誰も助けてやれない仙子

※仙蔵とモブ女のセックスシーン(無理矢理)があります











「仙蔵が三日も帰ってこないのはおかしいと思わないか。土井先生に関しては、先生方で何か秘密裏に動いてる可能性があってもおかしくないが」

 同室の文次郎は、仙蔵の不在を妙に感じている旨を、六年が集まった部屋で話す。それには全員が同調した。すると伊作が口を開く。

「土井先生と合流して、一緒に調査をしてる線も考えられないかな?」

 留三郎が肩を竦めた。

「良いところで切り上げてくればいいものをここまでやるか?倒すならさっさと倒す。作戦を練るなら全容を掴み次第、即報告が忍者の鉄則だ」
「……もそ」
「だな長次!捕まった娘たちが生きていた場合、全員を逃がすとなると、経路の確保や後始末に時間がかかるだろう!私は手伝いにいく!」

 それができないからこうなっているんだと全員の目が小平太に向けられた。彼は誰とも目が合わないように視線をズラして、「あ、あしたこそ狒狒は私の女装を見て唸るはずだ!」とどこからくるのかわからない自信で胸を張る。

「そりゃ唸るだろうな、狒狒だから」
「そっちの意味じゃないぞっ!それに文次郎は人のことを言えない!」

 留三郎がプスッと空気が抜けたように笑って馬鹿にすると、あっという間に部屋はいつもの騒々しさに満ちたが、やはり収まった後に感じる寂寥は仙蔵の不在のせいであった。






 そんなことは露知らず。仙子として生きて三日目の彼女は、変わらずの獄中で名前の話に付き合ってやっていた。あわよくば彼女を居座らせて、町に出さず、これ以上の被害者を出させまいとしているが、仙子のおかげで心は満たされたとて、肌は潤わないというのが名前の考えだ。
 それに加え、ある程度の主の好みなら、崇拝者であり守護者でもある忍者達が知っている。つまりはいつだって女をこの城に運んでこれるのだが、仙子は未だ、それに気づいていない。

「もう、名前さまったらおかしいわ」
「……仙子の笑った顔って、本当に綺麗……もっとよく見せて……」

 鼻がくっつきそうな程近寄って、恍惚な表情を浮かべる女に、仙子は「よしッ!」と太い声で拳を握りたくなるが、我慢して「よしてくださいな……」と恥じらうフリをする。今夜も犠牲者は増えないだろうと、女に微笑んだその時だった。
 矢羽根を聞き取れるほど発達した仙子の耳には、若い女の悲鳴が聞こえてきたのである。この部屋から遠くはあるものの、敷地内には確実にいる。一体誰が、だって狒狒は、私の目の前に。そうして動揺を隠せない瞳で名前を見ると、彼女は既に部下であろう誰かの仕事ぶりに感嘆してここを去ろうとしていた。
 即座に裾を掴んだ仙子に、女は振り返る。

「あ、ご、ごめんなさい……。さみしくて、わたしったら」
「……かわいい子。大丈夫、それなら連れてきてもらうから」
「は、え」

 名前が合図を出すまでもなく、これだけの会話で意図を読み取った部下は、口に布を押し込められ涙する娘を、荒々しく牢屋内に入れる。混乱する仙子を気にかける者は誰もいない。ただ、自分への興味を、用済みだと言うように無くした名前を、恨めしく思った。
 震える娘を宥める女の声は、初めて聞くような甘いあまい声で。娘はその女こそが、誘拐された元凶であるにも関わらず、後ろの忍びから守ってくださいと言わんばかりに女に飛びついた。彼女の美しさはそれほどのもので、この歪な空間で唯一安心感を放っている。それこそがおかしな話だというのに。殺気を放つ物騒な忍者と、鎖に繋がれた自分の間で、優しく笑いかけてくる女のどこに安心できる要素があるか。

「よしよし、落ち着きなさい。ほら、これ外してあげるから。ただし、外したら静かにすることよ、いい?」

 娘がこくこくと何度も頷く。仙子にはこれから何が行われるのか検討もつかないが、一先ず娘が即死を避けただけでも万々歳である。

「ふーっ、ふーっ」
「だいじょうぶ。ほら、抱きしめてあげようね。……はい、取れた」
「おっ、おたすけくださいっ、おたすけ」
「しーっ。いい子にすれば、ここから逃がしてあげる」

