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早いものでもう4月。
雪はすっかり溶けて青々とした芝生が顔を出し、少しずつ暖かくなってきた。
そんなある日の朝、大広間で朝食を食べていた時である。

飛んできたフクロウが私を飛び越して、隣に座っていたリーマス先輩のトライフルに突っ込んだ。
よく見たら家のフクロウだ…。

「うわぁっ!?」
「わぁっ!ごめんなさいリーマス先輩!!」

デザートが大好きなリーマス先輩の大事な大事なトライフルに突っ込んだ(家のフクロウの)エロールを引き抜いてからテーブルに手をついて平謝りすると、先輩は「う、うん、いいよ…」と言って新しいトライフルを皿に盛り付ける。

「もう…ドジなんだから…」

トライフル塗れになっているエロールをベルから受け取った紙ナプキンで拭ってやると、エロールは咥えていた手紙をポトリと落とし、代わりに私の皿からベーコンを一つ咥えて飛んでいった。
ドジで食いしん坊だけど愛らしいフクロウが(勝手に)飛んでいくのを見送ってから手紙を開けると、いつもより少し汚い字で走り書きされたパパからの手紙だった。
さらさらと読んでいくと、ある部分で目が止まる。

「うっ」

手紙を見て固まった私に、親友達と先輩達が一斉に顔を向けて「う?」と首を傾げる。
隣のリーマス先輩とアミーが左右から手紙を覗き込んだ瞬間、私は叫んだ。

「っうまれた!!」
「わあっ!おめでとう!」
「おめでとうオリヴィア!」

未だに?を浮かべる皆に手紙を渡すと回し読みをした人から順番におめでとうと言ってくれる。
ついにママのお腹から赤ちゃんが産まれたのだ。

「しかも双子ね!」
「私たちと一緒!」

そう、しかも双子なのだ。
パパからの手紙には、兄の方がフレッドで弟がジョージだと書いてある。
一気に家族が2人も増えて顔が緩んでる私に対してか、それとも一緒だと言ったアミーとエリーに対してか、ベルはなんとも言えない顔で言った。

「…同じ双子でもあなた達みたいにならないといいけど、」
「「どういう意味?」」
「授業中もふざけたりする悪戯好きのあなた達みたいにはならないでほしいなっていう意味よ」
「「ひどい!」」

泣いたふりをする2人に対してベルは手厳しい。(ベルの言ったことが本当になったと気付いたのは数年後のことである)
リーマス先輩の隣でピーター先輩が苦笑いをしている。

そして今日は昼から今年のクィディッチ最終戦と言うこともあり、ジェームズ先輩とシリウス先輩は朝食の後控え室に向かった。
試合相手がスリザリンだからか、いつもみたいにふざける様子のない先輩達の後ろ姿は、なんだかかっこよく見える。

「さて、じゃあそろそろ僕達も行こうか」
「そうですね。いい席がなくなっちゃう」
「特等席をとらなくちゃ!」

シリウス先輩の勇姿を目に焼き付ける!と言わんばかりの気合いでベルが珍しく一番に駆けていくが、すぐに双子(と引っ張られてるピーター先輩)に追い抜かれている。
私はリーマス先輩と目を合わせて苦笑してから後を追った。

「オリヴィア、今日も実況頼んだわよ。実況者は分かりきってることしか言わないんだから」

それは本物の実況者の彼に失礼じゃないかと思いつつ「はいはい」と返すと、ベルははぁ…とため息をつく。

「どうしたの?」
「…カメラを持ってくればよかったわ…」

今度は私の方がため息をつきたくなった。
シリウス先輩の事になると本当に…と思いながらポケットからカメラを出すと、ベルは目を輝かせる。

「オリヴィアッ…あなた最高!」
「はいはいありがとう。でもシリウス先輩だけじゃなくて、ジェームズ先輩やセシル先輩も撮るんだからね…ってちょっと!」

クィディッチチームを今年で引退する先輩達を写真に収めてアルバムを作ろうと考えていた私の手からベルがカメラをひったくった。
ベルにカメラを渡したら絶対シリウス先輩しか撮らないのは分かりきっているので慌てて取り返すと、ベルは憤慨したように頬を膨らませる。(美少女はそんな顔でも美少女だった)

「…シリウス先輩の写真は焼き増しして渡すからそんな顔しないでよ」
「…約束よ?」
「はいはい」

ベルとのやりとりを隣で見ていたリーマス先輩がクスクスと笑うのでちらっと見てみると目が合い、あんまりにも優しげな視線にドキドキしながら笑わないでくださいよと言うと「ごめんごめん、オリヴィアは家でも良いお姉さんなんだろうなって思って」と言った。

