モドキ
「名前、ドアの戸締りはちゃんとしなくちゃ」
「は!?」
「Good morning, my sweet heart」
「は!?」
重たいなあと思って目を覚ました日曜朝。布団一枚増やしたからかな、と渋々目を開けると隣に横たわる目の覚めるような金髪、整った顔。舞田類。
「なっなんで舞田さんが!うちの部屋にいるんですか!?!?」
「どうしてって……honey, どうして俺がいたら困るの?」
「え!?舞田さんがいたら普通に困りますよ!っていうかどうやってうちの鍵開けて……」
「意地悪なhoney, 俺は一緒にいたいだけなのに……」
「えっ舞田さん、ちょっと、困る、」
舞田さんの端正な顔が寄せられてキスで言葉の続きが奪われる。私たち、恋人同士でも無いのに!私の悲鳴さえも舞田さんに飲み込まれる。文句を言おうと開けた口に舌まで入れられて私は堪らず舞田さんの舌を噛んだ。
「It hurts!!」
「ま、舞田さんが急にヘンなことするから……わ、私のせいじゃ……」
血の流れる舌を見せて舞田さんが悲しげに私の手を取る。
「my sweetie, どうしてこんなことするの?俺たちこんなに愛し合ってるのに……」
「は!?」
混乱する私を他所に舞田さんは私に対する深い愛情を並べ連ね、さらに私の混乱を深める。私たちが愛し合ってる?そんなバカな。確かに私たちは信頼しあった良い関係を築いてきたとは思うけど……
「そうやって俺の気持ちを弄んで楽しい?こないだだって俺に黙って他の男と食事に行って、あんなに遅くに帰ってきて」
「な、なんで舞田さんがそんなこと」
「黙って行ってごめんなさいじゃないの?」
ねえ、honey, どうして俺を拒むの。
どこか目に光のない舞田さんを見て私はクリスマス前のやりとりを思い出していた。
「あーうちにもサンタさん来てくれないかな!」
「名前ちゃん、一人暮らしの家にサンタさんが来たら怖いだけでしょ……」
「た、確かに」
「戸締りちゃんとして寝なね」
「はーい……」
山下さんのあれはもしや忠告?忠告まではいかずとも、あまりに危機感がなさ過ぎた。寝起きの頭もようやく覚醒して冷や汗が垂れる。
「舞田さん……」
「ほら、be lady……いい子にして」
舞田さんはテレビドラマみたいにロマンチックにキスを重ねて私を叱る。
「舞田さん、私たち恋人同士でもないのにキスなんて」
「何を言ってるの?honey」
舞田さん、笑顔が怖いよ。私の怯えを感じ取って舞田さんは優しく頬に手を添える。
「俺たちは恋人同士でしょ?」
恋人になった覚えなんてないよ、どうして、という私の困惑は舞田さんにまた飲み込まれる。舞田さん、私の息絶え絶えの言葉に答える舞田さんの笑顔はこんな状況でもいつも通りに優しい。
リクエスト/無自覚ストーカーの舞田類
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