人間屋で一味と再開する話


主人公が少し濃いので注意





ここは人間屋(ヒューマンショップ) の地下牢。
基本的に人身売買は法律で禁止されているが、それは表向きの話であり、政府からは黙認されているだけだ。なんせ海軍も職業安定所なんて隠語で呼んでいる。全くもって忌々しいことこの上ない。
諦めたように俯く男、どうしようも無い現状に泣きわめく女、呑気に酒を煽る爺さんに、巨体の男。ここにいる人間は例外なく総じて競売にかけられる。
人生の地獄。もちろん買い取った人間が善良な人間であれば別の話かもしれないが、そんな人間が人間屋に来るなど殆ど無に等しい。

競売の開始を知らせる軽やかな音楽が流れ始める。その音楽に比例して牢屋の空気は重くなっていく。当然だ、これから競売にかけられて成立してしまえば、この一生を奴隷として過ごすこととなり、死んだ方がマシだと思える未来が待っているわけだ。そんな人生を送りたいと思うのなら相当のマゾか変わり者に違いない。
音楽が鳴り響いて少しすると、スタッフが部屋に入って見張りのスタッフに声をかけた。

「二番と三番、準備を」
「了解」

檻が開かれれば、数名の人間が首輪に繋がれた鎖を引っ張られながら、とっとと歩けと乱暴に連れていかれた。

そんな現状に落ち込むわけもなく。そんなことよりも、どうやって情報を得るか、の方が大事だ。
わざわざ・・・・奴隷となる危険を犯してまでここにいるのだから手ぶらで帰るという訳にも行かない。
俺の能力があれば隠密はお手の物ではあるが。
さて、どうしたものか、と思い、顔を上げれば偶然爺さんと目が合う。

「どうかしたか、お嬢さん」

爺さんは酒を煽る手を止め、ニコリと笑う。
堂々としたただずまいからして、只者では無いのは確かだろう。
そも、こんな状況でお酒を飲んでいる時点で気が狂ってるか、ヤケになっているか、度胸があるかのどれかだろう。この爺さんの態度からしても、十中八九後者だが。

「爺さん、これから競売にかけられるってのに肝が据わってるんだな」
「ははは、これでも色々修羅場を潜り抜けてきたんだ。君こそ随分と落ち着いているんだな」
「この錠は海楼石じゃないからな。いつでも外せるぞ」
「能力者だったのか」

手錠にかかった両腕を上げてみせるば、爺さんは感心したように声を漏らした。

「君もなにか目的があってここに来たというわけかな」
「ここの経営者に用があ」

瞬間、銃声と悲鳴で言葉がかき消される。
慌てて入ってきたスタッフは見張りに耳打ちすると、大きく声を上げる。
そのまま彼は不用心にも見張りも置かずに部屋を出ていってしまった。

「騒がしいな。何かあったみたいだな」
からか。さてと、」

巨人族の男の言葉に爺さんは水筒を眺めて立ち上がる。
今が好機に違いないと思い、つられて立ち上がる。

「爺さん」
「ここを抜け出すなら俺も手伝うぞ。」
「私はいい、自分で出来るからな。彼の手錠を外せるなら外してあげなさい。」

「ん、任されたぞ」

その言葉に頷き、巨人族の男に近づこうとすると、慌てて立ち上がる。

「まて、爆発させる気か」
「安心していい。優しく外すから」

爆発とは圧力の急激な発生または開放の結果、熱、光、音などと共に破壊作用を伴う現象だ。爆発する瞬間には必ず衝撃波が発生する。
風が止み、波が無くなり、海面が静かになるように、そうすればいい。
首輪に覇気を纏わせた手を添えて、能力発動の合図をすれば、この通り。

「ほら、問題なかっただろ」

爺さんは満足そうに頷き、男は驚きのあまり目を見開く。

「一体どうなって」
「うん、詳しいメカニズムは説明できないが、簡単にまとめれば爆発の瞬間に能力で爆風を収めただけだ」
「そんなことも出来るのか」
「まあな」

万が一、錠が海楼石だったとしても、抜け出す術は幾らか考えていた。
この状況から脱する手があるからこそ潜り込むという手段を使うことにしたからだ。

「騒ぎを見物したら、我々もトンズラすることにしようか」

爺さんはそう言って笑った。
いや、見物て。思わず俺と男も顔を見合せた。
ろくでもない爺さんを捕まえてしまった奴隷商人達に少し同情した。
そんでもって、こんな調子では目的など果たせそうにないと諦め、ここを後にすることを決めた。







「ほら見ろ、会場はえらい騒ぎだ。オークションは終わりだな。金も盗んだし、さ、ギャンブル場に戻るとするか」

盗んだ金を片手に爺さんはギャンブルに行くつもりらしい。
奴隷を買う金だと貴族はいっていたから相当な額なことには違いないだろう。
人のことを言えた立場では無いが、そんな目的でここにいたのか、この爺さん。

