きょうだい夢主だいすき

きょうだいっていいですよね。兄妹も姉弟も兄弟もいい、京大、姉妹もいいですよね……最高だな……最高の日本語だ……

天才と秀才兄弟がすき。上が秀才がすき。コンプレックスかためたやつもすき。
血が繋がってなかったり養子に出されてるとなお………………いやこれはあいななでやりましたが……どのジャンルでもやるぜ、己のソウルチューンのサビなので……

>>千空と血のつながらない姉、夢主がひたすら千空に意地悪してるので嫌な人は読むのをやめよう

人並み以上に勉強ができて、人並み以上に運動ができ、人並み以上に芸術の才があり、人並み以上に整った容姿を持っている。でもそれは弟の前では何の意味もなさない。父はわたしたちに均等に優しく厳しく接してくれた。弟はべたべたするような性格でなかったが、家族として接してくれた。私だけが、うまくできなかった。

家族の贔屓目なしでも弟は特別だった。探究心という特別扱いにくくて尊い才能を弟は小さな時から持っていた。弟のことを家族として愛していたかと聞かれると言葉に詰まる。わたしはずっと弟を恐れていた。


さて、何千何百年だかの石化を解いてわたしの現在地はおそらく大阪府北区。勉強のために教授に付き添った学会が昨日のことのように思い出される。最後の晩餐は創作おでん、お好み焼き……悔いはない。おいしかった。願わくばこの荒廃した世界でもう一度食べたい。超人気アイドルのコンサートと日程が被ったせいで高級ホテルに寝ていたのが昨晩。あの柔らかく包み込むようなマットレスはない。今日からは草の上だ。

弟ならば、この状況下を冷静に分析しただろうがいち大学生のわたしはそれどころではない。まわりを人間と思しき石像に囲まれて、動いているのはわたしだけ。目に光差す直前のバキバキと砕ける音、周りの石片を思うにわたしも5分前には周りと同じ石像だった。あたりは緑。文明の滅び、人類の絶滅を察するに十分だった。

わたしはとりあえず何かしら履物を求めて立ち上がった。まずは大阪近辺を捜索して、次に目指すのは他の都市だ。

名前には石化から目覚めた人間は自分だけでないという確信があった。名前のような凡人が今になって目覚めたのなら、優れた人間はとっくに目覚めているに違いないから。

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千空は「村の外で襲撃者あり、女ひとり、自称21歳、コハクが捕獲済み、ほぼ裸」という報告を受けて立ち上がった。
「自力復活者か!?」
「そんなことある?」
「オーサカより歩いてきたと話しているのだが……」
「オーサカって大阪……?」
「多分そうだろ」
首領自ら赴くの、やめたほうがいいと思うんだけどなーというゲンの言葉を無視して千空は村の入り口を目指す。大阪から村までの距離、仮に襲撃者は成人女性として歩いてきたのなら時速は……

「なんだ、名前か……」
「……」
捕獲されていたのは千空の血のつながらない姉だった。なーんだがっかりと言う顔を互いにしている。姉を観察すると、縄でぐるぐるまきにされてたほぼ裸のような格好、適当に作ったのだろう履物、投げ出した足にこしらえた擦り傷、顔には土汚れ。没収された磨製石器の槍と荷物。名前は血の繋がらない弟の顔を見てため息をつき、わざわざ同じ言葉を口にした。

「なんだ、千空か……」
「アッ知り合いな感じ!?やっぱ千空ちゃんの知り合いってぶっ飛んだ人しかいないね!?」
「姉。……大阪から歩いてきたのか?」
「そう。太平洋側の主要都市を見たけど、残念ながらここの他に人間が活動している様子はなかった」
「そうか……」
「お、大阪から歩いてきたの……?地図もないのに主要な都市を経由して……?」
「そうだよ。地形変わってたから地図も意味ないし、主要都市があったと思しき場所って言い方の方が正しかったね」
「ヒーッ千空ちゃんの家族って皆こんなんなの……」
ゲンはその瞬間マズったなと思った。名前の表情は明らかに嫌悪を形づくったし、千空の表情が僅かに強張ったのもメンタリストは見逃さなかった。反抗期か?現役高校生の千空ちゃんじゃなくて21歳の姉の方が?たしかに彼はただの高校生におさまらない成熟した精神を持ち合わせているけど。瞬時に察して話題の転換を試みるが、千空の方が立ち直りが早かった。名前に今が西暦何年か、人類に何が起きたか、まで手短に話して「人類総復活のために協力しろ」と迫った。名前は顔を歪めた。

