2 ここにいて
ガタッ
ドアの方から聞こえた物音に、流石の幸村も埋めている顔を上げてそちらを見た。
視線の先には、やってしまった……と言う何とも言えない表情を湛えているブン太の姿。
彼は見つかってしまった事に動揺しながらも、より動かなくなってしまった身体はさておいてとにかくへらっと笑って見せた。
それに含まれている意味は、「俺は何も見ていない」「だから勘弁して」の二つだ。
「ブン太……」
「えっ、ブン太……?あ……」
「(待って桜華エロ過ぎだからっ……)ご、ごめんっ……別に邪魔するつもりはなかったんだぜ!お菓子を取りに来たらその……」
「ふーん……」
「(幸村君は顔が怖過ぎっ!)本当、すぐ出るからっ……」
「あ、待ってブン太……」
ようやく動かせそうな足で部室から出ようとした矢先、桜華に声をかけられた。
ブン太はこんな時になんだよと思いながらも、彼女に声をかけられては振り向くしかない。
それに彼も興味がない訳ではないのだ、セックスと言うものに。
「何、桜華」
「いっちゃ、やだ……」
「は?」
「ここにいて……?ね、ぶんたぁ……」
「!?(本当に訳が分からないんだけど!?)」
「桜華本当におかしいね?……ブン太に見ててほしいの?」
「うん……ブン太もここにいて、見ててほしい……」
「……だって。ねえ、どうする?桜華がそう所望してるけど?」
幸村は少し不機嫌そうに、だが何処か楽し気に目の前で固まっている彼に尋ねた。
そんな事を突然言われて即答できる訳がなく、頭の中で今の状況を整理しながらどう返答するべきか考えるブン太。
(見ててほしい?俺に?見るって何を?桜華と幸村君のセックス……?……何だよ、それ。当てつけ?拷問?……だけど、見たいって思う自分がいるのなんか本当……はあ……)
考えに考え、出した結論を二人に伝える。
それは彼がどうしても欲に勝てなかった結果。
「……桜華が見ててほしいって言うなら、見てる」
「えへへ……ありがとうブン太……」
「まあ別にいいけど……。ねえ、悪いんだけど俺結構限界で、もう続き始めてもいいかな」
「え?あ、ごめん大丈夫……!」
「適当にその辺りに座ってなよ。……ね、桜華……少し邪魔が入ったけど続きしてもいい……?」
未だ慌てているブン太に指示した後は、もう先程の興奮した幸村に戻る。
桜華はずっと先程のままであったためにすぐに彼の態度の変化を受け入れる。
ブン太はその光景に、そしてこれから起こるであろう事柄を想像してそれだけで自身を硬くさせた。
「は……桜華……」
「せ、いち……あっ」
「ねえ今日本当にすごいよ……中とろとろ……やらし過ぎる」
「いっちゃやぁ……んっ」
「ふふ、嬉しいくせに……」
彼女の中に指を挿入し擦るように動かす。
いつもより更に濡れているそこは指であっても感じそうになる程彼を誘惑する。
桜華が好きな場所を触ってやると、きゅっと中を締め付けながらいやらしく声を上げる。
「ぁぁっ、はぁっ……そこ、すきっ……」
「うん、知ってる……桜華も中きゅうってなったよ……」
「あっ、ぁっ、せーいちっ……」
「っ……(桜華えろい、えろい……!やば……)」
ずっと大好きで、振られても片想いをやめられないそんな彼女のいやらしい姿に興奮しない訳もなく。
ブン太はあっという間に勃起しきった自身に触れたい衝動に駆られる。
彼がその衝動と戦っているとは露程も知らずに、桜華はブン太に見られていると言ういつもとは違うシチュエーションにより興奮していた。
声が、快楽が、収まる事を知らない。
「んっ、ぁぁっ……せい、ちぃ……はぁっ……」
「はっ、っ……桜華、もう射れたい……」
「あ……いいよ、せーいち……わたしもほしい、から……」
ふにゃりと微笑む桜華にぷちんと糸が切れたかの様に、性急にカチャカチャとベルトを外しズボンをずらし、そして下着から勃起しきったそれを取り出す。
我慢出来なかったのはそこも同じで、先っぽは先走りで濡れている。
