優しい方々



入学して1ヶ月ほど経ち、各々学生生活に慣れてきた頃、湊はふと気付いた。
それは幼馴染である真波山岳が想像以上にモテるということだった。

休み時間に山岳がいるクラスの近くを通ると女子達に囲まれていたり、告白のために呼び出されていたり、ベタだけど靴箱にラブレターが入っていたり。
湊はそのような光景を見かける度に目を逸らし足早にその場から去った。

対して山岳はあの早朝の山以降も今まで通り湊に接していた。
そんな山岳の態度にやはりあの時はそういう気分だったのだと思い、湊もまた今まで通りに接した。



「湊ちゃんだ」
『あ、拓斗さん、お疲れ様です』
「おつかれー」
『拓斗さんも今から部活ですか?』
「そうだよー、凛先輩や湊ちゃんに負けないように洗濯頑張らなきゃ」
『その後、練習されてますよね。私ももっとサポートできるように頑張ります!早く拓斗さんが練習できるように洗濯も頑張ります!』
「湊ちゃんは優しいね」
『拓斗さんはもっとやりたい事主張していいんですよ!』
「それは湊ちゃんもだよ。今度の大会の女子の部、本当は出たいんだよね?」
『な、何でそれを…』
「熱い眼差しで見つめてたから」
『見られてたなんてお恥ずかしいです』
「出たいなら言ってみたらいいじゃねえか」
『雪さん!お疲れ様です』
「おう、お疲れ。で、言うのか?」
『少し、考えてみます』
「まあ、悩んだらすぐに言えよ」
『はい、雪さんも拓斗さんも優しいですね』
「こう見えて雪ちゃんは面倒見良いからねえ」
「拓斗もだろうが」
『お2人ともありがとうございます!』

3人で話しているうちに部室に辿り着くと、湊は一礼して去り、マネージャー業に勤しんだ。
部活も終わり、各々での解散となった時に、湊は福富に話しかけた。

『あ、あの!福富さん!』
「どうした」
『えっと、その…』
「?」
「あー…福チャン、湊が手に持ってるそれェ」
「ああ、今度開催される大会か」
「ム。もしかして出たいのか?」
『は、はい!…なのでこの日部活お休みしてもいいでしょうか』
「自主練の日じゃナァイ」
「福、せっかくだからオレ達も湊の応援に行かないか」
『へ?尽八さん何言って…』
「名案だ」
『えええ!!?』
「いつもサポートして貰ってるからな。この日はこの東堂尽八がサポートしよう」
『でも、皆さんの練習が』
「だから自主練なンじゃねぇのォ」
『ありがとうございます!!』

福富から全力で走ってこいと言われ、練習機材も全体の部活後、自主練時間に使ってもいいと許可を貰った。
湊は嬉しそうに笑うと、3年の先輩方は優しい目で湊を見ていた。



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