新しい風



山岳とハジメテの体験して以来、湊は山岳の姿が視界に入る度に意識をしてしまっていた。
そんな湊の様子に同じマネージャーである凛はすぐに気が付いた。

「湊ちゃん、湊ちゃん」
『えっ、あ、はい!何ですか?凛さん』
「真波くんと付き合った?」
『へっ!?いや、付き合ってないです』
「なんか真波くん見て顔赤くしてたからてっきり付き合い始めたのかと思った」
『赤くしてなんてっ!』
「ふふふっ、顔真っ赤だよ!」
『からかわないでくださいよ〜!』
「ごめんごめん!あ、そうだ!今日からマネージャーに復帰する子がいるよ」
『復帰…ですか?』
「そう!交通事故で入院してた子が退院して、テスト前から学校に復帰してたの!それで今日から部活も復帰なの!」
『そうだったんですね』
「おひさしぶりでーす」
「あ、噂をすれば!」

部室のドアを開けたのはゆるふわショートヘアの女子生徒だった。
栗色のふわふわの髪の毛に大きな目、まるで可愛らしいお人形さんのような女子生徒だった。
凛は美人タイプだが、この女子生徒は美少女タイプだった。

『か、かわいい』
「でしょー!志穂ちゃん久しぶり!」
「あ!凛さんお久しぶりです!」
「もう足は大丈夫なの?」
「はい!もう元気いっぱいですよ〜!あれ?この子はもしかして新しいマネージャーさん!?」
「そうなの!黛湊ちゃんよ!」
「私、成宮志穂っていいます!2年生です!よろしくね」
『1年の黛湊です!よろしくお願いします!』

湊は1歳上に見えない可愛らしい先輩の志穂にアイドルを間近で見たようなドキドキを味わった。

「志穂ちゃんが帰ってきてくれて嬉しいな!やっぱり自転車競技部のアイドルは目の保養になるよ」
「またまたあ!私は凛さんみたいなかっこいいお姉さんに憧れますよ!」
「直接言われると照れる!!」

マネージャーの女子達がキャッキャッしているところにアップを終えた部員達が部室に戻ってきた。

「志穂チャンじゃナァイ」
「今日から復帰だったのだな!」
「おかえり、志穂」
「元気そうでなによりだ」
「あ!皆さんまたよろしくお願いしまーす!…あれ?」
「どうしたのだ?」
「東堂先輩の後ろにいる人」
「ああ、1年の真波だよ」
「真波くんか!かっこいいね!私2年の成宮志穂!よろしくねー」
「真波山岳です、よろしくお願いしまーす」

ニコッと笑う真波に思わずキュンとした志穂は勢いよく凛の方に振り返った。

「て、天使がいる!」
「あら、気に入っちゃったみたいね」
『え』
「志穂ちゃん、可愛いものに目がないから」
「真波くんかわいい!!ねえねえ彼女いるの!?」
「えっと」
「志穂、真波が困ってるだろ?」
「えー!だって気になるじゃないですかー!」

真波を挟んで新開と話してる志穂。
そんな光景を笑ってみている部員達。
湊は口角はあげているものの、その光景から、なんとなく目は逸らしていた。


そして部長、福富の言葉により部活は再開した。
スプリンターには凛が、クライマーには志穂がそれぞれ対応した。
そして湊はオールラウンダーのメニューを実施している部員たちの元へとタオルとドリンクを届けに来た。

『お疲れ様です』
「ああ、ありがとう」
「サンキュー」
「湊ちゃん、ありがとう」

次々となくなっていくタオルとドリンク。
そんな中ちょうどペダルを回し終え、汗だくでロードから降りた荒北を見かけた。
湊はタオルとドリンクを持って荒北に近付くとバチッと視線が交わった。

『お疲れ様です、靖友さん』
「あんがとネェ」
『いえ』
「…浮かない顔してンネ」
『そうですか?』
「まぁ、なんとなく?」
『靖友さんお得意の野生の勘ですかねえ』

湊がヘラッと笑ってみせると荒北は黙って湊の頭を撫でた。
荒北の優しさを感じた湊は少しだけ泣きそうになったのであった。




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