04
「取り合えず一緒に帰ろうか獄寺君」
「!はい!10代目が仰るのであれば是非‼」
俺がツナの頭を撫でた時点で、ぶつぶつと幼馴染……いやしかし態度が…とギリギリしていた獄寺君だったが、ツナに言われると光の速さで笑顔に転じた。
ここまで態度の違いを見せられるといっそ感心する。
そして心なしか犬の耳と尻尾が見える。
「噂に聞いてた転校生って獄寺君の事だったのか、何か意外だな二人ともタイプ違うのに」
「うっ、まぁ色々あってね……」
「因みにどうやって仲良くなったか聞いてもいいやつ?」
「けっ、誰が俺と十代目の出会いを語ると……」
「今話してくれるともれなくツナの幼少エピソード一つ紹介」
「買いだ」
「獄寺君⁉」
夜天も何言ってんの!というツナの言い分に耳を傾けず獄寺君は意気揚々と話し始めた。
その様子にこれはもう駄目だとツナは諦めの色を見せたので、本当にどうやって仲良くなったのか不思議に思う。
獄寺君の話に耳を傾けると、昨日の放課後そんなことが起っていたのか、という驚きと同時にある一言に思わず笑顔のまま固まった。
その様子が隣に居た幼馴染に不思議そうに見られていることに気づかず、俺はその一言を呟く。
「……ボンゴレ」
「あぁそうだ!俺はその時確信した、このお方こそボンゴレファミリーの10代目に相応しいと‼」
ほぼ自分の世界に入ってしまっている獄寺君はいまだに10代目……、この話の流れを見るにツナの事を素晴らしいお方だと息巻いている。
獄寺君の話に相槌を打ちつつ、ツナの方へと目線をやる。
丁度ツナも俺を見ていたようで、ぱちりと視線が重なった。
「ごめん夜天……、突然何言ってんだって感じだよね、10代目とかファミリーとか……」
「……いや?新しいゲームの設定か何かかなって思ったけど……、落ちゲーとか何かの話?」
焦りつつも何処か申し訳なさそうに言うツナに、反射でそう茶化して返す。
ゲームの話だと思っているー‼と表情に諸に出たツナはあからさまにほっとした様子だった。
その様子に俺も見て見ぬふりをする。
「って聞いてんのか九重!」
「うんうん聞いてる、ていうか気軽にやっくんっていっていいよー」
「けっ、てめーが10代目の幼馴染っつーのは認めるが、てめーと仲良くするつもりはねぇ‼」
「酷いなぁー、俺悲しいー」
「清々しいほどの棒読み……」
俺の態度に獄寺君が果たしますか!とキラキラした目でツナを見つめている、その片手にはダイナマイトが握られていて思わず物騒だなと心の中で呟いた。
慌てて止めに入るツナの様子にけらけら笑っていると、いつの間にかツナの家の前まで来ていたらしい。
「それでは10代目!また明日の朝迎えに来ますね‼そっこーで‼」
ではまたー!とツナの返事を待たず笑顔で手を振って去っていく獄寺君に、深くため息を吐いたツナに苦笑を返した。
「懐かれてるね」
「なついたっていうのかなあれは……」
疲れたようにいってはいるが、俺以外の友人が出来て嬉しいのだろう、表情は思ったよりも柔らかい。
「……なぁ夜天、お前……」
「ん?」
「……ごめんやっぱ気のせいだと思う!んじゃまた明日―‼」
「え、ん?お、おう…また明日……」
何処か焦ったように家へ入り込むツナに目を白黒させ、手を挙げて別れを告げる。
言いたいことでもあったのだろうか、あそこまで言い淀むツナは久しぶりに見た。
母にただいまと声をかけ、自分の部屋へと荷物を放る。
一人になったことで獄寺君が言った言葉をじわじわと思い出し、ずるずるとその場にしゃがんで顔を覆った。
……別に泣きたいわけでもない、感傷に浸りたいわけでもない。
胸の内から溢れるこの感情が果たして喜んでいるのか悲しんでいるのか、それすらも自分では分からなくて。
やりようのないこの感情を無くすように、深く深く息を吐く。
脳裏に幼い頃の幼馴染の顔がちらついては消えていく。
既視感のある見た目と、雰囲気。
これまでの言動など、対して気にも留めてもいなかったが、あぁ、そうか、ツナは、綱吉は。
「……アイツの子孫か」
言葉にすればすとんと心の中で空白を作っていた穴が埋まる。
加えて、今まで無意識に蓋していた前世の出来事が脳裏をよぎった。
「……前の俺はそうすることでしか生きる道が無かったからそうしたけど」
今の俺はどうしたらいいのかねぇ。
そう独り言を呟いて、母の声が聞こえてくるまでその場に座って俯いていた。