HelloHeart
脱獄後の経緯が若干異なる
Hello,ReTräumerei.のif
ロッキーポート事件の捏造あり。
誠に遺憾である。
恩があるともいえるかもしれないが、これに憤慨しないなんて相当なお人好しか脳みそお花畑だ。なぜなら私の心臓は隣の男に奪い取られてしまったからだ。
比喩などではなく文字通り、
物理的に奪われてしまい、胸には不自然な空洞がある。そして抜き取られた心臓は死の外科医の手中。そう、己の命運を握られている。
「いやだなぁ。こんなか弱い女の子の心臓を盗るなんて」
だからといって命乞いするわけもなく、媚びを売るつもりもない。誰かに遜るのは利害があると思った時か、その方が面白そうと感じた時だけだ。
わざとらしく両手をあげればトラファルガーは私の心臓を徐にちらつかせた。
どくん、どくんと動く心臓は自分の生きている証でもあるが、見ていて気持ちのいいものではない。私のほかにも心臓を奪われた人間がいたらしく、袋の中には大量の心臓が音を立てて生きていた。
「か弱い?いくらガキのナリをしていようが、インペルダウンに収容されるような奴がか弱いとは思えねぇが」
「そんなことないさ。確かにあそこには凶悪な犯罪者達ばかりが収容されていたけど、私は違うよ。収容された罪に関しては完全に冤罪だし、ここにいるのだって縁あって渋々付き合っていただけ」
「ああ、そうだろうな。お前が収容されてたのは別の理由だということは俺も疑っていた」
つい先日まで世界一の海底大監獄、インペルダウンに収容されていた。
収容されていた理由はとある事故の尻拭い。それも冤罪。
つまり私は政府にとって、都合の悪い事故の首謀者を隠すための生贄でもあった。まあ、純粋にその首謀者が私に全面的に罪を擦り付けた、ということもあるんだろうけど。もともとそういう奴なのは知っていたし、それに関してどうこう言うつもりは無い。
政府にとって一番都合が良かったのが私だったのだろう。実際に首謀者であるシーザーと私以外は罪に問われることはなかったらしいので、別の理由があるのだろう。残念ながら全く心当たりがない。これに関してはシーザーにも話を聞いておきたいところである。
「意外だね。このことに関しては政府関係者でも知ってるのはごく一部だよ」
「おれが知ったのは偶然だ。だがそんなお前が奴に従ってるのが理解ならねェ」
理由は色々とあるが、純粋に私ではアレには勝てないからだ。
この世界で生きるには強い奴や戦況を理解している人間につくのが最も安全だし、今回に限ってはその理想が馬鹿げてて面白いから協力しようと思った。それで今こんなことになっているわけなので、重宝する気があるなら助けに来て欲しい気持ちもあるが。
「簡単な話さ。大人しく強いものに従っておくのが賢い生き方だと思わない?」
「生憎とおれはそういう生き方は好きじゃねェ。お前の言うことには共感できないしするつもりも無い」
「それは残念。それで?私の心臓、返してほしいんだけど」
手を差し出して、暗に心臓を返せと示せば、トラファルガーはにやりと笑い、人の心臓を真上に投げた。
最低だ。人の心というものが無いのかもしれない。どこからかお前がそれを言うのか?という声が聞こえなくもないが。人の心があったらこんな風に人の心臓で遊ばないだろう。お前の命は俺が握っているから変な事は企むなよと言っているのかもしれないが。
「そういわれて返す義理はねェな」
「ま、そうだね。ならどうする?」
「脱獄したお前は海軍に追われているはずだ。海軍の連中に心臓をくれてやっても良いが…、選択肢をやる。お前が選べ」
そういって男は二本の指を立てる。
「選ばせてくれるなんて、なんて優しいんだ!」
「今すぐ海軍の連中に渡してやっても良いんだぞ」
「ああ、まってよ。冗談だって。要望はなに?」
「海軍にテメェの心臓を送りつけるか、おれの計画に乗るか、二択だ」
計画が何なのかは分からないが、その計画とやらはきっとろくでもないものだ。
当然ではあるが、話に乗らないなら計画について微塵も話すつもりは無いとみた。
乗るのはリスキー過ぎるが、乗らなければ海軍に命を握られる。
どちらも地獄には変わりなく、なんならインペルダウンの方が平和まであるかもしれない。いや、そんなことないか。どこも地獄には変わりない。
どちらを選んでも人生終わりってことだ。
あの時に出ると決めたのは自分だが、こんなことならインペルダウンの脱獄に協力なんてするんじゃなかったかもしれない。
「それってほぼ一択だよね?」
「ここで心臓を奪われたのが運のツキだったな」
「わかったよ、君の案に乗るよ」
選択肢は無いようなものだ。
海軍とトラファルガー、どちらに協力する方がマシかと聞かれれば断然トラファルガーの方がマシだし、海軍や黒ひげよりもよっぽど
信用出来る。それに海軍に心臓なんて握られたら安心して眠れない。
いや、
どうして信用できるんだ?
