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 ふと、柱間が足を止める。何かを考えるように虚空を見つめ、手を顎に当てた。マダラが訝しげに見る中、柱間は何を思ったのか窓の方向に歩き出す。すると次の瞬間、窓枠に足を掛けたかと思うとひらりと飛んだ。
「いくぞ、マダラ!」
「おい待……柱間ぁぁぁ!!」
 柱間の真っ直ぐな髪が名残惜しげに主人に遅れて窓枠を越える。
 過去に散々やらかされた記憶が蘇り、マダラは筋を立てて叫んだ。そのまま窓を越え、灯りが星の海を成す空間に躍り出る。闇夜に藍色がかる髪が舞う。
 散々風に煽られた遊覧飛行を終え、木の葉のように地に降り立てば先に待っていた柱間が豪快に笑う。
「がははは! 涼しかっただろう」
「そういう問題じゃねぇ!」
 尚も笑い続ける柱間にマダラは胸前に掲げた拳を震わせる。
「いい加減にしやがれ!」
「……すまんぞ、そこまでとは……」
 どこかの大きい寺で鐘が鳴った。空気は夏の夜らしくジメジメとして肌に吸い付いてくる。さらに柱間は上体の力を抜き、キノコを栽培し始めた。
 マダラは気まずげに目を反らす。
「いや…そこまで…すまんかった」
「マダラも大概ぞ」
「んだとコラァ!」
 ぼそぼそと返された言葉に何時ものように血管が切れた音が耳奥で響いたマダラは怒鳴り返す。
 何時ものやりとりにどこか可笑しくなり、柱間とマダラは同時に吹き出した。
 一頻り笑った後自宅に帰るべく足先を校門の方へと向ける。校門を通る際、振り返った柱間の目に映たったのは木の葉大学の文字と灯りが灯る、夜でも存在感を放つ赤褐色の大学の学び舎だった。
柱間とマダラは望月が照らし出す田が散見される道を通り、途中で別れて我が家へと戻る。扉を開ければそれぞれの兄弟が飛びついてくる。
「柱間兄者!」
「柱間兄者、おかえり!」
「……兄者、帰ったのか」
「マダラ兄さん、お帰り!」
「マダラ兄さん!」
「兄さん帰ったんだ!」
「兄さん、お帰り」
「ああ、ただいま帰ったぞ!」
「ただいま」
 柱間とマダラは、緩む頬を締められずにそのまま弟たちに抱きついた。体重を掛けられた弟達から抗議の声が上がるが、居間から声が掛かるまで二人が動くことはなかった。