ブン太はそれを見ながら、自分も同じ様にしたいと心の中で思う。
(俺も桜華に射れたい、気持ち良くなりたい……っ……て言うかまさか人生の中で勃った幸村君の見るなんて思ってなかったぜ……)
想像通り立派だけど……そんな事を考えながら、さりげなく服の上から自身に触れる。
もどかしい、だけど触らないよりかはましだと、二人に気付かれない様にそこを撫でる。
(はぁっ……気持ちい……でも足りねぇっ……)
ブン太が一人そう思う中、幸村は持っていた避妊具を取り付けると彼女のそこに自身を擦りつけた。
ぬるぬるとしているそこは、油断しているとすぐにでも入ってしまいそうな程。
桜華は彼が擦りつけるだけで中々挿入してくれない事にじれったく感じ、我慢出来ずに懇願する。
「やだぁ……せーいちぃっ……欲しい、お願い……こするだけじゃやなの……」
「んー……嫌なの……?気持ち良くない……?(俺もすぐにでも射れたいけどね……でもこういう時の桜華最高に可愛いからつい焦らしちゃう)」
「きもち、けど……っ、せいいちの中に入った方がもっときもちいいもん……っ」
「!」
桜華ははあはあと熱い吐息を漏らしながら、自分自身の手を使いそこを広げる様にして彼を誘う。
今までその様な事をされた事がなかったため流石に幸村も驚いたが、それ以上に余りにもいやらしい彼女のその行動にとうとう我慢出来なくなった。
彼女のお望み通りに、可愛らしく広げられたそこに一気に自身を挿入する。
「あぁぁっ……ぁっ」
「っ……桜華っ……」
「ぁ、ぁ……きもちいい、せーいちのはいったぁ……」
「そんな顔でそういう事言うの駄目だよ桜華……」
「んー……だって本当の事だから……せーいちだいすき……」
「はっ……もう、桜華本当ずるい……」
いつも以上にやらしく可愛らしい桜華に、幸村も負けを認めざるを得ない程。
本当に何があったのかと思ってしまうが、それでもこんな彼女を見る事が出来たのは彼にとっては大きな収穫であり何よりただ嬉しい。
幸村はずるいと言いながらも桜華の頬を優しく撫でる……沢山の愛情を込めて。
(あ、まじで本当にセックスしてる……っ)
ブン太は幸村が挿入した瞬間にそう思った。
自身に経験がない分、それに現実味が全く湧かない。
動画で見るのとも、友人との会話で聞くのとも違う……それは刺激的何て言葉では片付けられない。
ましてや二人とも知り合いで、桜華は想い人……幸村はずっと憧れの存在の様なそんな人。
だから余計に扇情的なのかもしれないと、ブン太はその光景を見てどこか冷静に考えを巡らせた。
(セックスしてる事なんて分かり切ってたけど……いざ目の前にすると、何だろうこの気持ち……)
いつも可愛らしく微笑み、少し抜けているところもあるがそれでもマネージャー業に至ってはしっかりとやり切る桜華。
テニスでは神の子と呼ばれ、尊敬の眼差しを受ける……日常生活でもその容姿から王子様と呼ばれる事もあり、老若男女問わず愛される男、幸村精市。
この二人が、目の前で自分がいるにも関わらずただの雄と雌の様に興奮し性行為をしている。
ブン太はこの光景を本当に見てよかったのかと思いこそすれど、それでも彼等のセックスを目に焼き付けたいと思う気持ちを止められない。
「はっ……やばい……我慢出来ねぇっ……」
つい声に出してしまったそれに反応したのは幸村だった。
ちらりとブン太に視線をやると、綺麗にニヤリと笑った。
その表情にどきっとしたが、彼の次の言葉に更にどきっとしてしまう。
「いいよブン太、俺達の事見ながらシても」
「!?」
「だって我慢出来ないんでしょ?……さっきから触ってるのも分かってるから」
「っ……(ばれてたのかよ……)」
「そんなに大きくして、きついでしょ?……ねえ桜華、ブン太が我慢出来ないから一人でシたいって。俺達の事見て」
彼にそう言われた桜華もちらっとブン太を見ると、どこか嬉しそうに微笑んだ。