そう疑問に思った時にはすでに返答をしてしまい、やっぱりやめようなどというのも恥ずかしいような気がして、無理矢理納得させた。
「それで、計画って?」
「ああ、詳しい話は別の場所で話す。これは取引だ。別に俺だけに利があるわけじゃねェ」
そういってトラファルガーは能力を起動させてどこかへ海賊たちの心臓をどこかへ移動させ、立ち上がる。
「へぇ、それで、これからどうするの?」
「まずはあの心臓を政府に送り付ける」
最悪なプレゼントだ。
凶悪な笑みを浮かべるこの男を見て、乗る船を間違えたかもしれないと思った。
✧
「________こいつを船に載せることにした」
ロッキーポート事件後、ポーラータング号内にて。
トラファルガーは心臓を片手に、船員の前に放り出された。その言葉に船内には大きな驚きの声が響いた。
「……誘拐?」
「いやいやいや!どこで拾ってきたんですかそのガキ!」
「どういう訳だよ!」
「ちゃんと説明してキャプテン!」
「うるせェよ」
恐らくいつものように一刀両断しているのだろう。
その言葉を合図にクルーたちは一気にトラファルガーに駆け寄り問い詰めるように言葉を捲し立てた。
「アンタはいつも説明不足なんですよ!」
「あの事件のついでに捕虜にした」
当然説明不足にも程があるのでほとんどの船員は異論を唱えている。どちらかと言えば報連相をしっかりしろ、というよりも、連絡もなしに捕虜を船内に連れ込むな、ということなんだろうけど。
私でもこんなに説明されたら理解できるかってキレる自信がある。
「ついでェ〜!?」
「手配書で見たことない顔だけどどちら様!?」
「あァ、そういえば政府からお前らが脱獄したことは隠蔽されていたな」
あの脱出不可能な大監獄から脱獄した、なんて政府が堂々と報道できるわけがない。元々賞金首だった訳では無い私は他の脱獄囚たちと違って、しばらくすれば政府から手配書が出るだろうが。
「脱獄って…おい」
「まさかあの大監獄なんて言わないよな」
「いや、無いだろ。賞金首じゃないだろうし」
「あはは、インペルダウンだよ」
おずおずと聞いてきた2人に対してにっこりと笑いかける。
ペンギンと書かれた帽子を深々と被った男とキャスケット帽を被ったサングラスの男は素早くトラファルガーへ駆け寄る。
面白いくらい予想通りの反応だった。
「犬猫じゃないんですよ!?」
「監獄でも元の場所に返してきてください!」
「おれはそんなに拾い物はしてねェだろ」
「え…?」
「そんなことしてるだろ!」
「してねェ」
「してるわ!」
ワチャワチャ騒ぎ始めた3人に頭にバンダナを巻いた女性は溜息をつくと私の前でしゃがみこみ、顔をのぞきこんだ。この船に乗っている女性は彼女1人のようだ。
「男どもがうるさくて悪いね」
「いや、賑やかなのは私も好きだよ」
「でも本当にアンタの顔、手配書で見た覚えがないな」
「私は元々政府に雇われてた研究員。賞金首じゃないからね」
「なるほどね」
そこでようやく話は纏まったのか2人はこちらに向き直り言葉を続けた。
「ま、キャプテンが決めたなら俺たちが反対する理由はねェ…」
「……ねェけど、こう、身の上に関しては知っておくべきだろ!怖いし!」
「嫌だなぁ、そんなに怖い人間じゃないよ」
「自分で言うか!」
「何したか知らないけどあんな場所に収容されておきながら、そんな風にいられる時点で大概だろ!」
「えぇ、こんなにか弱いのに、まさか戦闘に参加しろだなんて言わないよね?」
「逆に聞くが、お前のどこがか弱いんだ」
「身体は枝みたいに細いし、心臓がないからか胸も痛いし」
「そういうわけだ。ある程度はこいつも戦える。襲撃されたとしてもこいつのことは気にしなくていい」
「そんな!」
「今のやり取りだけでお前の神経が大木のように図太いことはわかったよ」
本当にひどい言いがかりである。
