2
図書館に付くと二人は手頃な場所に座った。隣の椅子に荷物を置けば、鞄の中の本と椅子が拍子を取る。二人は筆記具を出し、ひらりと置いたレポート用紙を黒く染めていく。
シャーペンが走る軽やかな音が二つ分響いていたが、柱間はふとその手を止め用紙に向けていた目線をマダラに移した。
「マダラ、それ人体図か?」
「それがどうかしたか」
「とび……今イズナ君は何してるんだ?」
「お前んとこの弟とおなじだろう」
「そうか……そうだったぞ」
マダラは言葉を濁す柱間に釈然とせず、ペンを走らせる手を止め、何かを探るように見る。柱間は何か言葉は無いかと広い図書館内に目を走らせた。疎らに見える学生に混じって見えたのは、夏休みの催し物のポスターだった。鮮やかな紅の太陽と対比するように写る青い川。そこで彼は先の講義にて考えていたことを提案することにした。
「マダラ。夏休みに世界一周の旅に出るぞ!!」
「うるせぇ!!」
館内に二人の声が響く。
ずーん。漂う湿気でなめこを栽培し始めた柱間。彼の背後には黒い靄の幻影が立ちこめる。お前もうるさいぞ、と彼が小声で言えば、それを聞き取ったマダラが青筋を立てていつかのように人差し指を柱間に向けながらまだそのウザい癖が直ってねぇのか、と小声で返す。
「何だ藪から棒に」
半目になり口角を少し下げたマダラは腕を机に乗せて体重を掛ける。用紙に少し皺が寄った。柱間は真剣な声音で言う。
「今の忍界がどうなっているのか見てみたいんぞ」
「……ネットじゃ駄目なのか」
「自分の目で確かめたいぞ」
こうなった此奴は梃子でも動かん、と諦めの境地に達したマダラは了承の意を伝える。それを聞いた柱間は、向日葵が朝日に照らされて咲く時のように嬉しそうに笑う。
茜色が差し、世界が紅に染まる。血などは到底及びもしない自然が魅せる芸術がそこにはあった。
やがて夜の帳が降り、家々に明かりが灯る頃。星々は満月に照られ、存在を希薄にしていた。
図書館も閉館の時間が迫り、人が徐々に減っていき空間に二人がぽつりと残される。二人は机に陳列した物を手際よくリュックの中に入れていく。皺が寄った用紙はクリアファイルに挟み分厚い参考本に挟みこむ。席を立ち荷物を背負えば、さあ帰ろう、と二人並んで歩き出した。