02 いつものように江波の部屋でキスの練習をしながら、江波はふと思ったことを口にした。 「俺、お前と毎日のように練習してるのに、全然変わってる気がしないんだけど」 「…そうか?」谷端は答えつつも、江波の唇を食むのをやめようとしない。 江波は谷端を引きはがし、真剣な面持ちで向き合う。 「今日、たまたま光木さんに話しかけられたんだけど、めちゃくちゃに緊張したし、練習の成果が全く感じられない」 「まぁ、この程度の練習じゃ難しいだろうな」と言って、谷端は頭をかく。「次のステップに進む段階かもな」 「次のステップ?」 「江波もそろそろ普通にキスするのには慣れてきただろ? これでやっと江波は、普通のスキンシップができるようになったんだよ」 「そうなのか…?」江波は首をかしげる。 「そう。外国人にとったら、キスすることは日常的なスキンシップなんだから、今までの練習は基礎レベルといっていい。江波は気付いてなかったかもしれないが、練習を始める前の江波のスキルは小学生レベルだったんだよ」 「そんなにひどかったのかよ…」その事実は江波にとって衝撃だった。江波は谷端の二の腕を掴み、「じゃあ、次に進むにはどうしたらいいんだ?」と助けを乞う。 「舌、出して」谷端は江波の頬に手を添える。 江波は谷端がしようとしていることを察し、戸惑いつつもおずおずと舌を出す。 谷端の顔が近づき、舌が絡まる。今までより深いキスに、江波はどうすればいいのか分からずに固まってしまう。 「江波も舌、…動かしてみて」谷端にそう言われ、江波は谷端の動きを真似て舌を動かしてみる。お互いの唾液が混ざり合い、くちゅくちゅと濡れた音がする。「…鼻で息して」と谷端に言われ、その通りにしてキスを続ける。 ただのキスより気持ちよくて、江波は声が漏れそうになるのを必死に抑えていたが、キスを続けるうちに我慢できなくなり、ついには上ずった声を漏らしてしまう。そんな江波を見かねた谷端は「声、我慢しなくていいよ」と優しく声をかける。 「……ん、…んぅ……」江波は吐息を漏らしながら、無意識のうちに縋りつくように谷端の制服のシャツを握りしめる。 キスが終わる頃には江波の息はすっかりあがり、頬は熟したりんごのように赤く火照っていた。 江波は自分が谷端のシャツを握りしめていたことにやっと気付いて、サッと手を引っ込める。恥ずかしそうに目を伏せる江波を見て、谷端は「すぐに慣れるよ」と言いながら、江波の頬に軽く口づけた。 -家庭内密事- -彼の衝動- |