キセリョ成り代わりinWT

今世は黄瀬涼太 in WORLD TRIGGER
前世は「黒子のバスケ」の黄瀬涼太
前前世は何処かの誰か。

 別に期待していたわけじゃないけど、それでもひょっとしたら青峰っちがいたりだとかそんなもしかしたらを期待して中二からバスケを始めた。まあそんな事はなかったわけだけど。キセキの世代がいるわけでもないこの世界ではあっという間にオレはレギュラー。そんでもって全国優勝。所詮、全国出場止まりだった学校が、オレの活躍で優勝できてしまうんだからなんだかな。
 その後は雑誌の取材も馬鹿ほど増えて、ちやほやされるだけで訪ねてくる知り合いはいないし、結論としてこの世界には彼らはいないのだろう。
 ついでに言えば、全国優勝は彼らの代わりに、怪しげな団体を連れてきた。
「ネイバー?ボーダー?」
 聞いたことのない単語にオレは首を傾げる。ひょっとして宗教か何かだろうか。でも目の前にいる強面の男は宗教というより極道って感じだし、となりのヘラヘラしてる同世代は雰囲気今吉さんっぽい。胡散臭くて、一筋縄ではいかない感じが。
マネージャーがオレと引き合わせるんだから、そうそう危険度はないんだとは思うんだけど。
「ニュースとか見てないかな」
「申し訳ないっスけど、最近は特に海外行ったり来たりする生活なんスよね。日本のニュースはネットでパラパラ読む程度で」
 大体、帝光がないって気付いた時点で本当は彼らがいないとはわかっていた。だめ押しでこの半年はバスケをしていたが、キセキの技を使えば使うほど周りの反応は天才としてオレ一人を上げるものだからもういいやと思った。バスケは雑誌のインタビューでもモデルの仕事を理由にやめると答えた。誰からも惜しまれたが、黄瀬涼太としてあるためにやっていただけなので未練はなかった。
「バスケ、本当にやめたんだね」
「そうっスね。全国優勝しちゃったので」
「でもそれが理由じゃないよね」
 迅と名乗った青年はそう言ってこちらを伺った。う〜んこの感じ。まさに今吉さんやら花宮さんやらその辺のイメージと被る。別に理由を隠してるわけじゃないし、いいんだけど。
「まあこれ以上得るものもなさそうだったんで。オレ、見たらできちゃう体質なんス。自分の身体能力を上回らないものならなんでも」
 正確には前前世由来の身体の動かし方と黄瀬涼太の観察眼、動体視力その他諸々の目の良さを複合した物であると認識している。まるっとコピーしてるわけじゃないから、身体能力的には劣っていた他のキセキの模倣も出来るわけ。体質とはちょっと違う。
「君のその能力を、私達はトリオン器官由来だと考えている」
 どうやら誤解されているらしい。ざっとされた説明を要約すると、肉眼では見れない器官が優れている人間には特殊能力を授かる事があり、それがオレの模倣であるのではないかと彼らは予測しているらしい。いやまあ、体質としか言わないオレも悪いとは思うんだけど。
「申し訳ないっスけど、それは多分違うっスね」
「バスケやそのものを君の努力でないと否定しているわけではないんだ。誤解しないでほしい」
「そうじゃないスよ。オレのこの体質なんスけど、これは体質というより経験則に近いので。言葉的に楽だから体質って言葉を使ってるだけなんスよね」
「ほう」
「オレのこの体質は、あくまで相手の動きを目で分析した後に模倣するんス。例えば自分の身体能力では不足するなら他の力で補って真似をするだけなんで、正確にはまるっとコピーじゃないんスよ。誰だって身体の動きを完璧に捕らえられて、尚且つ自分の身体で多少違っても再現可能な動きならできるっスよね?」
 オレの説明に、二人はふむと頷いた。


 日本だけでなく、ついこないだあったパリコレの影響で全世界のファンに惜しまれながら黄瀬涼太は活動休止を宣言した。理由は勉学に励みたいとの事であったが風の噂で黄瀬は実は頭も相当いいのだと聞いた。そんな男が、なんの間違いか目の前にいる。
 ここボーダーだよな?そんでもってオレ達の隊室だよな?思わず室内を見回した。
「おっ、あんたが出水センパイ?初めまして黄瀬涼太っス」
 サラサラと風に揺れそうな痛みのない金髪に美しい顔面。キラキラというよりシャララと輝いている気すらする。出水公平は目の前の男にもう恨むことも羨むことも出来ない次元の違いというものを思い知った。自分もイケメンな方だと思っていたが、これは格が違う。
「キセ、リョ?」
「はいっス。今年からボーダー入る予定なんで、先輩方に挨拶周りに」
「ついさっきまで太刀川さんと模擬戦してたんだよ〜」
「おい黄瀬!もう一戦しろ!」
「え〜オレ出水センパイの合成弾と射線引き見たいんですってば」
 どうやら太刀川さんと仲良くなったらしい黄瀬涼太はその顔に綺麗な笑みを乗せる。なんだこいつ。顔がいい。というかなんて言ったこいつ。
「太刀川さんと、模擬戦?」
「そ〜すっごいよキセリョ。三本取っちゃった」
「十本中?」
「五本中〜」
「は?」
「鋼くんと同じような体質なのかなあ?でもキセリョはリアルタイムで進化するからやばいね」
 太刀川さんに押される形で、室内の模擬戦ブースに消えていく黄瀬涼太を呆然と見つめる。黄瀬は長身の太刀川さんより僅かに低い程度。まだ中学生だったよな、と思わず枯れた笑いがもれた。
「黄瀬涼太って正隊員だっけ、柚宇さん」
「まだ正式にはC級でもないって〜」
「それで、太刀川さんから三本?」
「トリガーはチップも全部太刀川さんと同じやつだよ〜見てなよ、面白いから」
 その言葉を言われるまでもなく、模擬戦室の二人の様子に目が惹かれる。


