもうどうなってもいいや、このまま死んでも……。


(そう思っちゃうくらいに、精市に抱かれてる今が幸せ)


「あっ、あっ……ひぁっ、あんっ……せ、いちぃっ……」

「は、はぁ……桜華、桜華っ……」

「もっと、せーいち……っ……」

「桜華がお望みとあらばっ……っ」


私の言葉に精市は体勢を変えた。
自分が寝転がり、私を上に跨らせる様にして。
そのまま下からがんがんと突いてくる。
さっきよりも奥まで精市のが届く感覚に溺れそう。


「ぁぁっ、ぁんっ……はっ、ぁっ……せ、いちっ……せーいちぃっ……」

「桜華、好きだよ、好きだっ……」

「わたしも、わたしも……ぁっ、せーいちがだいすきぃっ……」

「んっ……はっ、知ってるっ……くっ」


何度も何度も中を突いてから、精市はまたさっきと同じ体勢になって止まる事なく腰を動かし続ける。
初めてのはずなのに、初めてじゃない様な感覚。
ぎゅうぎゅうと私は無意識に精市のを締め付けていたみたいで、精市は段々と我慢出来ないと言う様な顔をし出した。


(ねえ、その顔も大好きだよ精市……)


「っ、はぁっ……桜華っ」

「あ、ぁっ……あっぁっ……も、も……だめっ……」

「イっちゃいそう、なのっ……っ?」

「うんっ……うんっ……あぁっ」

「いいよ、俺ももうっ……」


精市の動きが一段……と早くなる。
余裕なんて一切ないんだなあってその動きだけで分かっちゃう。
それだけで私はもう駄目なんだ。


「ああぁっ……ぁっ…………」

「っ……くっ……」


呆気なくイってしまった私。
それと同じタイミングで精市も精を吐き出したみたい。
避妊具付けてるから、それを感じる事は出来ないけど。


(あーあ……なんか勿体ないなあ……。……今すぐにでも精市との子供出来れば永遠に縛れるかなあ……)


なんて、そんな事を考えちゃう。
初めてのセックスを終えた人間の感想じゃないかもしれないけど、それ程に私は精市が好きなんだ。


「ぁ……せいいち……」

「桜華、大丈夫……?どこも痛まないかい……?本当に平気なの……?」

「ふっ、ふふ……」

「……?」


さっきまで私を壊しちゃうんじゃないかって勢いで腰を動かしてた精市が驚く程おろおろと心配するものだから、笑ってしまった。
精市は不思議そうに私を見ている。
その顔もまたおかしくて、もう一度笑いが零れる。


「本当に大丈夫だよ……ふふっ」

「笑い過ぎだよ……もう、そんなにおかしい事言った?」

「ううん……何でもないよ」

「?」


精市は訝し気に私を見つめてるけれど、気にしないふりを貫く。


「ねえ、精市……」

「ん……?」

「ずっと愛してくれますか……?」

「嫌って程愛してあげる……あ、桜華の事束縛しちゃうかも」

「精市ってそういうタイプ?」

「独占欲は強いと思うよ、桜華に対してのね」

「覚悟しときます」


精市になら束縛されてもいいし、なんなら束縛したい。
それ位にお互い思いあえたらいいなって。


(浮気する余裕なんてない位に、私で一杯にするから)




(こうして精市とよりを戻せたし……テニス部の皆ともまた話せるかな……)
(いいんじゃないかな、喜ぶと思うよ)
(精市、そう言うのは別にいいんだ?)
(え……?……ああ、あいつらはね。まあ桜華が色目使ったりしたらおしおきするけど)
(えー……)
(冗談だよ)
(冗談には聞こえないなあ……)
(……この三年間を、一緒に取り戻そうね。あいつらとも一緒に)
(ん、ありがとう精市)




あとがき

何年前の小説の続きなのでしょうか。
続きを書きたいと自分で書いていたので、思い切って書いてみました。
お読みいただきありがとうございました。