薄暮

 彼女への手土産に持ってきた花束は、既に萎れていた。あまりに強く握りすぎたのだ、彼女のもとへ来るまでにあまりにも多くの時間が過ぎ去り、そのために麗しく可憐な花々はその生を終えてしまったのだ。男は女のために買った花を、女に会うより早くに枯らしてしまった自分の不甲斐なさ――無力さの中にその身を横たえていた。つんと熱くなった目頭に、やるせない思いに覆われた身体に、しんしんと沁みるような美しい夕焼けの日だった。椅子に座ったまま朽ちた女の亡骸が、落ち窪んだ眼窩で沈む男を見つめていた。




14.クレイス
椅子/花束/沁みる

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