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「……ッ、…うぅ…、クソッ、なんでこんなことしなきゃいけねぇんだよ…」
 ヤクザに連れ去られた俺は、浣腸でケツの中身を全部出し切り、今日会ったばかりの知らないおっさんの指をケツに突っ込まれていた。気持ち悪くて吐き気がする。
「しっかり綺麗にしなきゃいけねぇんだよ。次から自分でできるようにちゃんとやり方を覚えとけよ」
 俺は風呂場の壁についた拳を握り、シャワーの水が身体の中に入ってくる不快感に身を震わす。
 ゲイ向けの風俗店。ここで自分の身体を売って、借金を返す。もちろん返し終わるまでこの場所からは抜け出せない。男相手だなんて、考えるだけでもゾッとする。
 俺の尻を洗っている男はここの店の店長らしい。店長はウリ専のボーイの研修を何度もこなしてきたのか、慣れた手つきだ。
 俺の身体を洗い終えた店長は風呂場を出て、スラックスの前を寛げてベッドに腰掛ける。
「こっちにこい」
 店長に促され、俺は全裸のまま店長の前に跪かされる。すると店長の勃起した股間が目の前に広がる。
「……え、なんで勃ってんの?」
「これも研修の内だよ。フェラなんて、やったことねぇだろ?」
「そりゃねぇけど。…え、フェラまでしなきゃいけねぇの?」
「お前なぁ、ここがどういう場所か分かってんのか? 男相手に身体で奉仕して、その対価としてお金をもらうところなんだ。男のちんこだって舐めるし、その小さいケツにちんこも挿れられるんだよ」
「え、…は? 俺抱かれる側なの!?」
 店長が呆れて大きなため息をつく。
「なぁ、桐渕くん。こいつ馬鹿なの?」
 店長が部屋の隅で煙草を吹かしていたヤクザの方を振り返る。
「あぁ、だいぶな。自分の置かれている状況のヤバさが分からないくらいには」
 俺を散々殴りつけたヤクザは桐渕というらしい。精悍な顔にはヤクザらしい冷酷さが浮かんでいる。
「俺、男に抱かれるなんて嫌だよ! ちんこだって舐めれねぇし!」
「お前なぁ、そんなこと言ってる場合じゃないだろ? 借金返さないといけないんだから」店長は困ったように言う。
「なら女性用風俗とか、ホストとか! 他の仕事じゃだめなのか? この仕事以外なら、なんでもやるから!」
 店長に両手で拝んでいると、桐渕が近づいてきて俺の左手を掴む。
「…え、なに?」
 次の瞬間、何の前触れもなく俺の手の甲に火のついた煙草が押し付けられた。
「―――熱ッッ!」
 熱さがすぐに鋭い痛みに変わり、慌てて桐渕の手を振りほどく。
「なにすんだよ!」
 左手を庇いながら、涙目で桐渕を睨む。
「この仕事すらまともにできないお前に、他の仕事ができるわけがないだろ。そんなにやりたくないんだったら、お望み通り海に沈めてやろうか?」
 桐渕の冷ややかな目には、俺は人として映っていない。桐渕にとって俺は、いつでも捨てられるゴミだ。
 手の甲にできた火傷が、ズキズキと痛む。
「……や、やるよ」
 今の俺に拒否権はない。桐渕の冷酷な視線が、火傷よりも強く俺を突き刺した。


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-ハイリスクジャンキー-
-彼の衝動-