09

 自暴自棄でなかったと言えば嘘になる。
 リビングのベッドソファに横たわりながら思いを巡らす。
 上には聡が覆いかぶさって、隅から隅まで余すところなく舐め尽くさんとばかりに、俺の身体に舌を這わす。それに反応してあられもない声をあげている俺も、どうかしているのかもしれない。
 あのまま別れる事だって出来た。現に聡はそうしようとしていた。でも、引き留めたのは俺だ。うまく説明できないけれど、あのまま別れたら、もう二度と聡と会えない気がした。それだけは嫌だった。家族だからといって、いつまでも繋がっていられる保証なんてどこにもない。
 二人はいつの間にか一糸纏わぬ姿になって、淫らに絡み合う。聡は俺を四つん這いにさせて、尻の狭間に舌を這わせてきた。
「おいっ!どこ舐めてんだよ!」
 さすがに羞恥に身を捩じらせる。
 聡は尻臀を押し広げるように揉みながら、俺の秘めたる部分を暴こうとする。
「汚いからっ…!」
 後ろ手に聡の髪の毛を引っ張って引きはがそうとするが、前戯で身体が溶けきってしまっているためにうまく力が入らない。
 抵抗も空しく、聡の舌は入り口をちろちろと舐め、解きほぐすように侵入してくる。
「…ひぅっ…、…や……」
 ぞわりとした感覚が背筋に走る。男の矜持を踏みにじられ、羞恥に赤くなる顔をクッションに押し付ける。
 ゆっくりと味わうように解きほぐされた蕾に、聡が唾を流し込みながら、奥へ奥へと挿入ってくる。
「……あぁっ…!」
 分厚い舌が腸内のある一点を突いた刹那、背筋にいままでに感じたことのないほど強い快感が、電流のように走った。
「…そこ、やめ……っ!」
 舌は執拗にその場所を突き、その度に蕩けた声をあげてしまう。俺のモノはどんどん大きくなり、透明な蜜が溢れ出し、ソファを汚していく。
 やっと舌が出て行ってかと思うと、もっと固くて凶暴なものが宛がわれた。まさかと思い、息を飲んだ瞬間、一気に貫かれた。
「――あぁぁっ!」
 それは圧倒的な質量を持っていた。俺の後ろは待ち焦がれていたかのように絡みつき、前は喜びの飛沫をあげる。
 いきなりの射精に息を乱す俺の腰を掴み、息を吐く間もなく聡は腰を振り出す。
「…や…っ、…ぁあ……、…んぅ…っ…」
 絶え間ない快楽の波に溺れ、嬌声をあげる口端からだらしなく唾液が零れる。
 浅い所を短いストロークで素早く擦られたかと思うと、いきなり奥まで刺し抜かれ、ゆっくりと奥を擦られる。俺の腸内は聡のモノに絡みつくように蠢く。
「…もぅ、……や…っ…」
 それに合わせて俺の腰も自然に揺れて、訳も分からず快楽を追い求める。
「嫌じゃないだろ…っ…?兄貴のココ…、っ…こんなにも悦んでる」
 射精したばかりなのに、再びすっかり固くなってしまっているモノを指で弾かれる。そんな衝撃にも、俺の身体は悦んで聡のモノをきゅうきゅうと締め付ける。
「なぁ、兄貴。…っ、あの男にこんな卑猥な身体、触らせたりしてないよな?」
「…っん、…あの男…っ…?」
 思考能力の弱った頭に、隆介の顔が浮かぶ。
「…して、ないっ……」
「本当に?」
 急に腰をふる動きが止まって、聡が訝しげに尋ねる。
「本当だよ……んぅっ…!」
 ゆっくりと聡のモノが引き抜かれ、その感覚にも感じてしまう。腰を支えられていた手が離れ、どさりとソファに倒れこむ。
「…聡?」
 突然の解放に困惑しながら、起き上がる。聡を見ると、その顔からは表情が消え、目は冷たく光っていた。
「舐めて」
「えっ?」
 聡は俺の髪の毛を掴むと、ぐいっと己の股間に引き寄せた。
「舐めて」
 目の前には俺のとは比べ物にならないほどに固くて太い、凶暴なモノがそそり立っていた。
「そしたら兄貴のこと信じるし、続きしてやるよ」
 続きという甘言に、俺の後ろはひくりと反応する。もうとっくに男の矜持なんて捨ててしまっているんだ。そんな思いもあって、目の前の誘惑に耐えられず、ゆっくりと顔を近づけていく。おそるおそる亀頭を舐める。
「もっと」
 聡に促されるがままに、口に含む。男のむっとする匂いに思わず顔を顰めたが、迷わず飲み込んでいく。唇で輪っかを作って、上下に頭を動かす。
 初めて俺の身体を淫らに触ったのは、隆介でも俺でもない、聡なのだということを彼は知らない。初めての自慰行為のおかずがお前だったなんて、俺は口が裂けても言わないのだろう。男の矜持を捨てた代わりに、くだらない兄の矜持だけは保っていたい。
「…んぐっ…、…ぅ…」
 外れそうな程に開いた顎が痛い。我慢できなくなって、自分の指を後ろの蕾に這わせ、刺し入れる。後ろはすぐに中指を迎え入れる。
「はっ……、…我慢できねえのかよ」
 聡は俺を嘲笑うように言うが、聡のモノは俺の口内でどんどん容量を増していく。
 俺は指を出し入れしたり、中で曲げたりするが、思うようにならない。
 じれったい感覚に身を焦がし、ついに我慢できなくなった俺は、口を離して聡に懇願する。
「…はやく…っ…!続き、しろよっ……」
 頭の中はもう、快感を追い求めることしか頭になかった。長い期間の間に何度も聡に触られていたためか、身体は俺の知らない間にすっかり快楽の味を憶えこみ、虜になってしまっている。
 聡は性急に俺を押し倒すと、一気に貫き乱暴に突き上げる。
「…んぁ…っ、…あ…っ、あっ……」
 俺は声を我慢することも忘れて、断続的に嬌声を零す。
 乳首を舐められ、軽く歯を立てられる。それだけで俺の身体は悦んでしまう。
 中のいいところを突かれ続け、最奥を突かれるのと同時に、中で聡が欲望を爆発させた。どくどくと流れ込む愛液に悦び、腰がびくびくと痙攣し、熟れ切った俺の果実が弾けた。
 頭が真っ白になって呆然としながらも、顔中にキスの嵐が降り注ぐのを頭の隅でぼんやりと認識しながら、意識はゆっくりと沈んでいった。


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