あふれる



「湊ちゃん」
『ひゃっ』

今日から3日間、山岳の家に泊まることになっている。
一緒に山岳の家に帰りついた湊が靴を脱いで家に上がると山岳から名前を呼ばれた。
湊が山岳に近付くと、山岳は湊の手を引き、自分の腕の中に閉じこめた。
ふわりと香る山岳の爽やかな香りに湊はいつもより心拍数が上がった。

『山岳、どうしたの』
「湊ちゃんさ」

少し言いづらそうにしている山岳。
湊は密着していた体を少しだけ離し、山岳を見上げた。
その表情は暗く、湊もつられて不安そうな表情になった。

「荒北さんと付き合ってるの?」
『へ?』

予想外の質問に湊はポカンとした顔で山岳を見つめた。

「今日、荒北さんとキスしてるとこ見かけた」
『付き合ってないし、キスしてないよ?』
「え?」
『私、山岳しかした事ないもん』

湊がそう言うと一瞬だが山岳の瞳は潤み、顔を見られないように湊の体をギューギューと抱きしめた。

「湊ちゃん」
『んっ…まって、さんがくっ…ふぁ…』

山岳はギューギューと満足するまで抱きしめ終わると、次は湊の顔に己の顔を近づけた。
塞がれた唇。
湊が苦しくなり口を開けると、待っていたかのようにぬるりと舌を隙間から入れられた。
そして口内をなぞられ、舌を絡まされ、軽く甘噛みされ、舌を吸われた湊は段々と体の力が抜けていった。
山岳の唇が離れた頃には、足に力が入らず、口の端から飲み込みきれなかった唾液が伝っていた。
蕩けきった表情をしている湊に山岳はゴクリと喉を慣らして唾を飲み込んだ。

「湊ちゃん、おいで」

足に力が入らない湊を抱きあげる山岳。
その瞳はギラついていた。
山岳はリビングのソファに湊をおろすと、そのまま覆い被さるようにソファに押し倒した。

『さんがくっ』
「湊ちゃん、かわいい」
『ふっぁ…んぅ』

湊は抵抗する力もなく、山岳の気が済むまで、深い深いキスは続いた。
キスが終わる頃には湊は完全に蕩けきった表情となっていた。
そして湊の髪を梳くように優しく頭を撫でる山岳の瞳は湊だけを映していた。

『さんがく』
「なあに、湊ちゃん」
『す』
「す?」
『…少しだけ、離れて』
「ええ〜」

山岳はええーと言いながらも、湊の上から退き、ソファに座り直した。
湊もなんとか体を起こし、座り直すと、隣に座っている山岳にギュッと抱きついた。
湊からの不意打ちに山岳は驚いた表情をした。

「湊ちゃん、キスされたいの?」
『ち、違うから!』
「なーんだ、残念」
『ご飯、作るね』

湊はそう言うと山岳から離れてキッチンへと向かった。
山岳は離れた湊の体温に寂しさを感じていた。



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