この世は悲し

>>微妙に転生してた現パラ

私は100年前にあっさり死んだ。

霊力が減って減って、それでも行き場がないから戦い続けてそんな状況であっさりやられてその時の怪我が治らずに死んだ。枕元で手を握る隊長の手が熱くて、力いっぱい握り締められたのをよく覚えている。死ぬな、死なないでくれ、名前くん、ここで死んだら君は。君は。

ここで死んだらなんだったというのだろう?
呆気なく死に100年経ってまた生まれて、気がついたのは私は好きな人とも結ばれず花も咲かず、ただ無為に散ったということだけだった。

「大神さん、どういうことですか」
100年経ってまたこの人に会った。この人は変わらない笑顔で名前くんと私を呼んでから名前さんの方が良かったかなと頬をかいた。この人は今も変わらず国防を勤めているのだという。変わらない姿にこの人は私が死んでも、他のみんなが死んでもひとりで100年生きてきたのだとわかった。それほどに何も変わらず(姿は変わらないのに仕草は少し老いたかもしれない)服装だけを変えて私の前に現れた。

「100年経ってもなんにも変わっていないじゃありませんか。100年前と同じ、一部のものが平和を担い、酷使され、何も変わっていないじゃありませんか。あなたという人が100年、この国を守っても霊力じゃない別の特別な力でこの国を守っている。なぜ何も変わっていないのですか!」
「名前くん」
大神さんは私の呼び方を改めるつもりはないらしかった。真剣な眼差しで喚く私を見て、宥めるように名前を呼んだ。その姿に私はいっそう苛立つ。なぜ、あなたがいるのに、なぜ!
「大神さん、私たちが戦った意味はあったのですか」
「それは俺にもわからないんだ」
100年前と違って私は制服に身を包み、一方大神さんはスーツを着ていた。私たちの見た目の年齢差は100年前と違わないのに、私は学生で彼は社会人だった。今の法律では、17歳の私と大人の大神さんはおおっぴらに恋愛ができない。腹ただしい。100年前も私は添い遂げることが叶わなかったのに、今は法が邪魔をするなんて。

「何も変わっていないのに、身分こそ自由になったのに、なんでこんなに都合の悪いことばかり、」
「名前くん」
恨み言ばかりの私に100年は短いな、と大神さんが呟いた。短い?この100年で何が起き何が壊れ何が新たに生まれたのか、その事実からこの人は目をそらすのか?国の中枢からずっと見てきたこの人が今更?怒りと失望で何も言えなくなった私に大神さんは笑いかけた。100年前に見ていた姿と何も変わらないはずが、全然違う人のように見えた。

「100年は短い。君を失い、100年が経った。それから皆が順に死に最後にひとり、後から”死んだ”俺にとってはまだ100年も経っていないんだよ、名前くん」
め、免許証を見せてください。私の震える声に大神さんは黙って財布を開いた。うそ、うそ、こんなのはうそだ。示された免許証の生年月日を震える指でなぞる。うそだ、この人が、大神隊長じゃないなんて、うそだ。肉体が違うなんて嘘だ。この世に生まれてまだ30年も経っていないなんて、うそにきまっている。それほどまでに顔も声もからだつきも何もかもが変わっていないじゃないか。

私はまた、どれだけ彼を傷つければいいんだ。寝台で苦しむ私の手を握った隊長の顔を思い出す。腰が抜けて地べたに座り込んだ私を大神さんが見下ろした。
「100年経っても君は変わらないな、名前くん」
見上げた隊長の顔は、別の体のはずなのに、100年前と全く同じだった。


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