末永くよろしく♡


「はじめまして、私のご主人さま!」
「ええー……嘘でしょ……」

やたらに大きい荷物が届いた。気の早いお中元かな?ビールかな?縦に長いからお魚?それとも新型の掃除機……うちには丸い自動制御の掃除機がいるからなあ……とうきうきしながら開封したところ人間の女の子が詰められていた。アッやばい事件に巻き込まれた!しかし空気に触れた瞬間に彼女はパチッと目を開けて先ほどの衝撃的な一言を放った。

送り主を見ると、本当にお中元らしかった。以前映画の仕事をした時に技術協力で参加していたベンチャーの新作なのだという。メイドロボット、名前。こういうのを送るのならもっと違う人がいるだろうに……と雅やかな見た目に反しメイドカフェが趣味の同僚が頭に浮かぶ。譲り渡そうにも、説明書にリセットの方法は無く名前はにこにこと俺のことをご主人さまと呼ぶ。困ったなあ、かわいい女の子に慕われるのは悪くないけど、隣に住んでるるいのことを考えると面倒な予感がする。

「ご主人さま、わたしは何のお仕事をしたら良いのでしょう。なんでもお申し付け下さいね」
「え、じゃあ肩でも揉んでもらおうかな……」
「承知いたしました!」
なんとなく口にした命令にも彼女は心から嬉しそうにして俺の背後に回った。ぺらぺらと説明書をめくる。エネルギーはコンセントでの充電がメインだけど愛情を与えれば、それをエネルギーに変換するから電気での充電も不要になるのだという。どんな仕組みなんだか。振動からエネルギーを生むのか、この大きさを動かすだけのエネルギーを作るには接触した俺の熱は足りないだろう。

「愛情、ねえ」
「はいご主人さま!ご主人さまの愛情をいただければわたし本当のニンゲンみたいになれるんですよ」
肩を揉む力も絶妙で発熱している名前の体はあたたかく、相当高度な技術で作られているらしく肌まで柔らかかった。

「愛情って具体的になんなの」
「ご主人さまの気持ちです。ご主人さまの愛情でわたしたちは恋をしてそのドキドキで心臓のエンジンを回すんです。あんまりすごいと心臓が焼き切れてしまうのですが、もしそうなったらラボに送り返していただきたいのです。新しい心臓が必要ですから」
「なんだかメルヘンな話になってきたな……」
名前があんまりにこにこして言うものだからプログラムされたご主人さまに夢をもたせるための回答だとわかっていても、真っ向から仕組みを否定するのも悪いような気がしてしまう。開発者……君のパパはすごいね。すごいけどちょっと変態入ってるね。

「ああ!ご主人さまったら信じてないんですね!もう、仕方ないから見せてあげます」
「えっちょっとそれはまずいんじゃないの!?」
名前は気にせずプチンプチンと覚束ない手つきで真っ白なブラウスのボタンを外してふりふりしたエプロンドレスをずり下げた。平坦な胸元が露出し、飾りみたいな下着(なんとフロントホックだった)を最後に外して名前はそこに手をかけた。

「いいですか、グロくてもびっくりしないでくださいね……?」
ぱかり。切れ込みから胸元のパーツが四角く外れる。
中身を見つめて呆気にとられる俺をよそに名前は照れたみたいにふふふと笑った。
「ね、ご主人さま、本当でしょ?わかったら、いっぱいいっぱい、愛情注いでくださいね」

ギュインギュインと加速していく名前の心臓は恥ずかしいからといってすぐに閉じられてしまった。不慣れな指先でフロントホックを止め直し、ブラウスのボタンをとめるのがあまりにも下手くそなので見かねて全部とめてやるとえへへと照れ笑いをする。本当はニンゲンかと思うくらいに精密だ。タチの悪いドッキリかと思って名前を置いて家中カメラを探しても見つからず、ようやく受け入れた。疲れたから今夜は寝よう。起きたら夢かもしれないし。

「さあご主人さま、愛を深めるために一緒に眠りましょう……?」
「いや絶対寝ないからね」
「そんなあ!ご主人さまの愛情受けて発電してますからわたし、あったかいですよ」
「出会ってまだ数分だけどそんなに愛情注いだっけ?」
「うふふ」
「なーんかまだ、隠してることがありそうなんだよね……この子は」
「うふ!ご主人さま、女の子は秘密があってこそかわいいんですよ」
「はいはい」
こうして、奇妙な2人暮らしが始まった。この後紆余曲折あって名前の心臓が焼き切れラボに担ぎ込む羽目になったりライブ映像を見てテンションの上がった名前の腕がすっぽ抜けることになるなんて、この夜俺たちはまだ知らなかった。

/アタシポンコツアンドロイド


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