10

10.  彼らが生まれ、そして住んでいる都市は無機質なコンクリートに田の緑、更に森の緑が混じる都市である。石垣はおろか石畳すら影も形も見あたらなかった。
 大通りは木造建築を利用した土産店やオシャレなカフェ、甘味処などが軒を連ねる。観光客は楽しそうに店を冷やかしたり、土産を選んだりしていた。
「そろそろぞ」
 金茶色の岩で出来た堅い坂道を幾つか渡り、見えてきたのは青空に映える赤い屋根の立派な木造建築。周りを囲む土塀は、所々黄色が濃くなったり灰色がかったりしているもののそれがまた趣を加える、堂々たる佇まいである。
 建物につくと、入り口付近に何やら立て看板が置かれていた。
「初代火影、千手柱間の生家はこちら……だとよ」
「博物館になっておるのかの」
 柱間はがはは、と豪快に笑う。マダラは呆れた顔で彼を一瞥したあと、そのまま入り口へと向かった。
 彼らの靴を履いていない足が歩みを進める度、年季の入った床板が苦しげな音を奏でる。マダラは視線を彼方此方に走らせ、柱間は迷わず歩みを進めた。幾つか部屋を通り過ぎて縁側に出ると、柱間はどかりと座り込み懐かしき庭を眺めた。隣に座ったマダラがぽつりと問いかける。
「随分と手入れされた庭だな。……お前の一族もここに残った者が居たのか」
 柱間はポーチからお茶が入った水筒を取りだした。喉に流し込めば、冷たい物が熱を奪い火照った身体を冷やす感覚を覚える。
「そうだのー、多少は居ったぞ」
 手に持った水筒を持ったまま、針のような青い葉が茂る庭の松の木を見つめた。
「どんな理由であれ、故郷を離れたく無かった者たちも居ったしな」
 柱間がうちはは如何なんぞと、聞き返すと、マダラは両腕を支えにして床に体重を掛けながら目で青空に描かれた雲を追う。
「うちの一族は……まぁ似たようなもんだな」 
 雲は見えない糸に引かれて形を変えながら流されていく。マダラが頭を更に反らせると彼の長い髪が肩から滑り落ちた。柱間は傍らに水筒を置く。ことり、と言う音が縁側の板を振わせた。彼は親友の顔を覗き込むようにする。
「同盟を組む時に何か揉めたりとかは無かったのか」
「あー……そんな気概が湧かねぇほど疲弊しきってたな。寧ろ安堵感の方が強かったというか」
 マダラはあっけらかんと宣ったが、声音には微かに複雑な感情が見え隠れしていた。ふとあ、と声をあげると目線だけ柱間に寄越す。
「なんぞ」
「重役の老爺共が煩かったな」
 ズギャンとでも聞こえてきそうな様子で言うマダラ。柱間は何か感じ物があったのか、遠い目をしながら溜息交じりに言葉を零す。
「どこも似たようなものなのかの……」