 娘の瞳に希望が宿る。それを仙子はまさか、と驚いて女を見やった。

「おねえさまとでも呼んでもらおうかしら」
「お、ねえ、さま……おねえさま……私わるいことはなにもしておりません……お願いですから、どうか……」

 震える足で、必死に胸に擦り寄る娘。女はそれが大層気にいったようで、そのまま娘の唇に口をつけた。仙子より少し若いくらいの子だが、今ここで女を拒絶しようものなら即殺されてしまうというのは理解しているようだ。泣きながら、狂ったように口付けに応えている。どんどん激しさを増していくと、仙子は彼女達の綺麗で艶やかな姿にいつの間にか興奮を覚えた。

「いい子ね、接吻も慣れてなくてかわいらしい。足は開ける?」

 女の手が娘の浴衣の中へ侵入していく。細長い指が娘の中を擦る音が聞こえてきて、さすがの仙子も目を逸らした。娘は絶望的な状況にあることを忘れようと、女の首に手を回して集中しているようだった。女同士でことに及ぶなんて、奇妙で仕方がないのに、この娘もよくここまで応じられるものだと、仙子は感心すらしたが。

「あ、あっ、おねえさまっ、そんなとこ舐めないでえ」
「イヤなの?こんなに蜜が溢れてくるのに。……ふふ、また綺麗になってしまうわ」

 そう言うと名前は娘の愛液を指ですくって、仙子の口先へ持って行った。その顔は興奮に満ちていて、いやらしい匂いとわけのわからない空間が仙子の理性を削いでいく。
 しかしいくら綺麗な町娘だからと言って、知らない人の体液なんて口に入れたくもない、というのが仙子の正直なところだった。

「あら、見て。貴女みたいなふしだらな女の汁はお断りですって」

 仙子を一瞬ギラりと横目で睨んでから、娘を辱めることにした名前。対して仙子は、この後どんな仕置をされるかを想像すると身の毛がよだった。急いで女の濡れた指を咥える。

「んっ、ふ、れろ」
「ふふ、良かったわね。お腹を空かせた鯉みたいに食いついてるわ」

 ありえない屈辱に耐えながら、知らぬ娘の愛液を口いっぱいに感じ、舐めとれたあとも尚名前の指をしゃぶると、女はたちまち仙子への見る目を変えて、今度は「えらいえらい」とそっちを構い始めた。

 仙子を女性として扱う名前は時折胸を触ったりもするが、全くと言っていいほど快感はない。それが仙子にとってちょっとした困り事になっていた。
 隣で束の間の休息を得ている娘のように、胸で感じることができたのなら、女性であったのなら、もっとこの女を喜ばすことができ、被害を最小限にできたのではないか。乳首を舐められている間にもそう考える仙子だが、本当に女であったのなら、今頃湯船の中の数リットルに変わっていたのだから、諸刃の刃である。

「ん、ン……ふっ……」
「かわいい……胸があればもっとかわいいのに」
「そ、そんな……私がんばりますから……」

 娘に完全に背を向けた女を仙子は必死に受け止める。三日間、時々間違えながらも、ここまで女の機嫌を損ねずにいたというのは快挙であり、忍者である仙蔵だからできたことと言っても過言ではない。
 そして悲しきかな、娘はただの娘であった。少しばかりの勇気が備わった。
 それはつまり、仙子よりも何倍も簡単に、脳が麻痺して状況判断ができなくなってしまい、平衡感覚すら失って、アドレナリンが分泌されていくということ。娘の頭には、女が背を向けている今が好機だと、戦うか逃げるかの二択だけが残り、呼吸を早めた。明らかに勝ち目のない状況で逃げ出してしまうのも人間の本能である。
 檻をくぐって抜け出すことができた娘だが、軽蔑の目を向ける忍にすぐ捕まってしまった。

