あれから1ヵ月が過ぎた。
同室になったのがまたしても双子とベルと私の4人だったので皆で運命だと喜びあった日が懐かしく感じる。
翌日からの授業も特に大きな問題もなく進み、もともと器用貧乏というのか、要領よくなんでもこなせた私が一番上手く出来たのが飛行訓練で(チャーリーとよく箒に乗って遊んでいたからだと思う)教授からは学年が上がったらクィディッチチームの試験を受けた方がいいと言われた。
そして今日はクィディッチの試合があるので、ジェームズ先輩とシリウス先輩は朝食をガツガツと食べてから颯爽と競技場へと向かって行く。
その際私と、隣に座ってモーニングティーを飲んでいるベルに向かって2人がウィンクをして去っていくものだから、シリウス先輩に淡い恋心を抱いているベルがモーニングティーで噎せてしまった。
去っていくシリウス先輩を、顔を赤くしながら見つめるベルのことをニヤニヤしながら見ていると、ベルがこっちをキッと見て言う。
「ニヤニヤしないでオリヴィア」
「やだな、ニヤニヤなんてしてないわ」
「あら、じゃあ貴女がリーマス先輩を見つめる横で同じ顔をしてあげましょうか?」
その言葉にグッと言葉を詰まらせる。
リーマス先輩を見ると緊張して顔が赤くなってしまう事はベルにお見通しみたいだ。
でもこれが恋心なのかはわからない。
私は自分の事なのにこれがどういう感情かわからないのだ。
恋なんて、した事がないのだから。
きっかけは組分けの後のリーマス先輩の笑顔。
あの綺麗な笑顔を見てからリーマス先輩を見る度心臓がドクドクと高鳴る。
「私がリーマス先輩に恋をしているって言いたいの?」
「そうよ」
そう言ってツンと顔を背けてベルはモーニングティーを飲み干した。
恋なのだろうか。
確かに、こんなにも胸が高鳴るのはリーマス先輩に対してだけだけど、リーマス先輩は私の事を妹のような存在だと思っていると思う。
「ベル、私、恋がどんなものかわからないわ。私はリーマス先輩の事を好きなの?」
「、呆れた。自覚がないのならリーマス先輩を見た後に鏡を見ることをお薦めするわ」
そう言うとベルが「そろそろ行きましょう」と立ち上がったので、私はモヤモヤとした気持ちのまま、促されて続いた。
−−−−−
競技場に着くと、朝早く起きて先に朝食を食べてから一番良い席を取りに行くと言っていたアミーとエリーの他に、リーマス先輩とピーター先輩が並んで座っていた。
リーマス先輩を見た瞬間、さっきの今なのでドキッとしたが、横からベルがサッと手鏡を出したのがわかったので意地でもそちらは向かない事にする。
私がみんなの方に駆け出すとベルはつまらなそうに手鏡をしまってから同じように駆け出した。
「アミー、エリー席取っといてくれてありがとう!先輩達も、おはようございます」
「いいのいいの!」
「ほら!ここなら一番良く見えるわ!」
「おはようオリヴィア、ベル」
「おはよう。ほら、座って」
口々に挨拶をしてから、双子の隣にベル、その隣に私、リーマス先輩、ピーター先輩の順に座った。
間もなく入場してきたグリフィンドールとハッフルパフの選手達を観客席が大きな声援で迎えると、グリフィンドールの選手の中にジェームズ先輩とシリウス先輩が見えたのでベルに向かってシリウス先輩は右から3番目だと伝えるとベルは驚いた顔をする。
「オリヴィア、この距離で見えるの?」
「え?ええ、後ろ姿だから多分だけど、あの立ち方はシリウス先輩だと思うわ」
シリウス先輩はいつも重心を左にして右足を投げだすように立っているから間違いないと思う。
ベルが「目が良いのね」と言うのと同時にホイッスルがなったので慌てて目を戻すともう選手達は空に向かって飛び立っていた。
ジェームズ先輩がハッフルパフのチェイサーからクアッフルを奪ってゴールを決め、シリウス先輩は飛び回るブラッジャーをバットで打ち返す。
私はそんな中、競技場内をふよふよと飛ぶ金色から目が離せなかった。
「まずいわ、スニッチがハッフルパフのシーカーの近くを飛んでる!」
「オリヴィア、、まさか君、スニッチが見えてるのかい?」
隣に座っているリーマス先輩がぎょっと目を見開いて尋ねてくるが、それどころじゃない。
まだ気付いてはいないけれど、スニッチはハッフルパフのシーカーのすぐ上にいる。
「あっ!」
そう声をあげるのとハッフルパフのシーカーがスニッチに気付いたのは同時だった。
気付かれた!
スニッチは伸びてくる手から逃げようとピュンピュン飛び回るが、伸ばされた手はもう少しで−−−
その時、ハッフルパフのシーカーとスニッチの間をビュンと何かが通り過ぎた。
「あ、、よかった、」
それはシリウス先輩の放ったブラッジャーだった。
「「なになに」」
「何がどうなっているの?」
「今何があったの?」
「ハッフルパフのシーカーがスニッチを捕まえそうだったのよ。それをシリウス先輩がブラッジャーを打って阻止したの」
ベルの横からヒョイッと顔を出して同時に質問してきた双子に答えるとアミーはホッと息をついて、エリーは「シリウス先輩凄い!」と言ってベルの背中を叩いた。
背中を叩かれたベルがイラッとした声で「痛い!」と叫ぶが、
「あっ!今度はグリフィンドールのシーカーが見つけたわ!」
また声を出した私にみんながガバッと柵に手をかけて身を乗り出す。
リーマス先輩とピーター先輩達まで。
「「どこ!どれがシーカー!?」」
「オリヴィア!シリウス先輩は!?」
「あそこ!向かいの観客席のところ!」
興奮したように声を揃えた双子に、スニッチを凄い速さで追いかける赤のユニフォームを指さして答える。
どさくさに紛れてシリウス先輩の場所を聞くベルは無視だ。
「もう少しっ!」
「まずいね、ハッフルパフもスニッチに気付いた」
リーマス先輩の呟く通り、ハッフルパフのシーカーもスニッチを追い出した。
「あぁ!もうあと少しなのよ!もっと手を伸ばして!」
じわじわとグリフィンドールに迫るハッフルパフに、手をグッと握り締める。
その時、赤と黄の間をものすごい勢いで別の赤が横切った。
ジェームズ先輩だ!
目の前を横切られたハッフルパフのシーカーは失速した。
そしてその瞬間、グリフィンドールのシーカーがスニッチを掴んだのだ!
「やった!!」
「スニッチを取った!」
実況がグリフィンドールの勝利を告げると私達は飛び上がり、私は隣にいたベルと抱き合って喜んでから先輩達とハイタッチをした。
そしてそのまま私の腕をガシリと掴んだリーマス先輩。
「え!?」
「行こうオリヴィア!」
その突然の行動に私を含めた全員が目をぱちくりさせる。
グイッと引っ張られた私は慌てて口を開いた。
「わっ、あの!行くってどこに!」
「グリフィンドールの控え室さ!」
引っ張られながら、どういう事?と思い後ろを振り返るがベルとアミーはポカンとした顔でこちらを見ていてピーター先輩とエリーは顔を見合わせながら首を傾げていた。
首を傾げたいのは私だ。