08

 火照った身体を冷やすため、廊下の水道で顔を洗う。
 萩原がなぜ冴えない浅井を弄んで楽しいのか、全く理解できない。
 ぱしゃぱしゃと顔を洗っていると、廊下に女子たちの声が響いてきた。萩原の取り巻きの女子だ。きっと何か言われるに違いない。
 浅井は傍に置いていたタオルを取り、急いでその場から立ち去ろうとしたが、女子たちが浅井の後ろを通り過ぎる方が早かった。
「調子乗んなよ」
「お前ごときが要に近づいてんじゃねぇよ」
「うざ」
 すれ違いざまに、痛烈な悪口を吐き捨てられる。
 浅井から萩原に近づいているわけではないのに、なぜこんなにも浅井が言われなければならないのか。
 浅井はもう限界だった。


- 8 -

*backnext#

-家庭内密事-
-彼の衝動-