世間一般から見れば、あんな場所に収容される時点でまともな人間では無いんだが、私が冤罪で収容されたってこと知ってるのは極小数、というかほとんど居ないんじゃないだろうか?多分、元同僚くらいだろう。トラファルガーに関しては例外である。
「_______というわけで諸々吐け!」
「いや、諸々っていうか事情聴取な」
「とりあえず自己紹介してもらおう?」
「名前は薄。出身は"北の海"だよ」
「俺たちと一緒じゃねぇか!」
「どこの島?」
「各地を転々としていたから、どこの島かは私も知らないけど、生まれた土地はそれはもう綺麗な観光地だったとかなんとか」
「いやどこだよ!」
「私も知らないんだって」
「そっか〜、残念」
「職業は!」
「政府に雇われた研究員。機械技師ってところかな。乗ってる船に何かあったら困るからね、そこら辺に関しては頼りにしてくれてもいいよ」
「船の整備とかできるってこと?」
「そうそう、整備から改造まで、ベガパンクの元で磨いてきた技術は伊達じゃないよ」
途端にあからさまに不審に思っていた船員(この場合、ほとんどの船員ということになる)が立ち上がり反論してきた。息ピッタリである。本当に仲良いなこの人たち。
「……って信用できるかァ!」
「お前船沈める気だろ!沈める気だろ!」
「絶対さわるなよ!」
あまりにも露骨な態度で見ていて楽しくなってしまった。
「仲良いね」
「あんまりアイツらを揶揄うなよ!」
「はいはい、わかったよ。それで、あの監獄を抜けた後は色々あって黒ひげに世話になってたんだ」
世話になっていたというか、まあ、ヘッドハンティングみたいな感じだったけど。彼らも私が裏切るとは思ってなかっただろう。実際私も裏切るつもりは毛頭なかったし。
そもそも裏切るつもりなら最初から誘いにも乗らなかった。
「じゃあ黒ひげの傘下ってことじゃないですか!」
「本当に船に乗せるんですか!?」
「安心しろ。こいつが妙なことを企めば……俺が消す…」
「キャ、キャプテン〜〜〜〜!!!!!」
「おれ、一生キャプテンについてくよ〜〜!!!」
クルーの大半は船長であるトラファルガーのその言葉に感極まって抱きつこうとしているものもいた。無理矢理納得しているものも中には居るだろう。彼自身も満更ではないようで口元には笑みが浮かんでいた。
「…それはそうとして、私も含めて、納得しない船員もいる」
「有用性を示せってこと?」
「それもあるけど、裏切らないという保証が欲しいんだよ」
「心臓だけじゃ不満かな」
「ああ、不満だね」
「おい、イッカク」
イッカクと呼ばれた女性は他の船員に肩を掴まれるか、私を見据える目を逸らすことは無い。
彼女の言うことはもっともだ。
心臓を握られているということで絶対的に優位な立場になっている、なんてことはない。
私とて武力行使をそこまで好まないが、この船に乗る以上、ここの船員を人質にとって脅すことも、向こうが可能性として考えないわけもない。だからこそ彼女の言うことは正しい。
信用出来ない人間がこの船に乗るなら、大切なものを他にも差し出せ、ということだ。
「それなら船長の能力で腕でも足で持っていけばいい。下手に歩き回られるのが嫌なら足を、妙なことをされるのが嫌なら腕を。これでどうかな?」
イッカクは判断を仰ぐようにトラファルガーの表情を伺う。
トラファルガーは何となくこんな状況になるのが分かっていたのだろう。自身の武器を鞘から抜いて、こちらに向けた。
「わかった。足と腕、どっちがいい。それくらいは選ばせてやる」
「なら足にしてね。松葉杖くらいは貸してくれるだろう?」
「あァ、イッカク、それでいいな」
「……あの、キャプテン、私もそこまで鬼じゃないですよ」
最後の反応からして、イッカクは私の提案にドン引きしていたと思う。あの場ではあれが正しい答えだと思ったけど、別のことを求めてたのかもしれない。
✧
雑巾で窓を拭きつつ、外の様子を眺める。濁った水中に反射する銀の鱗。雲のように群れとなって魚は泳いでいた。普通に生活していて水中の様子はそう見れるものでもないので目を惹かれる。