その表情はいつもとはまるで違うエロさを含んだもので、ブン太はただただ緊張するしかなかった。
「ブン太、我慢出来ないの……?」
「それ、は……その……」
「えへへ、いいよ……ブン太も気持ちよくなろ……?」
「!」
「沢山見てもいーからね……?」と言いながら自分を煽る彼女に、ブン太も我慢がきかなくなった。
二人に見られている事もお構いなしに自身を取り出すと、右手でそれを擦る。
やっと直に触る事が出来たその快楽は格別だ。
彼の姿を見ていた二人もまた、それに煽られる様にして行為を続ける。
「っ……ね、俺ももっと気持ち良くなりたい……」
「うん、いいよ……私ももっとせーいちがほしい……」
「だから、そう言うのはずるいってば……」
「あぁっ……」
彼女の言葉が引き金となったかの様に腰を動かし始める幸村。
その動きに敏感に反応し、声も漏らす桜華。
動く度に鳴る、ぐちゅっと言った音が彼等を、そして自慰をしているブン太の性的興奮を煽る。
止まらない幸村の腰の動き。
止まらないブン太の自身を擦る右手の動き。
止まらない桜華の嬌声。
この異様な空間で、彼等はただ貪欲に自分達の性欲を満たそうとしていた。
「あぁっ、あっ……ぁぁんっ……せ、いちっ……」
「桜華、桜華っ……っ、後ろから射れさせて……」
「んっ……」
彼の要望に応えるように、桜華は机から降りて彼が射れやすい体勢へと変える。
それ一つとっても幸村にとっては扇情的で、「こうでいいの……?」とお尻をこちらに向けながら少し恥ずかしそうに振り向く彼女に構わず一気に性器を挿入した。
「ひぁぁっ……!」
「ほんっと……っ、桜華エロいっ……」
「いきなりはっ……ぁっ……だめっ……」
「桜華が俺をそうさせるんでしょ……っ……悪いのは桜華だから……」
「ぁっ、あっ、せっ……いちぃっ……」
「はっ……っ……」
彼女の腰を掴みぐっぐっと動く幸村は、激しく動きながらそれでも彼女のいい所を的確に突いてやる。
桜華もそれに素直に反応し、声を上げては彼自身をきゅうきゅうと締め付ける。
普段恥ずかしいからとそれ程後ろからこうして突かれる事のない桜華は、いつもとは違う快感に更にゾクゾクと震えた。
幸村も同じで、いつも中々させてもらえないこの体勢でのセックスに興奮を隠し切れない。
彼は昂った気持ちを表す様に大きく腰を動かし、パンパンと音を立てた。
それを見ているブン太も、先走りでぬるぬるになっている性器をしごきながら、小さく声を出してしまう。
今までにない興奮……どんなAVよりも何よりも興奮する目の前の光景に釘付けだ。
「せーいちっ、ぁっ……せーいちぃっ……」
「桜華、はぁっ……っ、すっごくいい……」
「顔見たいよぉ……」
「ふふ、寂しくなっちゃったの……?」
「うんっ……ぁぁっ……」
「いいよ、じゃあ戻ろうか……」
幸村はずるっと自身を抜くと、彼女を先程と同じ体勢にさせ再び挿入した。
射れた瞬間また歓喜の声を上げる桜華……今は彼のものが中に入っている事が何よりも幸せなのだ。
よりぎゅうぎゅうと彼を締め付け身体でも悦びを表現する。
それに幸村も限界が近付いているかの様により一層腰の動きを早める。
「はっはっ……いつでも、イっていいからねっ……」
「ああっ……ぁっ、も、も……せーいちぃっ……」
「うんっ……俺もそろそろ、やばいっ……」
「(俺もやばい、まじでやばい……っ……ティッシュティッシュ……!)」
「イくっ……あぁぁっ……せ、いちっ……あんっぁっ……――」
「っ……――」
「くっ……――」
三人が三人とも同じタイミングで果てた。
桜華も幸村もブン太も、大きな快楽の余韻に浸る。
しかしこの後、彼女から驚きの言葉が出る事を二人はまだ知らない。
あとがき
ただただやってるだけになりました。
次で終わらせたいな〜と言う感じなのですが、まだしたいことがあってどうかなあと言う所。
よければもう暫くお付き合い下さいませ。