「おまえはまたご大層に人類救おうとしてるわけ」
「……そうだよ」
名前は本当に嫌そうだった。体の露出も気にせず背骨を伸ばす。ゲンは大人しく科学王国に加わらないことを不審に思った。大阪から歩いてきたのなら、もうここしか頼れないのはわかっているはずなのに。千空と家族だというのならその頭脳や人柄もよく知っているはずなのに。視線や表情だけですぐにわかる。名前と千空は仲の良いきょうだいではなかった。名前が一方的に嫌っている。冷や汗が出た。磨製石器を武器に大暴れした女がリーダー相手にたてついて、リーダーは寛容に受け入れようとしているこの状況に。

「……お前のためじゃない、人類の明るい未来のためだ」
名前はたっぷり沈黙した後に、同意を口にして、千空は何も言わずに頷いた。協力するって、そのわりにすっごく嫌そうな顔だけどね。ゲンは賢いので口には出さなかった。また槍振り回されたら困るし。

コハクが丁寧に縄を解いてやって、名前はようやく自由の身になった。気をきかしてゲンが持参した上着を貸してやった。
「あー、ありがとう」
「ううん気にしないで。すっぽんぽんじゃ困るでしょ」
「今ほど全身脱毛しといて良かったと思ったことはないよ。文明ってすごいね」
「あーそうね……」
見てない、何も見てない。ほぼ裸の名前ちゃんの体毛の有無も、千空ちゃんの死ぬほど嫌そうな顔も見てない。家族の脱毛事情なんて聞きたくないに決まってる。ましてや年の近い姉の……ゲンは話題を変えた。

「それにしてもどうやって自力で復活したの?」
「どうやって……?どうやったんだろうな。よくわからないけど急に割れて視界が開けて。気づいた時にはひとり動けるようになってた」
「は〜じゃあ石化してる間ずっと意識があったんだ」
「?あったよ」
千空は続きを聞きたくなかった。なんとなく予想はついていた。冷たい汗が背中を伝った。世間では人当たりがよく才色兼備で通っている石神名前が、千空にだけ恐ろしく冷たい理由をいちばんよく知っているのは千空だった。

「あっという間だったよ。動けるようになったらやりたいことを数えてた。それで、どうしても意識が飛びそうになったら弟のことを考えるんだ」
お前のおかげだねと名前は吐き捨てた。千空は血のつながらない姉の冷たい微笑に視線を逸らした。嫌いだ、お前なんて、お前のせいで、お前だけは。名前の声を久しぶりに聴いたせいで、過去に言われた言葉が浮かんでは消えた。

「今、わたしがこうして動けているのはお前への嫌悪のおかげというわけだ、ありがとう。生まれて初めてお前に感謝するよ」
千空は何も言わずに踵を返した。言い返す気にもならなかった。3000年経っても、名前の嫌悪は薄れることなく残っている。千空はずっと前から名前を可哀想だと思っていた。ただの血の繋がらない弟を恐れる姉にかける言葉は、今も昔も何もなかった。名前は幼い頃からずっと、石化を解かれた今でも、千空の好奇心を恐れている。

今やかつて無理矢理おさまっていた家族の枠組みも戸籍なんてものも、ふたりを愛してくれた百夜の存在も、全て失われた。名前と千空を繋ぐものは嫌悪し嫌悪されたどうしようも無い過去だけになった。それでも、千空にとって名前は、たったひとり残った家族だった。名前がどう思っていても、それだけは譲れなかった。

吊り橋を渡る背中に名前の声が聞こえた。村で作っている服を優先的に譲ってもらう約束になり、コハクに感謝しているようだった。千空は黙って歩き続けた。

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