episode.2
『どうしたの?』
「え?」
「なにが?」
「今、声しなかった?」
「いや?」
どこかからか聞こえた、あどけない小さな女の子の様な声。どうやら彼氏には聞こえていないらしい。
「あ、ごめん。多分、外の声かも」
口ではそう言いつつも、確実に室内から聞こえている声が気になって仕方ない。子猫を撫でる手はそのままに、視線を部屋中に巡らせる。もしかして、事故物件?そんな考えが頭をよぎった。
今日、日曜日だから子供多いのかもね。なんて吞気なことを言っているが、
外にいる子供の声をこんなにクリアに聞き取れるものなんだろうか。
例えるならそう、足元の方から___
足元?!
足元には、くりくりとした瞳で見つめる子猫しかいない。
いや、まさかね。そんなはず……
じーっと子猫を見つめてみる。
『なあに?』
「……」
きゅるんという効果音が付きそうなくらい、可愛いお顔で私を見つめてくる子猫。本当に不思議そうな顔で見つめてくるせいで、こっちが可笑しいみたいになっている。どう考えてもおかしいのはあなたでしょうよ……
「はるちゃん」
『なあに?』
足元の毛玉が返事をした。声の主はやっぱりこの子だ。
「ふふ。にゃあんだって。名前覚えられて偉いなあ」
彼は嬉しそうに目を細めて子猫を撫でている。やはり声が聞こえていないようだ。まあ、当たり前か。どうして飼い主である彼ではなく、その彼女である私に声が聞こえるんだろう。心霊現象でよくある『波長』があってしまったんだろうか。
「ねえ、意味わかんないと思うんだけど聞いてほしいことがあるんだよね」
「なに?」
子猫から手を放し、真面目な顔をして彼に向き合う。いつになく真剣な表情に驚いたのか、彼も真剣な面持ちで向き直った。
「はるちゃんと会話できるかもしれない」
「……え?」