自覚



部活内でのレースが終わった。
このレースを元にインターハイ出場メンバーが確定し、そのメンバーの中に湊の幼馴染である山岳も入っていた。
インターハイメンバーになれば、もっと山を堪能できると喜んだ山岳は湊に1番に自ら報告してこの気持ち喜びを伝えたいと湊の元へ近寄ろうとした時、マネージャーである志穂に話しかけられた。
そうこうしている間に最近湊と一緒にいることが多い荒北が湊と話し始めたのが視界に入った。
湊との距離がジワジワと離れていく感覚に焦りを感じた山岳は今すぐにでも荒北の傍から湊を連れ去りたい気持ちでいっぱいだった。

「山岳くんおめでとう!すごいクライミングだったね」
「ありがとうございます〜。オレ、ちょっと向こ…」
「これからも山岳くんのクライムをいっぱい見れるんだよね!楽しみだなあ!」
「あ、ははは」

新開が志穂を止めるまで山岳は解放されることはなかった。
気付くともう近くにはいない湊と荒北に山岳は焦り、嫉妬、悲しみ、そして僅かな怒りを感じた。

「(オレの湊ちゃんなのに…)」

1度考え始めると、その考えは次々と溢れだしてきて山岳を苦しめた。



部活が終わり、着替え終わった湊が誰かに話しかける前に山岳が湊の手を掴み、声をかけた。

「湊ちゃん、帰ろう」
『うん、荷物取ってくるからちょっと待ってて』
「湊ちゃんの分も持ってきてるよ」
『えっ!?あ、ありがとう』
「だから、もう帰ろう」
『うん、お先に失礼します!お疲れ様でした』

湊がまだ部室にいる先輩方に声をかけ、扉を閉めると部活の中にいた志穂がビックリした顔で荒北を見た。

「ンだよ」
「湊ちゃんって荒北先輩の彼女じゃないんですか!?」
「はァ!?」
「ブフッ」
「そうなのか!?荒北!?」
「ンなわけねェだろ!東堂!!」
「私、てっきり荒北先輩と湊ちゃんが付き合ってるのかと思ってました」
「たしかに最近靖友湊ちゃんには特に優しいからねぇ」
「凛、お前なァ」
「まあまあ、靖友落ち着けって」
「ウッセェ!」
「じゃあ、山岳くんと湊ちゃんが付き合ってるの?」
「あの2人は幼馴染だぞ」
「ええ!?そうだったの!?」
「付き合ってるかは怪しいがな」

東堂の発言に驚いた志穂。
そしてあの2人が付き合っていないという確証がない状況に凄くモヤモヤし、苦しくなった。

「(私、山岳くんのこと…好きなんだ…!)」

モヤモヤの正体に気付いた志穂は、今後どう動くか考えることを決意するのであった。



prev next