邯鄲の夢

 それはあまりにも静かで、うつくしい最期だった。涙が出るほどうつくしく、悲しい最期だったのだ。
 夢の衰弱は早かった。邯鄲の夢などという言葉もあるけれども、これはまさしくそういう『一夜の夢』に過ぎなかったと思わせられるほど――そう思わざるを得ないほど、呆気なかった。「あ」と一言感嘆を叫ぶ頃には、もう終わっていた。
 それでも僕達は、その夢に熱を、生命を賭けんとしていたのである。情熱を奪われた心のうちに、虚無感だけが横たわっている。それが何もかもを喪った僕達に遺された、唯一のものであった。



18.哀しいね、二人
衰弱/感嘆/虚無

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