そんなふうにずっと水中の様子を眺めていても良かったのだがこうして掃除をしている。
暇を持て余していたところ、船内の掃除くらいなら変なことを企みようもないだろうということで、掃除を任された。皆の態度から察するに変なことをしないように、という見張りも兼ねているらしい。
モップを片手にペンギンはふと思い立ったように聞いてきた。
「そういえば、政府にいた頃は何作ってたんだ?」
「基本的に私が作ってたのは機械だよ」
政府の人達は基本的に政府の役に立つのであればお金も材料も惜しげも無く用意してくれた。その方が利があるからだろうが、癪だとしても常に研究にはお金が付きまとうので、研究者としてはその支援はとても有難いものではあった。
「へぇ、それってどういうやつ?」
「実用性のある武器が主だったけれど、私が特に気に入っていた研究は人型機械かな」
「人型機械?」
機械関連の発明が主ではあるが、特に力を入れていたのは人型機械、ロボットだ。人間の仕事を代行することが出来れば、人間の負担は減り、時間を豊かに使うことが出来る。パンクハザードにいた頃はそれを目的とし、様々な発明をしていた。
あの研究所ではそういったものよりかは人体実験やらそういったものの方が重要視されていた節はあるが。
「全自動配膳ロボにお掃除ロボまで、生活を豊かにする発明をしてたんだよ」
「確かにそんなものがあれば時間の短縮にもなるし便利だよなぁ」
「それに加えて私はベガパンクに負けないような巨大な人型機械を作りたかったんだ」
「なんで巨大?」
「ベガパンクに勝つにはアイデアだけじゃなく、インパクトが大事!
それにその方がロマンがあるからね」
その説明に不穏な空気を感じたのか、ペンギンは恐る恐る問いかけてきた。
「いやお前、ベガパンクに勝つって物理的な話……?」
「ベガパンクを消すつもりだったのか!?」
そんなことをするのは世界の損失だし、そもそも犯罪だ。
さすがに私もそんな犯罪に手を染める勇気は無い。
「そんな物理的に消したりしないよ。言葉のあやだからね」
「巨大ロボかぁ〜確かにロマンがあるよなぁ〜、クマのロボットとかいたりするのかな〜」
「いるわけないだろ!」
「すみません……」
「なんで謝った!?」
「……いないよな?」
シャチはツッコミしたはいいが不安になったのか、語尾を弱くしてこちらを見た。
もちろんクマのロボットはいない。今はどうか知らないが。
「多分ね」
「多分……?」
「そっか……」
「その巨大ロボってパンクハザードにあるのか?」
「おい!持ってこさせる気か!?や、見たくないわけじゃないんだが…」
そんなふうにワチャワチャ騒いでいると両手に箒と塵取を持ったイッカクがバシンと騒いでいた私たちの頭を叩いた。
「ちょっと、そこ!手止まってるよ」
「ああ、ごめんね。イッカクちゃん」
✧
「暇だね」
「暇って」
記録を取るためにしばらくこの島に滞在することになったが、私が外出することはまずない。
警戒されている私は仕事を任せられるはずもなく、当然のように暇をしていた。たま〜に掃除を手伝ったりはするが、足を持ってかれている現状出来ることはそう多くない。九割くらいは言動が原因だと言われるが、そういう性分なのでやめようと思ってやめられるものではない。
「働かざる者食うべからず。とはいうけど、私が何かすればみんな怪しんで安心できないだろうし」
「一応捕虜だからな、お前。それはそうだろ」
協力関係兼居候という形がいちばん近いが、傍から見れば心臓を取られているあたり捕虜という関係性がもっとも正しくみえるんだろう。心臓とられてなくても裏切る気ないんだけどな〜、とか言ってもみんな信じてくれないからね。
「いや、半分くらいはお前の日頃の行いのせいだよ!」
「そんなに悪いことしか覚え無いよ」
