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「あの後あっさり送り出されたんだが」
「俺もぞ」
あんの門の前。荷物は扱い慣れた巻物に中に収納した二人は薄手の長袖にゆったりとしたズボン、下は草履と動きやすい軽装で複雑そうな表情をしながら佇んでいる。二人は生家のある、里から離れた学術都市から夜行列車で移動してきたせいか疲れが見えていた。濃い隈を連れたマダラが荒んだ目を柱間に向ける。
「何故ここから……」
柱間は手を顎に当て、太陽から逃げるように西で輝く明けの三日月に目をやりしばし考え込む。太陽は既に東の空から顔を出し存在を主張し始めていた。
「行きたかった場所にこっちの方が近かったからぞ」
ああ道の途中にこの里があったのかとマダラは一人納得する。
二人はなんとはなしに扉の上に設置されている忍と書かれた看板を見た。赤丹色で書かれた文字は里が出来てからの年月を刻むように所々掠れ、木で出来た看板の板は劣化している所がある。
「随分と此処も……この里が出来て何年経った?」
「さあの……少なくとも百四十年以上ぞ」
「そんなに経つのか……」
「時の流れは速いの」
「そうだな」
二人は増えた顔岩に目を移しつつ過ぎた時を想う。歴史に意識を持って行かれつつ見る景色はまた一味違ったものであった。発展を遂げ、変化を繰り返す里の中にも確かに変わらぬものもあった。
マダラは一番右の新しい顔岩から、左端の古ぼけた顔岩に目を向ける。そこには時が経ってして尚里を見守る初代の顔があった。
「お前の顔岩も変わらんな……ん、あれは誰だ?」
「どれぞ?」
「左から九番目の……」
「あれぞ?……サスケに似ているの。娘ぞ?」
柱間がマダラが指を差す方を見れば夜が追い立てられる紫色の空と、先の大戦でうずまき一族の者と共闘していたうちはの者とよく似た面差しの岩が目に入る。
里を慈しむように見下ろすその顔岩に柱間は感慨深さを覚える。うちは初の火影。その意味の重さは計り知れなかった。彼は隣にいる友に目を向ける。マダラは目に焼き付けるかのようにじっとその岩を見つめ、口を凜と引き結んでいた。
「柱間」
「なんぞ」
「お前の夢はここに繋がっていたのだな」
柱間は眉を下げ、少し困ったように笑うと、静かに言う。
「酒でも飲むか」
「……成人したらな」
マダラは可笑しそうに笑った。ならどこぞで炭酸飲料でも買って飲もうぞ、と柱間がどこか弾んだ声で言うとマダラも同意を返す。そうこうしているしている内に開門の時間になった。手続きを済ませると里の外に出る。そこには砥の粉色や桑茶色などが斑状に混ざり合う砂利の街道が続き、左右には鬱蒼とした森が広がっていて木々が枝葉を太陽に向かって伸ばしていた。