戀について

「まあ何、これは一種の芝居なのさ」
 男とも女とも判断のつかぬ容貌をした人物は滔々とそう語った。
「芝居?」私が問いかけると、彼は小さく頷いてそれを認める。
「我々は今も舞台の上にいる、――」とここで彼は、ある二人のところへ視線をやった。私もそちらへ目を向ける。「連中はいま、一世一代の大芝居の最中なんだ。わたしも君も、巻き込まれて盤上にあるんだよ。ひとつの装置として」
「それはなんというか、」
「迷惑な話ではある。でも仕方がないだろう」
 彼らは灼熱に焼かれている。
「他人のことなど考える暇もないんだから」



22.華が香る時
灼熱/舞台/装置

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