12
皆が帰った後、円堂と私は河川敷に残ってボールを蹴っていた。日はすっかり暮れ、空は橙色に染まっていた。
少し力を入れてボールを蹴れば、綺麗な弧を描き、円堂の足に吸い付くように渡る。
「お、上手いじゃないか!サッカーやってたのか?」
「昔に少しだけ。パスだけは得意だったんです!」
だって、パスを繋げば、ストライカーはきっとシュートを決めてくれる。だからこそ、私はシュートよりもパスやブロックの練習は人一倍重ねていた。
サッカーは1人でやるものではないし、シュートを決めるだけがサッカーじゃない。後衛がゴールを護ると信じる前衛の期待に応えてボールを蹴るあの瞬間がとても好きだった。
「そうか!…ん?あれって」
ふとベンチに置かれた鞄が目に入る。
「あら、誰か鞄を忘れてますね」
鞄を持ち上げて確認すれば松風天馬と書かれている。
「天馬くんの鞄みたいです」
「はは、忘れて帰るなんて、相当サッカーのことで頭がいっぱいだったんだな!」
「まだ近くにいるかなぁ」
「ま、気付いたら戻ってくるだろう!戻ってこなかったら明日渡せばいいさ」
それもそうか、と思い、頷きながら帰り支度を進める。
帰り支度を済ませたところで、円堂が「そういえば」と話を切り出す。
「お前はどうするんだ?」
「私は、分かりません。あの人が何を考えてサッカーの管理をするに至ったのかも、なにも」
「なら、お前のやりたいことはなんだ?」
「やりたいこと…」
やりたいこと、とは違うのかもしれないが、見たいものはある。あの頃みたいに、全力のサッカーを見たい。何のしがらみもなくボールを蹴る剣城の姿をもう一度見たい。
その気持ちに嘘は無い。
考え込む私に円堂はニカッと笑顔を向け、手に持っていたサッカーボールを投げてくる。咄嗟にそのボールを抱える。
「答えなくてもいい。最初に思い浮かんだことがお前が今、1番望むことだ!」
「…でもそのために何をしたらいいのか分かりません」
「今はそれでいいさ。アイツらを見ていれば、きっとお前が本当にやりたいことが、見えてくるはずさ」
「円堂監督…」
腕の中のボールを見る。
そうだ、今ここで、悩む必要なんかない。どうせ自分に出来ることなんて限られているんだから。私は私のできる範囲やれることをすればいい。
「その、話してたら悩んでたのが馬鹿らしくなってきました。ありがとうございます」
「おう!じゃあまた明日、待ってるからな」
「はい!」
拳を前に突き出す円堂に大きく頷いた。