A pillow is ...



 私がスモーカーさんと生活してる時に、一番違いを感じる部分ってどこだと思う?
 横で眠りかけている彼に聞いたとして、ふざけながら"正義感"と笑われる未来が見えた。きっとまともに取り合ってくれないだろうから、男前の傷跡をそろっと撫でて起き上がる。
 私たちの差異は、それはもうこの世のヒトの数だけ違いがあると形容しても大袈裟じゃないほどあって、まあ意見や性格の合わないあわない。ちぐはぐのツギハギだ。
 だから見当がついたとて、ひとつに絞るのは至難の業なんじゃないかと思う。でもそれを汲み取った上でわかってほしいのが、心底にある本音だった。とはいえこの差で損してるのって私だけだから、無理かもなぁ。

「……おい、なにモゾモゾしてんだ」
「んー、まくら、やっぱ自分の使う」
「あ?おれのデケェんだから隣に頭置けるだろ」
「やだー」

 私が気になってしょうがないそれのヒントは、目の前に広がっている大きな四角。首が痛くて答えを焦らす気にもなれなかった。
 だって209cmだよ、スモーカーさん。体格差がすごいでしょ。縦も横も厚さも。私たちの圧倒的なそれって、笑いが出ちゃうくらい違う。
 今私を捕まえようとしてくる腕すらも、なんか良い表し方ができないんだけど、とにかくゴリ太い。
 2m越えのヒトなんて世界中にわんさかいるとわかってても、やっぱり暮らしてみると自分の小ささをもろに実感する。
 パッと置かれた物の位置が高いとか、視界が違うから自分目線での会話をしたら、2人してハテナになるとか、お互いの服を1着たりとも共有できないとか。その中でも格段にきついのは、枕が合わないことだった。

「だって高いんだもん。毎朝首いたいんだよ」

 スモーカーさんの背中の筋肉がゼロだったら、高さも変わらなそうだし、同じ枕で良かったかもしれない。
 だけどね、私たちって寝転んだ時の首からベッドまでの距離が全然違うの。なんなら私は少し折ったタオルを枕にしたって寝れるくらいだけど、スモーカーさんは体の分厚さがバカだから、枕もその隙間を埋めなきゃいけない。

「ほら、これ。私の枕3個重ねたら、やっとスモーカーさんのになる」
「アァ゛……?」

 凄んだ声にギョッとして横を向くと、怖い顔が目前にあった。出かけた声は音にもならず、空気と一緒に肺に逃げる。渋そうにして枕を横目に見ている顔に、私はやめてよとは言えない空気を察知して黙った。
 そのまま言えずにウジウジしていたら、目を逸らした瞬間私の枕がグシャッと掴まれて。掴まれて?ヤダ野蛮。
 目先の骨太い指にいや〜な予感がし、先に自分が言葉を詰めてしまおうと口を開いた。寝てしまえば私の勝ちだ。このディベート、勝機はいかに。

「スモーカーさんの枕、横にも大きくて私の枕が置けないから、ちょっと場所ズラして寝るね。んーと……肘くらいのとこに頭置くから、エルボーしないでね。じゃあおやすみ……いたぁい!」
「あーわりィ、早速やっちまったな、悪気はねェ。……ま、こりゃ寝てる時も当たっちまうだろうな。意識がないから勢いも殺してやれねェし、おまえにはさぞかし痛ェだろうが。どうする、そこで寝ねェ方がいんじゃねェか」

 珍しく饒舌、それもさっきまで眠りにつこうとしていた男が畳み掛けてくるので、私も処理が追いつかず困惑してしまった。するとぽかんとしてる私を放って、小さい枕が部屋の隅へと飛んでいく。ああ、ああ。

「こっち寄れ」
「投げる必要あった?」
「さァな。だがこんな会話こそする必要がねェ、寝ろ」

 吐き捨てるセリフとは反対に、私の脇の下に手を入れ丁寧に真横へ運ぶ、なんだか格好のつかないスモーカーさん。こんなところも大好きなんだけど、今日は手段を問わないごね方で情けないような。もしかして、あたまを一緒の場所に置きたいってだけでこんなに必死なの?

「だって首も肩も痛いの〜!スモやんのバカ」
「やめろ。じゃああれだ、ここに頭おけ」

 ポンっと出された"ここ"に目をやれば、さっきディスったゴリ太の腕が。スモーカーさんって頭悪いのかなぁ、なんて思わずにいられない。し、実際にそう言いたすぎるのに、ちょっと恥ずかしそうに腕枕を提案してくるから言い出せない。それ枕とほぼ同じ高さじゃないですか。硬さなんか枕に勝っちゃってるよ。

「あー……もう」
「なんだコラ。おい、腕噛むんじゃねェ、歯折れるぞ」
「んー……スモーカーさん、大好き」
「……んだ急に……」
「だいだいだいだーいすき」
「……おう、おれも愛してる」
「だからね、愛はこんなことで枯れたりしないから、私自分の部屋で寝たい」

