捕虜の地獄

※エレンが性奴隷





 もう巨人化するという逃げ道も頭にないようだ。毎晩投薬される劇物に頭をやられたのだろう。予兆は初めて犯した時から出ていたし、今更心配したところでコレには後は、壊れるという段階しか残っていない。これからもう少しだけ、このエレンという青年の体がセックスに馴染むようになれば、自国のため身を扮して戦う戦士たちにお贈りできる捧げ物となる。

「殺しても良かったけど、おまえはこうされてた方がかわいいよ」

 名前の指先が掴んだのはエレンの顎。つるりとした手触りで、彼の顔には髭がない。髪も纏めて結ばれていて、当時会った頃の不潔な外見とは真逆だった。それでも目は以前より廃人化したのを思わせる濁りっぷりな上、名前、と呟く声は正気の人間が出せる声ではないが。

「髪が長い方が女に見えるし切るのは勿体ないかなぁ、どう思う?」
「……好きにしてほしい」
「今おまえの考えを聞くのが私の好きにした結果なの」
「……落ちてくる髪が、たまに、目に入る、から……」
「……切った方が見やすいか、尻で相手してる時に口と手も違う兵士相手するかもだし……」

 会話が途切れ、ハサミを取りに、と離れようとした名前の手が掴まれた。パシッと音が鳴った後の数秒間は緊張が走ったが、エレンの脳内に抵抗の字はないため落ち着いた。
 彼に鎖が付かなくなったのは、数週間の彼女による調教の賜物だろう。名前から与えられる苦痛は逃げようとも抗おうともエレンの身体を潰し続けたのだから、無駄だと悟った脳は逃れることすら諦めてしまい、所謂"学習性無力感"が現れるまでに陥ってしまった。だからエレンは逆らわない。
 辛すぎる日々からこれまでの思い出は消え、最初から名前と2人きりの世界にいると、脳はエレンの心を守るようにして記憶を書き換えている。そして驚くことに、変化があったのは脳だけではない。

「なに?」
「あ、ぁ……っ、ちんぽ、ちんぽください…」
「我慢できないの?ワガママな便器はモテないよ」
「できない……名前のがほしくて、か、体が熱い、はやくっ……おねがいします……」
「前髪切るって言ったのに」
「……」
「はぁ……」

 ため息を吐く名前に背を向けたと思うと、エレンは箱の中からペニスバンドはどこだ、と四つん這いで漁るあさる。しかし装着するタイプの物は装着する者が所持しているのが普通だろう。エレンの手からこぼれ落ちる玩具の中に、目当てのものはかからない。

「ない、ない……っ、名前、なんで……?もう、しないのか……?おれのこと、いやになった……?う、うそだよな、そんなこと……」
「はあ。言うこと聞かないと外に捨てるよ。……まあどっかの物好きが拾うだろうし、肉便器になるのは変わんないだろうけど」
「す、てる……」

 自分の中にいる唯一の人間が、自分の世界から出ていこうとした時、エレンはそれの止め方を知らない。それに加えエレンはストックホルム症候群にもなっているのだ。飼い主である彼女に持ち余すほどの思いを抱いている。捨てるなんて言葉は到底聞きたくない。

「髪……髪、きってくれ……」
「はあ?もうめんどくさいからどっちも持ってくるよ馬鹿。悪魔、肉便器」
「……」






 戻ってきた名前の顔を見た時、エレンの顔は少し和らいだ。どうやら捨てられなかったようだ。それから嬉々として頭を差し出すと、最初に犯すと告げられまた体勢を変えることになった。エレンの散々暴かれた体は無機質の男の象徴を待つ。熱も何もない棒だって、名前がエレンのためにつけていると思うと途端に愛おしく見えてくるらしく、すでにエレンの性器は持ち上がっていた。

「は、っ!はっ…はぁ、」

 誰が見たって頭にパブロフの犬という言葉がチラつく、浅ましい男の姿。暗緑色の双眼に涙の膜が張る。束ねられた髪はエレンが体を揺らす度にパラパラと顔にかかってほどけていく。

「あWっ♡♡あッ♡さけるっ、う"っ♡♡」
「うそつき。私しばらくここが裂けたとこ見てないよ」

 しかしこのサイズがこうして入るようになったということは、軍で輪姦されても余程の大男がいない限りはやっていけるということだ。飽きられない限りは。

「結腸は、どうなんだっけっ、まあそこまで挿れてくる人、なかなか現れないと、っ思うけど」
「ぃ"、っや、やだッ!んぉ"っ、あぐ、うッ」
「奥いや?」
「いやっ、いやだ、ゃ……ぁ、あッ、あ!」
「兵士さん達を他のやり方で喜ばせられるなら、やめてもらえるんじゃない」
「あっ、あ!お願いしますなまえさんっ、おねがい、おねがいッ」
「私じゃなくて」
「なまえさん、なまえさん……っ」

 弱い、それこそ獣に追い詰められた動物が最後に絞り出す懇願の声。小鹿がきゅうきゅう鳴くような音だった。しかし名前と彼は恋人ではない。寧ろ階級には天と地ほどの差がある。つまり遠慮は要らないのだ。

「そんな言い方じゃだめでしょ」
「アWっ、ぇ?……〜〜〜ッ♡♡♡……ァ、はぁっ♡♡ひ、ぃWいW〜ッ♡ちWぬっ♡ち"ぬッ!おW、ぉおWッ♡」
「ほんとだ。髪で顔が見えづらいね、終わったら切らないと……。せっかくの泣き顔が勿体ない」

 うるさい口にディルドをぶち込んで適当に抜き差しするが、結局はくぐもった声が反復するだけで解決策にならなかった。

「んぶっ、ンぐぅッ♡♡んんW〜ッ!ぉ"、あWッ!!」
「ははは、死にかけてる」
「はあっ、がはっ、…ひっ、はぁ…っ」
「じゃあ次は舌出してみて。媚びるみたいに、でも下品に。どうせならマーレのために素敵な贈り物にしたいから」
「?ん、ぁ、あっ、ぁへッ♡♡へっ、はぁッ♡♡♡」

 エレンが未だ精子を吐き出せていないままセックスは終わる。

「ん、ん……?ぁ、なまえ……?♡なんで」
「アンタはもてなす側なんだからイけなくても我慢するの。覚えてよ」

 ここで嫌だと言って蔑まれるより、エレンはパンパンになった睾丸や先走りを出す性器を無視することの方がよっぽどマシだと判断する。自分で処理をすることもしない。

「はぁ……う、はい……」
「髪切るからこっち向いて」
「ん」

 当然床に腰をおろしたエレンの後ろに、椅子を置いて座り、髪を手に取る名前。カウパーを垂れ流したままピクピクと動くそれを笑われると、エレンは耳まで赤くした。まるで恋する乙女のようだが、実際は戦争捕虜である。
 そして何度も地獄を味わってきた筈のエレンはこれから知ることになる。後日名前と別れなければいけなくなる、新しい地獄があることを。悪魔に似つかわしくない綺麗な涙を流して、知ることになる。

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