食べ物夢小説集

>>白玉とフラウェ
「……事務所の給湯室で、こんなに粉まみれになっている言い訳、聞いてもいいですよね」
「ご覧の通りです……」
「ごめん、一織に食べてもらおうと思って……」
粉まみれの名前さんと七瀬さんの手元を見れば皿の上にみたらしのかかった白玉がのっている。と思ったが、シンプルなソーサーに見える。適当だな……他の皿は大きすぎたのだろうが、「多分これでいいでしょう」とか言って名前さんが選んだところが容易に想像される。そして、白玉を作ろうとして粉まみれに。七瀬さんのことだから想定の範囲内ではある。名前さんがいて止められなかったのは……七瀬さんの強引さと、七瀬さんの強かな懇願に弱い名前さんを考慮すれば仕方のないことと言えよう。

問題は多くの犠牲を払って作られた白玉だ。ちらっと見えたが、ねこちゃんの形をしているように見え……見えなくもない。粘度の低いみたらし餡でねこちゃんの模様が表現されて……白玉のねこちゃんののったお皿を七瀬さんが大事そうに持っていて……
「この間テレビで見たとき一織が釘づけになってたから……」
「ぐっ……」
「絶対一織さん好きですよね!!ね!!」
私が怒っていると思った七瀬さんがしょんぼりして、名前さんは明らかに確信犯でおもしろがっている。名前さんは影で私のことを「パーフェクト・ツンデレ・高校生」と呼んでいて、私が七瀬さんに振り回されているのが楽しくて仕方ないのだ。今もかわいい白玉とシュンとした七瀬さんの組み合わせにぐっときている私を見て悪魔のような顔で笑っている。
「き、嫌いじゃありません……」
「ほんと!?いっぱい食べてね!」
「よかったですね、七瀬さん!一織さん、嫌いじゃないって!!むしろ好きだって!」
絶対、この人にぎゃふんと言わせることのできる大人になりたい……

「早く食べて!」という七瀬さんにフォークを渡されて白玉のねこちゃんを恐る恐る刺す。少し茹ですぎ、な気がする。しかし期待のこもった七瀬さんのきらきらした目を見ると、正直に伝えることは憚られた。
「美味しいですよ」
「本当!?やった!」
「良かったですね七瀬さん……一織さん」
「生暖かい目で見るの、やめてくれませんか……!!」

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