 恐る恐る視線をあげると、すっごい怒っていそうな、それでいてすっごいかっこいい鳶色と目がかち合う。こんなのもう海賊見てる時の顔と変わらないじゃん。
 でもどんな状態からでも海軍モードになれるのって才能だよね。だとすると、どうやって逃げようと真っ先に考えてしまう私も、また海賊の才能があるのかもしれない。
 そんなことを考えていたら、スモーカーさんのおっきくて太くて長い足にお腹を挟まれ、身動きを封じられた。潰れたカエルみたいな声を出したらようやく笑ってくれて、ぶすくれた私の横腹にまた両手を入れてくる。突然の抱っこに驚いて暴れると、続いて何故か高い高いされた。下で大口開けて笑ってるスモーカーさん、頭おかしい。

「なに、なに!こわい!」
「はァー…………はっ、笑った」
「えーもうなんなの、良かったね?」
「ん」

 そうして降ろされた先はスモーカーさんの体の上。枕代わりのおっぱいが気持ち良い。ぷにぷに。これが噂に聞く筋肉布団かな、至福の時ってこういうことかな。理性が温もりで溶かされていきそうな。
 でも待って。

「ここで寝ろってこと?」
「ああ。…………あんま触んじゃねェ、寝れなくなんだろーが。……うぉッ!?言ってるそばから触んじゃ……!ん、てめっ、吸うな!!やめろ!!」
「やだ。枕も使わせてくれないで寝る場所も決められちゃうなら、私にだって自由にできる権利がないと不公平!あっ、乳首勃ってきたかわいい!」

 私のよりまぁるく広い乳輪の上にそびえ立つ、肌色に近いぷっくり乳首。なんでこんなにおいしそうなの。
 広い胸筋の上で両手を広げて彼を虐める私は、きっと今みすぼらしく写ってるんだろうけど、それより情けない状態になってる男が下にいるから気にしないでおく。
 唾液でコーティングされた乳首をつまんで弾いた。

「んっ、ぐ、くっ……はぁ……」
「かわいい、だいすき。ねぇ私以外にこんな可愛い顔みせないで」
「ばかか……っ!あ゛ッ、くそ、ひっぱんな……!」

 ふにゅんふにゅん、と私の舌に押しつぶされるそれがおもしろくて、ミルクを舐める猫みたいにずっとぺろぺろ舐めつづける。スモーカーさんはこんな私にめっぽう弱くって、口でなんと言おうと止めてくることがないのが本当に愛おしい。
 ここで私が「おいしい」と言おうと「ミルク出して!」と言おうと、ちょっと椿色に染まった顔で、「うるせェ……」と言って、それで終わるのだ。
 スモーカーさん大好き。の意を込めて、乳首をちゅぱっと吸い離した。私の唾液をまとったそれはテラテラ光って、かたくなってて、尖ってる。ちょーかわいい。

「はぁ……あ、はぁ……」
「ねえ、だいすき」
「ん、あァ…………お゛っ、やめろっ」
「やぁだ、意地悪するから反撃してるだけだもん」
「うぉ、お゛っ、はぁあ……っ、あ゛ッ」

 低く色気のある声を出す口端から涎が滲んでいる。分厚くカサついていた唇を舐めたら、すぐさま舌が絡んできた。
 何でこんなことになったんだっけ?と思いつつも、久しぶりのドロドロなキスに興奮しているから謎解きは後回し。もちろん指で乳首をいじるのも忘れない。

「ん゛う……、ふ、うっ……、ん゛っ、ん」
「ん〜〜……あ」

 そうだ思い出した、枕の話してたんだ。ていうかもうこんな時間だし。早くどこで寝るか決めて眠りにつかないと。

「ん…………あ?なにやってる」
「そーいや寝ないと間に合わないなって」
「……まだ日超えてねェぞ。早起きしたって5時間も眠れんじゃねえか」

 ぶっきらぼうな物言いとは裏腹に、スモーカーさんは珍しく私の指に自分の指を絡めて甘えてくる。きゅん。かわいい。でもだめなの。私寝ないで仕事行くのできないタイプの人間だから。
 よっこらと立ち上がって小さい山から降りる。チラッとスモーカーさんの方を見ると、呆気に取られた表情で、空を掴んだ手をわなわな震わせていた。
 隅でひとり泣いてた枕を取って、彼の横で寝転び、ぴったりくっついてくる温もりに瞼を閉ざす。久しぶりの自分の枕に首は泣いて喜んでるし、ダーリンのおっぱいも吸えたことだしちょー幸せ。今のさいっこうな状態のまま眠りについて、明日も仕事頑張ろー!

「んっ……くぅ……なまえっ、あ、はァっ」
 
 結局スモーカーさんのオナニーで起こされて、寝坊するんだけどね。


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