07

 男の顔が離れていき、長いキスからやっと解放される。男は自分の唇に移った俺の口紅を、手の甲でぐっと拭い取る。
「ずいぶん大人しいね。抵抗するのは、もうやめたの?」
 男は呆けたように口を半開きにしている俺の頬を、愛おしそうにそっと撫でる。そして、そのまま手を滑らせて、俺の口の中に二本の指を差し入れる。
「…舐めて」
 指に舌を絡める。男の指は軽く遊ぶように、俺の舌を撫でたり引っ張ったりする。
 男は濡れた指を引き抜くと、俺の二の腕を取って立ち上がらせる。
「後ろ向いて、手をついて」
 俺は後ろを向き、トイレの貯水タンクに手をつく。すると、自然と男に尻を突き出す形になってしまう。
 男はスカートの奥に潜む俺の後腔に、そっと手を忍ばせる。
「…知也くん」
 男はうっとりと俺の名を呟く。中指が俺のナカにつぷりと侵入ってくる。
 やっぱり犯されるんだ。この男に。
「……ぅ…」
 得も言われぬ違和感に、思わず眉をひそめる。
 指が腸壁を拡げるように、奥へ奥へと挿入れられる。
 男は唇が触れるほどに、俺の耳元に口を近づけ、興奮の混じった声で囁く。
「…知也くんさぁ、これ、どういうこと?」
 男はもう空いたもう片方の手も、スカートの中にさし入れ、俺のモノをぴんっと指で弾く。
「お尻に挿入れられて、気持ちいいの?」
 指摘されたそこは、しっかりと勃ち上がり、先走りに自身を濡らしていた。
 見知らぬ男に嬲られて、萎えて縮こまっているはずのそこが、何故か反応している。
「……ぁ…」
「まだ一本しか挿入れてないんだけど」
 言いながら、さらにもう一本指が挿入れられ、二本の指がナカでばらばらに蠢きだす。
「…ぁ、…う…」
「初めてのはずなのに、こんなのおかしいよね」
 指が動くたびに後ろが熱を持ち、前からも期待の蜜が溢れ出る。
「ともやくんが指だけでこんなになっちゃう理由さ、俺はちゃんと知ってるよ」
 予測できない指の動きに、熱い吐息が漏れる。


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-家庭内密事-
-彼の衝動-