静かな図書館と
最近、今吉が変わった。今吉のクラスメイトに言ってもわからないくらいの小さな変化だと思う。バスケ部を引退して、やることがなくなったように窓の外を見つめていた今吉。頭がいいから勉強する必要はないだろうが、まったくもって受験勉強に身が入っていないような感じだった。
毎日が心底つまらなそうにしていた今吉が最近はなんだか少し楽しそうだ。顔はいつも通りの似非笑いなのに、機嫌がいい。第一図書館で勉強している今も、鼻歌でも歌いそうな雰囲気だ。

「今吉、なにかあったのか?」
「なんやの諏佐、いきなり」

にやにやと笑ういつもの顔。でもそこにいつものような黒さはないような気がする。なんだかやっぱり変だ。

「最近、楽しそうだと思っただけだ。まあ、教えたくないならいい」
「…まあ、おもろいことはあったわ」

それだけいって、赤本に向かう今吉。教える気はないらしい。クラスの奴曰く勉強に集中し出した代わりに、授業も今まで以上にサボる様になったらしい。まあ授業なんてもうあってないようなもんだし、性格と違って頭はいいから、受験失敗なんてことはないだろうし、大丈夫だろうけどな。
今吉が面白い、と思うこと…か。なんかまた、趣味の悪い事だな。
俺は今吉についての思考を止め、手を動かし始める。今吉のこと考えて受験に落ちるなんて冗談じゃない。

 

静かな図書室と
 (いつもと違う元チームメイト)



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