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ホームルームの終わりの合図であるチャイムが鳴り響くと同時に、隣のクラスの慌ただしく駆けていく音が聞こえた。
姿を見ずとも、天馬と信助の2人だろうと検討はつく。

「芥ちゃん!」

廊下からは帰り支度をすませた葵が呼びかけてきた。

「今行く!」

待たせる訳には行かないと、そそくさに荷物をまとめ、葵と共に2人を追いかける。

入部テストを経て、合格したのは天馬と信助の2人だけだった。当然も当然だ。後の3人は内心目当てで、せめて諦めずにボールにくいついていけば話は別だったかもしれないが、あの態度は正直見ていられるものではなかった。

そんなわけで、今年の新入部員は天馬、信助、京介の3人のみとなった。
サッカー名門校とはいえども、入学式の騒動のことを考えれば、よく入部する1年がいたとも言えるけれど。


部室には既に先輩達は揃っており、重苦しい雰囲気を漂わせていた。

「どうかしたんですか?」
「栄都学園との練習試合が決まった」

栄都学園と言えば進学校として有名な学校だ。
サッカーに関しては、弱過ぎる、という訳では無いが世間で噂されているほど力のある学校では無い。
練習試合だというのに、この落ち込みようは、勝敗指示か定められた負け試合で間違いないだろう。

「……先輩たち、誰も教えないんだ」

確かにサッカーに対してこんなに熱意のある天馬と信助のに対して、この試合は負けることが決まっている、なんて伝えるのは心底苦痛だと思うけど。

「芥ちゃん、何か言った?」
「ううん、なんでもない!天馬くん達の初試合、楽しみだね」
「うん!沢山応援しようね!」

嬉しそうに両手で拳をにぎりしめる葵を見て、この試合はきっと負け試合になるとは伝えられなかった。

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