04

 狼は鼻を、俺の股間に埋めて、くんくんと匂いを嗅いでいたのだ。
 あまりの衝撃的な光景に言葉を失う俺を他所に、狼は鋭い牙で、器用に俺の服だけをビリビリに噛み千切っていく。みるみるうちに、無残に引き裂かれた衣服が、俺の身体に纏わりつくだけのただの布と化した。
 抵抗するという選択肢も思いつかないぐらいに混乱し、思考停止した俺は、されるがままだ。
 すると、狼は露になった俺の股間に、再び顔を埋め、あろうことか肉厚の舌を絡みつけ、舐めまわし始めた。
「やめろ……っ!」
 言葉では抵抗するものの、身体を動かせば、牙が俺の身体を貫くかもしれないという恐怖に苛まれ、ろくに身動きも取れない。
 長い舌が俺のモノに巻き付き、舐め尽くさんとばかりに、双球までもを舐めまわすが、恐怖した俺のモノはすっかり縮こまってしまっている。
 狼は俺のモノから舌を離すと、覆いかぶさるように俺を大きな前足で押し倒してきた。
「ヒッ……!」
 黄金色の瞳に見つめられると、身体が金縛りにあったように動かなくなる。俺の上にのしかかる巨躯は、大人の俺よりも一回りも大きい。
 大きな口が近づいてくる。
 今度こそ喰われると思ったが、狼はまたも俺の予想に反する動きをする。
 口に肉厚の舌がねじ込まれる。それは俺の舌に絡みつくように蠢き、俺の口腔を犯し始める。
「…んうっ!…っ…」
 俺の口内を圧迫するほどの長い舌が、俺の喉奥まで余すところなく舐め尽くす。ざらさらとした舌が、無造作に歯列をなぞり、上顎を撫でる。
「……うぅッ…、ん…」
 時折、牙が俺の唇を掠めるたびに、恐怖に身が跳ねる。
 ねっとりとした唾が、飲んでも飲んでも、絶え間なく注ぎ込まれ、飲み下しきれなかった唾液が、口端から零れ落ちていく。乱暴な舌遣いと圧迫感のために、うまく呼吸が出来ずに、頭の中に霞みがかかっていく。それでも、抵抗することも出来ずに、ひたすらに口内を、舌と恐怖で犯される。
「…ぁ、…はぁっ、はぁっ」
 やっと解放されたころには、口周りは唾液でべとべとになり、脳内も酸欠気味になっていた。
 それでも狼は舐めることを止めようとせず、今度は俺の頬や首筋、腹までべろべろと舐め、乳首をも舐めまわし始めた。
「おい、…やめろ…っ、どこ、舐めてんだよ…っ」
舐めるばかりで、一向に俺を喰おうとする気配はなく、狼の意図が全く読めない。ただ、俺の身体を舐めまわすのをやめる気配は全くない。
 動物特有のざらざらした舌が、乳首を擦る。まるで人間を指のように、突起を押しつぶし、捏ね回す。こんな状況なのに、巧みな刺激に、あられもない感覚が疼きそうになる。
「…やめ、っ…」
 俺は恐る恐る狼の頭に手を伸ばし、そっと引き剥がそうとする。だが、狼は俺を無視して小さな突起を舌で弄る。真っ白な長い毛を掴んで、弱い力で引っ張ってみるが、一向にやめない。あろうことか俺の乳首は勃ち上がり始め、下腹に覚えのある感覚が渦巻き始めた。真っ白な毛が俺のモノにさらさらと触れる微弱な刺激に、俺のモノがゆっくりと首をもたげ始める。
「…いやだ、っ…、…やめ、…ろっ」
 獣に嬲られて反応している自分が信じられない。いつ噛まれるともしれない恐怖に、ろくな抵抗も出来ずに、されるがままだ。死の恐怖にさらされているというのに、感じてしまっている自分が怖い。


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-家庭内密事-
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