10
翌日。朝練の準備のために早めに家を出たというのに、前方には見慣れた姿がある。剣城だ。
真面目だなと感心しつつ、折角なので驚かしてやろうと忍び足で這い寄る。
「誰だ!」
しかしあと一歩のところで気配に勘づかれてしまい、彼は声を荒らげ、警戒の姿勢をとりつつ、振り向いた。
「春咲……」
「お、京介、おはよ〜」
そして私の顔を見てあからさまに顰めた。失礼な。
驚かそうとした私も悪いけれど。
歩幅を合わせる気が皆無の剣城は歩くスピードを早める。
「おい、何故着いてくるんだ」
何故、と言われても。目的地が同じ学校である以上、どう足掻いても同じ通路は使うし、この道程がここからなら1番近い。
「いや、無茶いうなって。目的地同じなんだから」
「違う道を使えよ」
「でもこの道の方が早くつくもん」
「なら、俺はこっちから行くから着いてくるなよ」
逆方面に向かおうとする剣城の腕をがっちりと掴み、そのまま学校の方面を指さす。
「え〜、そんな無駄なことしてないで、せっかくだし一緒に行こうよ」
「誰のせいで…………。ああもう、勝手にしろ」
執拗い態度に呆れたのか、素直に、とは言えないが、諦めたように隣を歩く。ここで抵抗することは無いだろうと見て、掴んでいた腕を離した。
「これから雷門はどうなっちゃうんだろう」
「勝敗指示の無視。結果的に久遠はクビになった。これで雷門は終わりだろ」
「新監督が誰かまだ分からないでしよ」
「新たに監督を派遣するのはフィフスセクターだ。久遠の様な奴や、反旗を翻すような奴を寄越しはしねぇよ」
「ま、それはそうだけど。でもまた天馬くんが何かやらかすかもよ?」
その言葉に剣城は黙り込む。
「その時は、俺があいつを潰す」
本当に出来るのだろうか。
フィフスセクターの「潰す」行為と剣城の思ってる「潰す」行為は同じじゃない。
例えば、サッカー二度と出来ないようにしろ、と命令されれば、剣城なら、完膚なきまでに叩きのめして絶望させることで二度とサッカーを出来ないようにさせるだろうけれど、フィフスセクターの真意は違う。
彼らならきっと、二度とサッカーができないように故障させてくるだろう。
「なんだその微妙な顔は」
「そんなに可愛くない顔してた!?」
「可愛いも何も無いだろ」
「ひっど」
「はぁ。お前だって、逆らうやつのがどうなるかも知っていただろ。それを間近で見る覚悟があったから入部した。そうだろ」
いや、そこまでは考えてないけど。