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泣いている。
ぼやける視界には2人の少年が焦ったような表情を浮かべている。端にはサッカーボールが転がっている。2人にそれを取りに行く素振りはない。
大きい方は誰か大人を呼ぶべきだと判断して立ち上がるが、小さい方に止められる。
小さい方は大粒の涙を零す。大きい方は放っておくわけにも行かず困ったように抱きしめる。
伝えないと。
大丈夫だよ。何ともない。だって痛くないんだから。問題ないよ。
そう声をかけたかった。
体が動かない。動けよ、私の体。起き上がれない。いつも朝はちゃんと起きれるだろ。君が泣いてるところを見ていたくないんだ。泣かせたのは私なんだから謝らないと。
だから、そのために。
君のせいじゃない。そう伝えないと。
雨はやまない。
数年前のことだ。
私と剣城兄弟は公園でよくサッカーをしていた。みんな豪炎寺選手のことが大好きだったから、よく彼を真似てサッカーをしていた。
朝から晩まで、泥まみれになるまでボールを蹴って。
そんな様子で家に帰れば夕香ちゃんは呆れたように、お兄ちゃんみたい、とタオルを差し出してくれた。
きっと、人生で1番楽しかった瞬間だ。
そんなある日、京介が蹴ったボールがあらぬ方向へ飛び、道路へ転がっていってしまった。
「おれ、とってくるよ!」
「わたしもいっしょにいってくる!」
駆け出した私たちを窘めるように優一さんは注意する。
「車が来たら危ないからちゃんと確認はするんだぞ」
京介は少し慌てたところはあったものの、信号はきちんと確認して、道路を飛び出した。
その瞬間、信号無視したトラックが突っ込んでくる。クラクションの音が鳴る。
京介は動けない。間に合わない。
「_____っ、京介、危ない!」
思わず、飛び出してしまった。