06

「…あ、…ぁ、…」
「…可愛い。知也くん。あぁ、可愛いよ」
 耳元で囁かれながら、耳朶に耳を差し入れられる。ぴちゃぴちゃという唾液の水音と放尿の水音が、同時に俺の鼓膜を犯す。
 俺の顔は放尿の解放感と羞恥に赤く染まり、この状況が受け入れられずに、頭が真っ白になり、思考が停止する。
 俺が全てを出し終えると、男は便器の蓋を閉め、その上に俺を座らせる。目の前に立つ男の股間は興奮のためにテントを張っている。
「知也くん」
 ショックで放心状態の俺は、なぜ男が俺の名前を知っているのかという単純な疑問も抱けず、虚ろな目で男を見上げる。
 男の顔がゆっくりと近づいてきて、唇が触れる。俺の歯列を割って、舌が侵入ってくる。舌を絡めとられ、吸われる。
 拘束され、圧倒的な力の差を見せつけられた後では、もう抵抗する気など起きなかった。何をしてもむだだ。この男には通用しない。もう諦めるしかないんだ。
 あんな姿を見られた後では、もうこれ以上何をされても同じだ。もう既に人としての尊厳が失われてしまっているのだから。
 俺の心と身体は、この小さな個室に閉じ込められてしまった。
 混ざり合い、どちらのものかも分からなくなった唾液が、口の中に溜まり、口端から零れる。すると男は、飲めと言わんばかりに俺の顎を持ち上げる。俺は考えることを放棄していた。朦朧とした頭で、ろくに考えもせず、溜まった唾液を嚥下する。
 男はそれ満足したように、優しく俺の頬を撫でる。男の舌は俺の口内の形を覚え込もうとするかのように、口内をくまなく動き回る。
 時折、口周りに男の剃り残した髭が当たって、ちくちくする。
 だんだんと舌の動きが激しくなり、呼吸が苦しくなってくる。
 男の手が俺のスカートの中に滑り込み、下着に手をかける。
「…腰、浮かして」
 キスをしながら、男が呟く。
 俺が素直に腰を浮かすと、男はゆっくりと俺の下着を下ろし、脚から引き抜く。
 俺はこのまま、この薄汚い男に犯されるんだろうか。後ろの穴を拡げられて、男のモノを咥え込み、女みたいにされるんだろうか。男に組み敷かれて、女のように喘がされるんだろうか。


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-家庭内密事-
-彼の衝動-