スミレにプラムラベンダー


新しいチークを一刷毛、お姉さんに色が白いですからこういうのもお似合いですよと勧められてうっかり買った紫色は肌に乗せるとあまりわからない。青みのかかった赤、と説明を受けても色の知識がなくてどう見ても紫色だしいつものせているピンクと肌に乗せればどこが違うかよくわからない。透明感が、とか血色が、とか自分の顔でやられてもあんまりピンとこないのは仕方ないのかな……

今日は龍くんと出かける約束をしていて、昨日からあれを着ようとか新しいチークをつけようとか色々考えていた。とりあえず時間通りに家を出たら今日の不運は流れ流れて私に来たらしく電車が遅れて頭を抱えた。龍くんを待たせたら龍くんがさらなる不運に見舞われてしまう!!慌てて「遅れますごめん」と送ったメッセージに対して龍くんから帰ってきたのは「了解!気をつけてゆっくり来るように!」という返信とゆるゆるのスタンプで私の焦りなんかには気づいていない。だから!ゆっくりしてたら龍くんが!

改札からバタバタ走って待ち合わせ場所に向かうとスマホが震えて龍くんからまた「走らずに来いよ!」と優しいメッセージ。それからさっきと同じシリーズのゆるゆるスタンプ。だから!龍くんの不運が!!人混みでは危険度が増すからわざわざ外で約束していたのだ。こんなことになるなら改札前集合にすれば良かったな。

駅前の少し外れたところで寄っかかって待っていてくれた龍くんはきょろきょろしながら私を探していてバタバタ走ってくる私を見つけてぱあと顔を明るくした。うわ、今日もかっこいい!
「名前ーー!」
大きめのメガネをかけた龍くんがマスクを半分下げて私を大きな声で呼んでブンブンと手を振った。龍くん!!そんな大きい声出したらバレるって!木村龍がここにいるってみんなわかっちゃうから!メガネやずり下げたマスクじゃ龍くんのかっこよさは全然隠れてなくて私は思わずずっこけそうになる。こけたら余計目立つのでさすがにやらなかった。

「ごめん!大丈夫だった?」
「俺?俺はただ待ってただけだから平気だけど」
腕時計をみてうん、やっぱりそんなに待ってない!と龍くんが笑い、それから私の顔をじっと見た。
「なんか今日……」
「……!?!?」
龍くんのぱっちりした目が私をじーーーっと見ている。私といえばそんないきなり見つめ合うとか聞いてない!と慌てて、走って来たから髪ぼさぼさなのは確定だしマスカラとれてパンダとか!?口紅もはげてたりはみ出たりする可能性がある、アイラインはよれてても龍くん気づかないよね!?と内心悲鳴をあげながら一瞬にして固まった。そんな私をよそに龍くんは親指で私の右頬を触って「あ、!」って嬉しそうにした。

「顔、赤いの可愛いな!」
顔?何かしたっけ。チークの青みがかった赤という意味のわからないあの色のことかな。

「寒かっただろ?走って来てくれてありがとう」
龍くんは優しい顔で「だから、赤いんだな」と両手で私の顔を挟んだ。私は自然とそういうことができちゃう龍くんがあまりにもかっこよくて、しどろもどろになって俯いた。そんなことないよ、とかこっちこそ寒いのに待たせてごめんとか言うけど龍くんはニコニコしていて「すごい嬉しいよ」って本当に嬉しそうにしてる。

「は、恥ずかしい……」
「え、なんで!?」
龍くんは本当にわかってないみたいで私が手を払おうとするのをぱしっと掴んで止めた。さらっとかっこいいのが恥ずかしいしずるい!龍くんはそのまま掴んだ手をするりと滑らせて手を繋いで「よし、まずは映画館から!」と私の手を引いた。そうそう、今日はガラ空きの映画館で龍くんの事務所の人が出てるアクション映画を見てそれからおすすめのお店でランチしていろんなことを話そう。


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