愛しい
早朝。いつもの如く山岳と走りに来ていた。
休憩エリアが見る風景がとても好きだ。
けれども今日の湊は清々しい気分になれないでいた。
なぜなら山岳と付き合ってから、まだ1度もキスをしていないことを気にしていた。
湊はなんだか寂しくて、でも言えなくて、手に持っていたドリンクホルダーを見つめた。
「湊ちゃん?」
『…え?』
「どうかした?ボーッとしてる」
『ううん、なんでもないよ』
…嘘。なんでもあるよ。なんて言えるわけもなく湊はへらりと笑って見せた。
そんな湊の変化に気付かないわけがなく、山岳は湊の腕を引き、自分の腕の中に閉じ込めた。
「好きだよ」
『えっ』
「不安そうな顔してたから」
『それは…』
「それは?」
『付き合ってから、その…き、キス、してくれないから』
「…ふふっ」
『あ、ひどい!わらった!』
「湊ちゃん、かわいすぎ」
山岳は抱きしめていた湊の頬に手を添えて、優しくキスをした。
触れ合っていた唇が離れ、湊が閉じていた目を開けるとバッチリと山岳と目が合った。
ヤバいなあと呟く山岳に、湊が何が?と聞くと、もっとしたいと言い、山岳は湊の返事を待たずにもう一度唇を塞いた。
ちゅっちゅっと啄むキスに湊は擽ったさを感じつつ、山岳が愛おしくてたまらなかった。
『山岳、だいすき』
「へへへっ、オレも湊ちゃんが大好き」
『うれしい』
湊は山岳を抱きしめて、山岳の胸元に耳を寄せると、山岳の少しだけ早い鼓動が聞こえた。
それがとてつもなく愛しかった。
しばらく抱きしめあったあと、湊が腕時計を見るといつもより時間が経っていたことに気付いた。
『大変!そろそろ行かなきゃ!』
「ええー、もっと居たいのに」
『山岳も朝練一緒に行こう?』
「湊ちゃんは来て欲しいの?」
『うん、もっと山岳の傍に居たいから』
「そんなの行くしかないじゃん」
その日は朝練から山岳が居ることに他の先輩達はすごく驚いていた。