09 浅井は徹底的に萩原を避け始めた。萩原がいる場所には行かないようにし、話しかけられそうになったら、すぐさまその場を離れた。すると、萩原もだんだん浅井に話しかけることはなくなり、今まで通りの学校生活に戻り始めた。 萩原は再び女子に取り巻かれ、浅井は目立たないように教室の隅で、浅井と同じような冴えない友達と机を囲んで話をする。 視界の端に捉えた萩原は、スマホを覗きながら、興味なさげに女子の話に適当に相槌を打っている。 こちらを見た萩原と、一瞬ばちっと目が合った。浅井はすぐさま目を逸す。動揺を押し殺し、まるで何事もなかったかのように、友人との会話に戻る。 これでいい。今まで通りの平穏な生活だ。これは浅井が望んでいた環境だ。 これでいいはずだ。それなのになぜ、前以上に萩原の存在を意識してしまうのだろう。 同じ教室にいると、時折、萩原の香りが浅井の席まで漂ってくる。空気中のそれは微々たる量だが、それでも浅井の身体を熱くするには十分だった。 浅井はトイレに駆け込み、悔しさに唇を噛む。 「なんでだよ…っ」 自分の身体が制御できなくなっている。浅井は火照る身体を収めるため、自分自身を慰める。 こんなことを、いつまで続けなければいけないのだろう。 自分の情けなさに、押しつぶされてしまいそうだ。 -家庭内密事- -彼の衝動- |