ゆりゆめ詰め合わせ


>>いろんなゆり 涼ちんもいる

「やっと出会えたんです、私の運命のひとに」
あずささんは今日も可愛い。私服のワンピース、日よけの帽子。おしゃれなフルーツのたくさん入ったアイスティーがよく似合う。
「え!とうとう見つかったんですか」
「はい、ようやく」
たまたま迷子になったところを助けて以来、あれから何回迷子のあずささんを見つけただろう。その結果仲良くなってこうしてお茶をしてこういう話をするようになった。
「っていうことはやめちゃうんですか。アイドル」
「いえ、まだアタック中で……でもこれから押して押して押しまくります」
握りこぶしを作って決意を新たにするあずささんを見てるとあまりのかわいさにこっちも顔がにやけてしまう。あずささんが名前さんは結婚式の準備、進んでますか?と聞いてくれた。披露宴の曲悩んでるんです。というとあずささんはやっぱり有名どころは外せないですよねとウキウキしてお勧めをいくつかあげてくれた。そんなかわいらしい姿を見てるとこっちまで幸せになる。セットリストから目をあげたあずささんが名前さん、すごく幸せそうですと微笑んで私にそういった。ええ、私今すごく幸せなんです。
/あずささんと友達

「名前さんを見てると、ここが痛くなるんです。どうしてですか?」
やよいさんはうるうると大きな目を塩水で潤ませて私を見上げた。どうしてでしょう。なにかの悪い病気かもしれないわ。理由がまだ、よくわからないから出来るだけ私と離れてお仕事しましょう。ね、やよいさん。やよいさんのためよ。やよいさんはそんなあ!と泣きそうな顔をしてお洋服のお腹のところをぎゅっと掴んだ。胸が痛む。やよいさんのためなのよ。わかってくれる?やよいさんはしばらく黙って、私のだめ押しにはいと頷いた。さあ、お仕事しましょう。具合が悪くなったらちゃんと教えてね。はあい。やよいさんがとぼとぼ背中を向けてスタジオの方に歩いていった。ああ、なんて悪い大人。事務所のみんなにも触っちゃダメよといってある大事な資料が入っている机の引き出しのことを考えた。あそこに入ってる辞表を明日にも出さなくちゃ。私はまたやってしまった。何回やってもこうやってやよいさんを苦しめてしまう。かわいいやよいさんにはかわいくて素敵な人と結ばれてもらわなくちゃ困るのだから、私はこうしてまたやよいさんの前から姿を消すのだ。
/やよいとプロデューサー


「そうよ、好きになっちゃ悪い!?」
伊織が感情を爆発させたように叫んだ。小鳥さんが机の奥からそろりと顔を出して私たちを伺っている。なんとなく伊織と話していて好きな人とかいないの?っていう恋バナになった。伊織がイマイチ不明瞭な答えばかりなのであっプロデューサーくんとか?と聞いたら「なんでそっちなのよ!」とむくれたので恐る恐るもしかして、私?と控えめに尋ねたらこの様だ。ほ、本当に……?いまだに信じられない私を見て伊織はますます怒り狂い、どうして信じないのよ!と机を叩く。お行儀が悪いよ、ごめんね、私自信がないから。伊織の気持ちを疑って本当にごめん。私が言葉を続けると伊織はたちまち静かになってしまう。ごめんね、もう一度重ねれば「悪いと思うなら、認めなさいよ。あんたの気持ちなんてこの伊織ちゃんにはとっくの昔にバレてるんだから」と静かに怒られてしまう。ああ、やっぱり百年に一度の天才美少女アイドル伊織ちゃんにかかれば私の隠し事なんてないも同然だったか。
/伊織とプロデューサーB


「どうしてミキのことだけを見てくれないの?」
星井さんが無邪気に首をかしげるのを見て私は、やってしまったと冷や汗をかいた。星井さんは私の担当のアイドルではないのだけど、よく私に声をかけてくれる。今日のミキどうだった?新しい衣装似合う?ねえ、ドラマのお仕事で今度沖縄に行くの。私は当然自分の面倒を見ているアイドルのことに手をかけているけど星井さんほどのきらびやかなアイドルは自然と目に入るから聞かれればとても素敵でしたよ、フレッシュなデザイン良く似合いますね、沖縄は暑いでしょうから体調管理に気をつけて具合が悪くなったらすぐプロデューサーさんに言ってくださいね。と当たり障りのない答えを返す。だから、今日の答えには詰まった。当たり障りのない回答とは?なぜなら君は私の担当アイドルじゃないから。あなただけのプロデューサーは私じゃないから。
/美希と美希のじゃないプロデューサー