「あ〜安心してください。村上センパイ、俺の方にヘイト集まるんで生きやすくなるっスよ」
 何でもない顔でそういう黄瀬に村上鋼は眉間に皺を寄せた。年下に、まるで年上のように…いや、社会に出ていたという点を鑑みると確かに黄瀬は村上より先輩なのかもしれないが、そんなことは決して彼に求めていなかった。しかしそれは言葉通りとなった。
 キセリョを辞めたただの黄瀬涼太は、圧倒的な能力と、それに裏打ちされた傲慢さと自信家な面を隠そうともしなかった。キセリョとして求めていた犬のような人懐っこさを、まるで何処かに落として来てしまったようであった。ファンだと頬を染め、笑うボーダー隊員に「キセリョとしてはありがとうございます、って言うとこなんだろうけど、今の俺はただのボーダー隊員、黄瀬涼太なんスよね。そういうの辞めてもらえる?」そう言い放った。

黄瀬涼太は言う。
「あれはキセリョっていう商品っスよ。黄瀬涼太というモデルはあの性格も込みにした売りっスから。セルフマネージメントっス。ま、マネージャーさんの事もカメラマンさんの事も、皆尊敬してるから出来る事スけどね」
キセリョは太刀川慶とも対等に剣を交えた。
「圧倒的に、トリガーのホルダーが足りないんすよね。トリオン量が不足してる訳でもないんスから、欲を言えば全盛りしたいスね」

「やってみろよ」
黄瀬涼太はその均整の取れた美しい顔に笑みを浮かべる。勝気で自信に満ちたその表情に、見下されている事がわかるが畏怖するしか出来ない。格が違うのだ。


「うーんそう遠くない未来の筈なんだけど、俺が見えた黄瀬は更に成長してる。身長が高いんだよね」「?どれくらいっスか」「太刀川さんよりデカいんだよね」「俺が180超えるのまだ先っすけどね。トリオン体になったら身長のびるとか?」「…それかも」「へ?」

「へえ、身長も筋力も弄れるんスか?」「うん。まあ現実から遠くなればなるほど、歩くのもままならないけどね」「んじゃ、俺のデータ弄ってもらえないっスかね?」「…今の話、聞いてた?」「あと三年後の姿、身長は189cm 体重は77kg 体脂肪は6.4パーセント。バスケットボール選手らしい筋肉の付き方っス」「…随分具体的だね」「それが今の俺が扱えるピーク スからね。もう四年くらいはそのまま扱わせて欲しいっス」「適宜調整は必要だけど、黄瀬がそこまで言うならやってみようか」「っス!流石寺島っち!」


前前世はクソほど冷めてる男。所謂、ギフテッドであった。
黒バス世界ではキセリョとして存在するべきかという使命感(暇つぶしともいう)に駆られていたが、この世界ではどうでもいいので完全に素を出している。
黒バス世界ではキセリョらしくあろうとはしていたものの、中2くらいで暇潰しと称して黒染めして東応大模試受けたりしてる。この世界がどんなもんか力試ししたらトップだった。花宮真にバレた。霧崎第一に誘われるも「黄瀬涼太は海常高校に行くって決まってるんスよ」で断る。「でも大学は同じ所行ってもいいスよ?東大か、いっそ海外でも行っちゃいます?」
難しい本読んでるところ見られて「役作りっス!」
桃井に「きーちゃんのデータは完璧に予測できるのよ。他の人はまだ予測にブレがあるのに。マネするプレイスタイルだからかな」って赤司が聞く。
なんとなく悟る赤司に「俺はお前を一番敵に回したくないよ」って言われる。買い被りすぎっスよ!って言う。

ワートリ知識なし。気付けばワールドトリガーの世界へ。
モデルとして適当に生きればいいか。と思っていたら、ボーダーにスカウトされた。でも少なくとも今年のパリコレは出るのが決まってたから、高1からでって事にさせてもらった。

どうやら「あー俺、一度見たら大抵何でもできるんスよね」という言葉を検証したという番組を見られたらしい。→バスケ、サッカー、テニスなどスポーツから書道、ピアノ、料理までありとあらゆる分野においてやらせでも凄過ぎると話題になった。

広報に組み込まれそうになるも「嵐山隊喰っちゃいますけど、問題ないんスね?」の一言で見直しとなる。

SEは強化動体視力、Cランクの強化五感。黄瀬はその驚異的な視力によって模倣を行なっている。



katharsis