祝福
「湊ちゃん」
『ん?』
「これ、取らないの?」
『と、取らないよっ!』
「ええー、せっかくつけたのに!ねえ、取って?」
『恥ずかしいからやだ』
山岳が言う「これ」とは湊が首に貼ってある絆創膏の事だ。
放課後になり教室までやってきた山岳と2人で部室に向かっている時に言われたのだ。
「ふふっ」
『どうしたの?』
「やっと手に入ったから」
『え?』
「湊ちゃん好きだよ」
『う、うん。私も…そのっ、好きだよ』
「かわいい」
『もう!からかわないで!』
「あ、カップルがイチャイチャしながら来た」
「真波!オレよりも先に恋人をつくるなど…!」
「噂3年まで届いてたぞ」
「遮るでない!!」
「アハハ、ありがとうございます」
部室につくと、噂を耳にした先輩達が祝福の言葉をくれた。
「真波ィ、…泣かすンじゃねェぞ」
「はい、泣かせません。だから、荒北さんはさっさと諦めてくださいね」
「ハァ!?」
山岳の言葉にキレる荒北を宥めるのは新開だった。
そんな中、凛は落ち込んだ表情の志穂を見て、頭をそっと撫でた。
「うわあああん、凛先輩〜」
「よしよし」
「祝福したいのに素直に祝えないですよおお」
ついに泣いてしまった志穂に、湊は気まずくて視線をそらした。
凛は苦笑して志穂の頭を撫でながら、部室の外へと志穂を連れ出した。
「志穂のことは気にしなくていいからな」
『でも…』
「大丈夫。あいつはちゃんと乗り越えられるからな」
「志穂の幼馴染である隼人が言うのだ。間違いないぞ」
『はい、ありがとうございます』
湊が笑うと、東堂も新開も笑った。
『皆さん、そろそろ時間ですよ』
「ああ、練習始めるぞ」
「湊ちゃん、またあとでね」
『うん、頑張ってね』
湊も先に仕事に手をつけ始め、2人が戻ってきた時は少し気まずさもあったが、いつも通り仕事をこなした。
志穂からは「さっき泣いちゃってごめんね」と謝られ、そのまま続けて「おめでとう」と祝福をして貰えた。
志穂が泣くほど山岳が好きだと思ってなかった湊は『ありがとうございます』と言いながらも、気まずさは拭えなかった。