「私が1番になったらいつか……」
いつか、その後に春香はなんて言おうとしたのだろう。憧れのアリーナライブ、春香はたくさん苦労もしたけどついに成し遂げた。客席の歓声を浴び、仲間からの賞賛を浴び、彼女のライバルたちもきっと何かを得たであろう素晴らしいステージだった。1番って、なんだろう。レベルの高いオーディションを勝ち抜くこと?CDの売り上げが誰にも負けないこと?何かの賞に選ばれること?アイドルとしてのランクが誰にも負けないところまでいくこと?春香にその1番はどこなのか、目指すところはどこなのか聞くことが恐ろしい。聞いてしまって、春香のその答えを知ってしまったら終わりが見えてしまうから。私たちの関係にそこで何かの終わりが来てしまうから。だから、春香。いつまでもその実態の捉えられない何かを目指して頑張ってね。そうしてずっと、私を導いて、私のそばにいてね。
/春香とプロデューサー


「恋とは、このように苦しいものだったのですね」
貴音の大きな瞳からぽろりと涙がこぼれた。知りたくなかった。こんなに苦しい思いをするなら、こんなに胸が痛いなら、一生知らないままでよかった。こんなにも泣く貴音を見るのはいつぶりだろう。今日、貴音の好きな人は結婚した。貴音の好きな人は、愛する人と永遠の愛を誓い、契約のキスを結び、愛の証を交換した。貴音はそれを真近でずっと見ていた。貴音は二人の愛を称え、二人の仲が永遠に健やかでありますよう願った。それが心からの言葉だったのかは貴音を見ていれば明らかだった。貴音は、好きな人に幸せになって欲しかった。可哀想な貴音。綺麗なドレスで二人を祝福したのに、本当は真っ白なドレスを着たかった。可哀想な貴音。好きな人に結婚を告げられたときにどんな顔をしたのだろう。可哀想な貴音。私じゃ幸せにしてあげられないなんて。
/貴音と友人

「名前さんのおかげでボクほんとうにかわいいボクでいられるんです」
真さんにワンピースを一着作ってプレゼントした。ウエストの切り替えが可愛らしい、薄いブルーの夏物ワンピース。真さんはそれを本当に喜んで胸に当てて目を輝かせた。プロデューサー、いつも男の子みたいな服ばっかり着せるんです。事務所で不満そうにしていたところを見たらいてもたってもいられなくて、慌てて工房に戻り二晩で作り上げてしまった。ファスナーは横につけた。動くと裾が軽やかに揺れて真さんのアクティブなイメージを崩さないそれは本当に良く似合うだろう。真さん、デートをしましょう。それを着て、白いリボンのサンダル、手には綺麗なブレスレットを貸してあげる。それにリボンが編み込んである小さなカゴバッグがよく似合いますよ。真さんはすぐさま着替えに行って「えへへ、似合いますか?」って頬を染めて私に聞いた。そうして街へ手を繋いで繰り出した私たちは「あれ、真ちゃん。今日は可愛らしい服装だね」「あっ北斗さん!えへへ!いいでしょう!」「本当によく似合ってるよ。よかったらお茶でもしません?3人で」「えっ本当ですか!名前さん行きましょう!奢りですよ!奢り!」なんて真さんの知り合いに捕まってしまう。ああせっかくのかわいらしい真さんとのデートだったのに!
/真とデザイナーと乱入者

「僕はやっと、僕でいられる意味を見つけました」
今日久しぶりにノイエグリーンをまとった涼くん、いや涼ちんは本当に綺麗だった。聖母みたいに優しげで強くて、そして儚い姿に客席の誰もがみとれて声援を送った。前みたいに高い女の子の声じゃなくて男の子の、今の涼の声をしっかり聞こうと思う。涼、今日は世界一綺麗だよ。本当に、他の誰にも負けないくらい。いや、今日は君こそが1番だよ。私の言葉にステージから戻り汗水漬くの涼は静かに微笑んで、それでも僕の1番はいつだってあなたですと言う。隣に立つのがおこがましいくらい綺麗だ。愛ちゃんと絵理ちゃんの声がして、涼は慌ててアイドルモードに切り替わって「あっ私!着替えてきます!」と踵を返した。自分のステージの余韻に浸る間もない忙しない様子に笑ってしまう。ノイエグリーンだけじゃなくて、ピンクも白と赤と青のトリコロールも涼にはよく似合う。何を着たって、いつだって真新しい君が世界一綺麗だ。これから流れてくる、君の歌う新しいステージ。どこの世界にどんな姿で立っていたって君ほど綺麗なアイドルはいない。
/涼と私

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