「あ、あ……やだ、やだやだっごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ」

 名前からの寵愛を拒否した娘に、忍びははらわたが煮えくり返るような気持ちになった。
 娘は手を拘束されるとまた女の前に連れていかれ、顔を青ざめさせる。

「お、おね、さま、ごめんなさっ」
「意味のない謝罪ばかりする舌はいらないでしょう」
「イヤっ、やめてッ」

 仙子は熟考する。高速でさまざまなパターンを頭に繰り広げては、毎回誰かしらが殺される未来しか読めず、何度もやり直す。どう頑張っても娘が助かる方法なんて見つけ出せやしない。せめて生きたまま舌を切られてしまう苦しみからだけでも、救ってやれたら。

「やら、やらぁッ、ひっ、ごえんらさっごえッ」

 舌をつままれて、まともに喋れない娘。瞳孔が大きく開いて、最早誰か謝っているのかもわからないほどに、これからくる痛みに恐れている。

「おまえみたいな中身の醜い女の血はどっちにしろ使えないね」
「まっ、まってください名前様ッ!わたしが代わりに罰を受けますからッ!」

 鎖に繋がれた体では、これが唯一仙子にできることだった。
 そして仙子はまた少し、間違えてしまった。

「それなら、生意気なおまえにも罰を与えるから。……コレの罰はコレが受ける」

 女がそう言うと、忍は無慈悲にも娘の舌を切り落とした。悪夢のような光景に、娘の悲鳴が加わって、べちゃりと落ちた舌は仙子の脳裏に鮮明に焼きついた。
 口から大量の血を吹き出し、過呼吸で今にも窒息死しそうな様子の彼女を、名前と忍が抱えると、今度はそのまま仙子の方へ近づいて。そしてあろうことか名前は仙子の陰核──つまりは男性器を掴み、無理やり擦り始めたのだ。勃たせることなどこの状況下では不可能だが、"切り落とす"と脅されれば頑張る他道はなく、辛うじて芯を持った程度にまで大きくさせた。
 これがどう使われるかなんて、両者想像もしたくないだろう。

「あ"……ア"ァァア"ア"ッ!」
「ぐ、そんな、やめて"くれ"ッ……!たのむから……!」

 口から下を血まみれにした娘が、自分の性器を無理やり股に入れられて、放心状態のまま忍に動かされている。血と涙と唾液と汗、何もかもが混ざって、下にいる自分に垂れ、いくら感情を抑えることが出来る仙蔵でも、これには精神に異常をきたす。女のふりなんてできるほどの冷静さは、もう残っていない。

「ア"ぁ"ぁ"ーッ……ガヒュ、オ"ァ……」
「お"、ぇ"ッ……やめ"て"くれッ……あ"ッい"た"い"ぃッ、かのじょが、し"んでしまう"ッ」
「……ア"ッ……いぁ"イ"……」
「すま"な"い"っ……わた"しにはっ、どうすること"も……っ、はァ"ッ……だれか"っ……す"まない"ッ……すまない"……ッ」

 仙蔵の思考回路は既に故障している。視界いっぱいにうつっているこの娘を、痛めつけている犯人は自分であると。娘の奥で笑っている女たちは仙蔵の目に入らず、この地獄には二人だけがいるような気がして、それなら血まみれで強姦されているこの娘は──全部私がやったんじゃないか、と。

「痛い痛いって泣いてるわ。汚らしい男根を無理に入れられて……処女だったのにねぇ」

 仙蔵は完全に心が折れてしまった。負けてしまった。狒狒というこの妖怪に。
 意識のない娘を見ながら、狒狒に責め立てられながら、仙蔵は狒狒に向けるはずであった憎しみを自分に向け始めていた。私が男であるから。私のこの性が娘を傷つけている。この汚らしい性器が。

「これじゃあもう、早く死んだ方がマシでしょうに」
「あ"、あぁ"ッ!すまないッ!すまないっ、もうこれいじょう、くるしまな"いでくれ"ッ!」

 半狂乱になった仙蔵は娘の首に手をかける。細い首をぽっきり折るのは、忍者にとって朝飯前であった。これで良かったんだと自分を落ち着かす間にも、自分の性器を包んだ膣は不自然に痙攣し、やがて止まり、冷たくなっていき、肌で娘が死んだということを感じた。


HOME