お誕生日



5月29日。
幼い頃からずっと大好きだった人の誕生日。
毎年この日はプレゼントを用意し、山岳の部屋に遊びに行っていた。

『今年は何にしようかな』
「ん?なにが?」
『もうすぐ、山岳の誕生日なの』
「あー、真波王子の誕生日か!だからソワソワしてる子いたんだ」
『…そうなの?』
「気付いてなかったんだね。まあ、王子様はお姫様を溺愛してるみたいだしー?心配する事ないよ」
『お姫様って柄じゃないよ』
「湊さー、かわいいんだから自覚持ちなよー」
『わっ、りつ髪ぐしゃぐしゃになるっ』

おりゃおりゃ〜と言いながら湊の頭を撫でるりつと、されるがままの湊。
教室内でじゃれてる2人を遠巻きから男子達は暖かい目で眺めていた。

「何やってんだ?お前ら」
「湊を愛でてる」
『髪ぐしゃぐしゃになった…』
「本当ぐしゃぐしゃだな」

玲音がさりげなく湊の後ろ髪を手櫛で梳いてやると、夏也とりつが少し驚いた表情をしていた。

「あ、悪い。つい癖で」
「癖ってなんだよ〜」
「妹の世話でよくやってるからその癖」
「妹いたんだ!」
「ああ、3歳」
『可愛い年頃だね』
「湊、あんた何歳よ」
『16でーす』
「春生まれなんだな」
『そうだよ』

いつもの4人で話していると、今まで遠巻きで見守ってた男子達が夏也と玲音に対して「アイツらズルい」やら「羨ましい」など思い思いのことを言っていた。



なんだかんだで、うだうだとプレゼントを何にしようかと悩んでいるとあっという間に時間は過ぎてしまった。
そして29日当日。
湊は夜遅くに山岳の家の前に立っていた。
携帯で山岳に連絡をいれたらすぐに玄関のドアがあいた。

「湊ちゃん、待ってたよ」
『遅くなってごめんね』
「ううん、あがって」
『うん、おじゃまします』

一応、お互いの親には許可を貰っているので、堂々と玄関から入った。

「湊ちゃん、いらっしゃい」
『おじゃまします』
「はい、これ。ケーキとジュース持って行ってね」
『あ、ありがとうございます!』

出迎えてくれた山岳ママから渡されたのは2人分のケーキとジュースだった。
湊と山岳は受け取り、山岳の部屋へと運んだ。

「えへへっ」
『どうしたの?』
「湊ちゃんと2人きりで過ごせるのが嬉しくて」
『私も、だよ。…あ、これプレゼント』
「わーい、あけていい?」
『いいよ』
「イルカのキーホルダーだ!あれ、これどこかで…」
『私のと、おそろい…なんだけど』
「あ、湊ちゃんが鍵に着けてるのと一緒だ」
『うん。…なんか、ごめん』
「え、どうして?」
『おそろいとか、強制してるみたいで嫌だよね』
「オレは湊ちゃんと一緒のものが増えて嬉しいよ」
『ほんと?』
「うん、湊ちゃん、おいで」

ベッドに腰かけ、両手を広げて微笑む山岳。
湊は少し戸惑いながらも近付くと手を取られてそのまま抱きしめられた。
ふわりと香る山岳の香りに湊はネガティブな思考が飛んでいく感覚がした。

「湊ちゃん、もう1個プレゼント欲しいな」
『えっと、何が欲しいの?』
「湊ちゃんからの、キス」
『き、キス…』
「だめ?」
『…だめじゃない。その代わり、目つぶって』
「ん、わかった」

唇と唇が軽く触れ合った。
山岳は嬉しそうに笑い湊を抱きしめると湊は真っ赤な表情のままつられて笑った。

「んふっ、青春ね」
『えっ!?』
「いつからいたの?」
「2人がちゅーしてるとこ?」
『あっえっと、その…』
「ふふっ、邪魔してごめんね。湊ちゃん、山岳のことよろしくね」
『は、はいっ』

その後、湊は山岳と用意してもらったケーキとジュースをいただいて、日付が変わる前には家に帰った。
ニヤニヤしてる山岳ママからのメールにより、湊が帰りついた時には母親がニヤニヤした表情で出迎えたのであった。



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