箱根学園と自転車競技部



湊も山岳も、そして山岳のもう1人の幼馴染の宮原ちゃんも無事に箱根学園に入学した。
真新しい制服に身を包み、これから始まる学園生活に胸を踊らせた。
クラス分けを見てみると、湊と山岳は別のクラスだった。
と言っても、隣のクラスではあった。
きっとこれを一緒に見ていたなら「あ、委員長と一緒だー」なんて言って、いつもの笑顔でへらっと笑うんだろうなと思いながら、まだ学校に来ていない山岳に湊はため息をついた。

湊がこれから学園生活をするためのクラスに向かうと、見事に見知らぬ人ばかりだった。
周りはどこ中出身?とか部活何?とか言って盛り上がっているのに対し、湊は自分からは話しかけれず、諦めてボーッと窓の外を見ていた。
そんな時、前の席の人から話しかけられた。

「オレ、堀北夏也。よろしくな」
『黛湊です。よろしく』
「あ、返事してくれた」
『え?』
「いや、人と話すの苦手なのかなって思ったから」
『知らない人に話しかけるのが苦手なだけだよ』
「じゃあ、もう自己紹介したから知らない人じゃないな!」
『うん、そうだね』
「私、日向りつ。お隣よろしくね!」
『黛湊です。よろしくね』
「湊って呼んでいい?」
『いいよ』
「じゃあオレも湊って呼ぼうっと」
「キミも夏也でいいよね?」
「いいよ!オレもりつって呼ぶ!」
『りつ、夏也、よろしく』

湊は早速周りに話せる人ができてひと安心した。

入学式も無事に終わり、教室への帰り道に先輩達によって手渡された大量の部活動紹介の紙を湊は眺めていた。

「部活どこにしよっかなー」
「オレは決めてるよ!」
「え、何部?」
「自転車競技部!」
『あ、一緒だ』
「え、湊も!?」
「マジか!部活も一緒だな!」
『そうだね。りつはどうするの?』
「んー、まだ決めかねてる」
「まあ、今日決めなくてもいいんじゃない?」
「そうだね!家に帰って悩んでみる!」
『夏也は今日部活見学行くの?』
「いや、今日は家の用事があるから見学はパス!」
『そっか、残念』
「明日は行くから!」
『うん、お互い頑張ろうね』
「おう!」

一通りの連絡事項が終わると、今日は解散となった。
りつと夏也は帰宅し、湊は荷物を持って部室に向かった。

「湊ちゃん」
『山岳、ちゃんと来てたんだね』
「うん、来てたよ。えらいでしょ」
『えらいえらい』
「ねえ、湊ちゃん」
『どう…したの?』

山を登ってる時に時々するあの真剣な目を急に向けられ、湊は一瞬反応が遅れた。

「今日一緒に行動してた人、友達?」
『え、うん。そうだよ』
「そっかそっか」
『どうしたの?』
「…ちゃんとオレの事、見ててね」
『山岳?』
「約束だよ」
『う、うん』

湊が頷くと先程までの雰囲気が嘘だったかのように、山岳はいつもの通り、へらっと笑った。




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