「お前の発言が一々怖いから安心して任せられねェんだよ……」
「うんうん」
怖い発言と言われてパッと思いつくことなど何も無いけど。
このやり取りも何十回目だ。その度に同じような問いが返ってくるのだが、今回は違った。
「仕方ないね。料理でもする?」
上から聞こえてきた声に目線を向ければ、イッカクは丁度買い出しの準備をしていたようで、荷物をまとめていた。
「見張りが入ればいいんだろ?私が一緒に作るよ」
「いいの?」
「よくなきゃ提案なんてしないけど」
「いや〜、持つべきものは友だね。イッカクちゃん、ありがとう」
「別にいいよ。せっかくだし買い出しも行く?この島は平和だから厄介事に絡まれる心配もないんじゃない?」
「イッカクの奴、なんやかんや薄と上手くやってるよな」
「1番突っかかってたのもアイツだったし色々あるんだろ」
「そういうことなので、私たち、買出しに行くね」
どさくさに紛れて買い出しに行く宣言をした途端に私の足を見てペンギンとシャチがギョッとしたような表情を浮かべると慌てて私とイッカクの服を掴んだ。
「まてまてまて!そのまま行く気か!?足付けていけよ!」
「あ、心配してくれてるのかな?ありがと〜」
「ちげェよ!いやそうでもあるんだけど!そのまま出ていったら俺たちが悪逆非道の海賊みたいだろ!」
「でもそう思われた方が嬉しいのでは?」
「確かに悪名高いのは嬉しいけど!」
「てかイッカク!お前も止めろ!」
「それで止まると思う?」
「悟るな!お前が最後の砦だろうが!」
✧
阿鼻叫喚。いや、ちょっと大袈裟だったかもしれない。
ポーラータング号に大声が響く。
「えぇぇぇぇ!?1人で向かう〜!?」
「はんた〜〜〜〜い!」
「おれたちを置いていかないでくださいよォ〜!!!」
前言撤回。そんなことは無い。
咽び泣く彼らの姿はまさに地獄絵図。いや仲間同士の信頼故のこの惨状と考えれば天国かもしれないが。
仲間を危険に巻き込みたくないトラファルガーからしたら、こうやって縋られることに、嬉しく感じると共に、離れがたく辛くなるだけだろう。
「いつもみたいに、『黙って俺についてこい……』って言ってください!!」
「おい、それはおれの真似のつもりか……?」
「似てないぞ」
「5点」
「10点満点?」
「100点だけど」
「残念だったな、ペンギン」
「やかましい!」
「どっちでもいいけど、おれたちも連れてってよ〜!!!」
置いていかないでよ〜!とベポは咽び泣きながらトラファルガーに抱きつく。直ぐに出る訳でもないだろうが、あれでは身動きも出来ないだろう。
助け舟を出すべきか、と悩んでそちらを見れば、助けろと目で訴えてくるのがわかる。
「専門家からの観点だけど」
「なんの専門家だよ!」
「少なくとも君たちよりはパンクハザードに詳しいからね。あの土地は数年前の事故で人が暮らせるような状態じゃない」
「それは散々お前から聞いてたけど、そんなにヤバいのか?」
「ヤバい。少なくともそういう環境に適用や対処のできない人間が行くべきじゃないよ。足手まといになるだけだ」
「ああ、分かってるさ!俺たちがいたらいいように使われる可能性だってある、その方がいいのは分かってる!」
「でも俺たちはキャプテンを一人にしたくないんだよ……」
「…………」
「何もこれでお別れってわけじゃねェ、事を済ませたらおれも合流するから先に行ってろって言ってんだ
俺が戻るまで船のことを頼む……」
「そんなこと言われたらおれたち何も言えないですよ……」
「アンタは一度決めたことを曲げないって理解してますからね」
「でも残念だな〜薄の作った巨大ロボ見れないのか〜」
「あ、私はクルーじゃないから君の言うことを聞く必要はないよね?」
「…………」
「お前も一緒に待機してる流れだっただろ!」
「ず〜る〜い〜〜!!」
「じゃあベポくんも船降りる?」
「お、降りない……」
「おい、ベポを泣かすな」
「最初に泣かしたのアンタですよ!」