「そうですか?でも…一番年上だからちゃんとしなきゃって思ってるから、そう見えるなら嬉しいです」

そう言ってへらっと笑うと、先輩が私の髪を掬って微笑む。
お伽話の王子様みたいな仕草をさらっとしてくるので顔が赤くなってしまった。
一人ドキドキしている私に気付かないリーマス先輩は、グラウンドからピッとホイッスルの音がなると、最後にさらりと髪を梳いてグラウンドに視線を向ける。
すぐに始まった試合に、惚けていた私はハッと意識を取り戻して慌ててカメラを構えた。

隣でシリウス先輩シリウス先輩とうるさいベルに答えつつ、カシャカシャとシャッターを切っていく。
クアッフルを奪うジェームズ先輩とブラッジャーを打ち返すシリウス先輩を順々に撮っていって、スニッチを見つけたらしいセシル先輩がスピードを上げた瞬間そちらにカメラを向けると、思わぬ人物が視界に入った。

「あれ…、あの人…」

ポツリと呟いた私の声は、大声援の中誰にも聞かれることはなかった。
でも、あの人…。
視界に入ったのはあの時慰めてくれたスリザリンの先輩。

「…シーカーだったんだ」

誰にも聞こえない声で呟いた私は、こっそりとスニッチを追うレギュラス先輩を一枚だけ写真に収めてから、競り勝ってスニッチを掴んだ瞬間のセシル先輩にシャッターを切った。
そして大歓声に湧くスリザリン以外の生徒達に負けないくらい、私達は大きな声で叫ぶ。

「「やった!!これで優勝よ!!!」」

皆でハイタッチをしながら喜ぶ中ちらりとレギュラス先輩を見ると、先輩は悔しそうな顔をしてから地面に降りていった。


「「さあさあ!主役のお通りだ!」」

談話室に戻るとそこはお祭り騒ぎだった。
ジェームズ先輩とシリウス先輩がセシル先輩を真ん中に引っ張り出して、その周りをチームのメンバーが囲う。
その中にいたレオ先輩とニール先輩に手招きをされたので、隣にいたアミーに行ってくると告げてから輪の中に入っていくと、レオ先輩が口を開いた。

「ジェームズの有難い演説だ。オリヴィアも付き合えよ」

え?とジェームズ先輩を見ると、テーブルの上に乗って役者のように今日の自分がどのように活躍をしたのか話している。
その光景を見た私は話を聞き流しつつジェームズ先輩に向かって吠えた。

「ジェームズ先輩!靴を履いたまま机に乗っちゃダメでしょう!!」

長々と話を聞かされていたチームの皆が助かったと言わんばかりの視線を私に向けるが、ジェームズ先輩はヘラヘラと笑っている。

「だってお祝いじゃないか!優勝だよ?」
「だからって机に乗っちゃいけません!」
「今日くらい大目にみてよ!」
「ダメ!あっ、しかも靴履いたままじゃないですか!ジェームズ先輩正座!」

いつもの言葉を言うと、先輩は渋々机から降りてソファーに正座した。(反射なのか、関係ないシリウス先輩まで正座しかけて、咳払いをして誤魔化していた)

「いいじゃないか、派手にお祝いしようよ〜」
「お祝いはしますけど、机に乗るのははダメです」
「ジェームズ、オリヴィアの言うとおりです。流石にはしたないわ」
「ジェームズのなが〜いお話も飽きちゃった!」
「後輩に説教されるなんて、私同じ7年生として恥ずかしいわよ」

私も含めたチームの女性陣全員に説教されたジェームズ先輩は「わかったよ!寄って集って言わないでおくれ!」と言い残してリリー先輩の元へ駆けていったが、そこでリリー先輩にも説教されていた。
その様子に思わずミランダ先輩と一緒に「全く…」と苦笑いしてしまう。

「なあオリヴィア、例のやつは?」

肩をつんつんとつつかれて振り向くと、エド先輩がコソッと話しかけてきた。
例のやつとは、もちろんアルバム用の写真のことだ。

「バッチリです」

近くにセシル先輩とシリウス先輩が居るので私もコソッと返す(アルバムはサプライズで渡す予定だから)と、エド先輩は頷いて親指を立てた。

「現像はどうする?カーリーにカメラ渡して頼むか?」

頷き掛けてからあっ!と思い出して首を振る。
危ない、レギュラス先輩の写真もあるんだった。

「いえ、私に任せてください!」

私が(あくまでも小声でだが)そう言うと、先輩は一瞬首を傾げてから頷く。

「そうか?じゃあよろしく」
「はいっ」

とりあえずシリウス先輩の写真は焼き増ししてベルに渡して、レギュラス先輩のはこっそり持っておこうと決めた。