04

 男の手を振り解こうと、もがいて頭を振った拍子に、被っていたカツラが落ちた。するとぴたりと男の手が止まった。男の視線は現れた俺の地毛に釘付けだ。男はうっとりと呟く。
「…綺麗な髪だね」
 男は胸を揉むのを止めると、今度は俺の髪を掬って、鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。
もともと色素が薄いため茶色い俺の髪は、それが綺麗だの何だの言う女子のおもちゃにされることはあったが、触られることに嫌悪を感じたことはなかった。髪を触られただけでここまで嫌悪を感じたのはこれが初めてだ。
「うっせぇ!触んな…!」
 頭を振って、男の手から逃れようとする。
「―――ッ!」
 唐突に抵抗する動きが止まる。
 股間を刺激され続けたために、先ほどの尿意が急激に戻ってきたのだ。
 絶対に男に悟られたくない。限界が来る前に逃げなければ。
 だが、この状況からの打開策が見つからず、目を泳がせることしか出来ない。
 急に大人しくなった俺の股間に、男はより一層強く太腿を押し付ける。
「……っ!」
「どうしたの?急に静かになって。……あぁ、そうか」
 男は会得した顔で、指先を俺の下腹部に添え、ぐっと押さえ込んできた。
「―――いッ!」
 思わず漏れそうになるのを、必死に堪える。苦しくて顔が歪む。
「…やっぱり。もう我慢できないんでしょ?」
 男は意地悪く口端を吊り上げると、無理矢理俺を便器の前に移動させ、後ろから抱きしめてきた。男は便器の蓋を開けると、すばやく後ろから俺の両足を抱きかかえた。
「おい、何すんだよ!降ろせ!」
 身じろぐと頭から落ちてしまいそうで、咄嗟に腕を男の頭の後ろに回す。
 股を開いた状態で男に持ち上げられ、後ろ手に男に抱きつく形になってしまった。
「降ろせっ!」
 じたばたと暴れる俺の耳元で男が囁く。
「出していいよ」
「…は?」
「僕が抱えててあげるから、出していいよ」
 意味を理解した瞬間、血の気が引いた。
「ふっざけんな!何考えてんだよ!」
 男と力の差がありすぎて、男の腕から全く抜け出せない。
「あぁ、このままじゃスカートが邪魔で出来ないもんね。じゃあ、僕が手伝ってあげるね」
 そう言って男は俺を抱きかかえたまま、片手で器用に俺のスカートをめくり、股間に手を伸ばす。
「お、おい、やめ」
「あれ?女物の下着履いてるの?」


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-家庭内密事-
-彼の衝動-