「爺さん、最悪すぎるぞ」
「ああ、本当にタチの悪ぃ爺さんだな。金とるためにここにいたのか」
「あわよくば、私を買ったものからも奪うつもりだったがな。まあ無理な話だった。」

爺さんはそう言い、酒を煽ろうとして手を止めた。
さっき空だといっていたから、もう中身は無いのだろう。

「あっ、そうだ、空だった。まずは酒だな。
 考えても見ろ。こんな年寄り、私なら奴隷になどいらん。」

まあそうだろう。労働力として使えるか分からない年寄りよりも未来のある若者の方が長く使えてお得だから売れやすい。俺だってこんな愉快な爺さん買おうと思わない。爺さんは自分で言ってて面白くなったのか爺さんはフハハハハと笑い声を上げた。
呆然と、いや、呆れている客もいるようだったが、突然の来訪者に会場はシンと静まり返る。

「ん、なんだ。ちょっと注目を浴びたか。」
「なんだ?あの爺さんと巨人にあの女」
「ありゃ、今回の商品じゃないか!?どうやって檻から抜けて…」

そのまま衛兵は俺たちの首元に視線を向けると驚きのあまり情けない声を上げた。

「あぁ!?首輪がねェ!?どうやって錠を外したんだァ!?」
「どうする?」
「どうって…、俺たちは捕獲は専門外だ。錠がついてない巨人なんて抑えきれねぇ…」

階段で倒れている魚人が弱々しい声で爺さんを呼んだ。

「レ、レイリー…」
「おお!ハチじゃないか!そうだな!久しぶりだ!なぁにしとる、こんなとこで!」

そう言いかけたところでハチと呼んだ魚人の怪我に気が付き眉を顰める。

「その傷はどうした」
「こりゃ…」
「ああ、いやいや、言わんでいいぞ」

髭を撫で周囲を確認する。
ステージには人魚の女、その傍には天竜人の女。
客席に貴族は殆どおらず居るのは見物にでも来た客と天竜人、衛兵だけだ。
そして、天竜人は全員気絶している。
そんな馬鹿なことをするやつがこの会場に居たのか。天竜人に同情すると共に、少し嬉しくなった。

「つまり、なるほど。事情は分かった。全く酷い目にあったな。
 お前たちが助けてくれたのか。さて」

爺さんが覇王色の覇気を放った瞬間、衛兵は全員倒れ伏した。
意識を保てているのは俺たちと明らかに貴族では無い見物客達だけだ。

「その麦わら帽子は精悍な男によく似合う。
 会いたかったぞ、モンキー・D・ルフィ」

爺さんは麦わらを視界に捉えると口角を上げた。
その名前を聞いて客席をよく見れば、場違いな麦わら帽子が見えた。
彼らとはアラバスタで別れたっきりだった。仕事で共に行動していただけだが、海軍が近くにいる関係上、下手に見送れば捕まる可能性もあったので遠くから彼らの出航を見ることしか出来なかった。

「ルフィがいるのか?」
「ああ、知り合いだったのか?」
「ん、そんなとこだ」

客席に向き直り麦わらの一味の居る方へ足を進めれば、驚いたような、呆れたような、何しているんだと言わんばかりの目を向けてきた。

「よ、久しぶりだな」
「あら。彼女、アラバスタの時の」

片手をあげて挨拶すればロビンは久しぶりね、と微笑む。
なんだか、見覚えのない青髪と骸骨も増えている。
アラバスタの一件からは結構経っている。あれから仲間が増えていてもおかしくはないだろう。ちょっと見た目がトンチキかもしれないが。

「ああ、お前が政府に捕まっていないみたいで安心した。捕まってたら顔向けできないからな」
「誰に対してかしら?」
「秘密だ。そのうち会えると思うぞ」
「そう。なら楽しみにしてるわね」
「…っていうか」

ナミはズカズカとこちらに歩みより、両手で俺の肩を掴むと前後に身体を揺らした。

「なーんでこんなとこにいるのよ!」
「商品だからな」
「どうしたらアンタみたいのが捕まってるのって聞いてるのよ」
「色々あって。逃げるなら手を貸すぞ」
「わー!助かるぜ!これで安全に抜け出せるに違いねぇ!」

その色々がなにかってって聞いてるんじゃない、とナミは憤慨しているがこちらを心配してくれているのは明らかだろう。
少し弱腰なとこがあるウソップとチョッパーはその申し出に対して顔を明るくさせた。

「ま、事情は後で聞くからね」

ナミそういって肩を叩くと武器を構え直した。

prev  log vita  next