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 二人は足下から細かい粒子が擦れ合い砕かれながら奏でる軽快な音をさせつつ街道を進んでいく。左右の森から小鳥の唄が聞こえてくる。
 柱間は紅蓮に染まり始めた空を視界に収めてぽつりと問いかける。
「のう、マダラ」
「何だ」
 マダラはぶっきらぼうに答えた。柱間は思い出を探すかのように遠くを見つめながら言う。
「千手の里があった場所によってもよいかの」
「別に構わねぇが……俺も昔のうちはの里に寄りたいしな」
 マダラは懐古に浸るように目を細めた。言葉が空気に溶け出していく。街道では二人の足音だけが静粛を裂いていた。
 暫く砂利を転がせしながら飴色の街道を進むと、柱間が朝日が差し込んでいる森の方向へと身体を向ける。短い黒髪が軽くワルツを踊り、足下からジャリと一際高い音が鳴った。次の瞬間、彼は飛びはね音もなく太い枝に着地する。幹に手を付けて支えにしながらマダラを振り返る。
「こっちから行った方が近いぞ」
「森を突っ切るのか」
「そうだの」
 マダラも軸足に力を込めバネのようにして柱間の隣の枝に飛び乗る。高く結い上げた藍の色を宿す髪がつられて舞った。
 木の葉がはらりはらりと眠たそうに重力に従って落ちていく。夜明けの赤は空を紫に染め、葉は赤を憂鬱そうに照り返していた。
 二人が枝に重心を掛ければそれは柔らかにしなり足を押し返す。幼き時から近所の森で遊んできた二人は、洗練された動きで反動を利用して宙を滑るように移動する。彼らが木を蹴れば葉と葉の擦れ合う涼しげな音が響き、木の揺れるかすかな音も聞こえてきて一つの合唱となった。
 凄まじい速度で景色が流れていく毎に柱間は過ぎ去ってしまった日々への郷愁を募らせていく。マダラはかつての宿敵の本拠地だった場所へと赴くことに複雑な感情を抱えていた。
「なぁ……柱間」
「なんぞ」
「俺が……」
「何だ、お前らしくないの。どうかしたんぞ」
「いや……何でも無ぇ」
珍しく歯切れの悪いマダラに柱間は訝しげにじっと見るが、何かを思い出すように青々とした葉に目を向ける。
「……今は戦国の世でも無ければ俺たちは一度死んでいる。気にした所でどうしようもないぞ」
 諦め混じりの声音と共に呟かれた言葉を拾い、マダラもまた目を伏せる。二人の間に何ともいえない空気が流れた。
 暫く木と木を飛び移りながら移動していくうち、完全に日が上ったのか森の形がくっきり浮かび上がってきていた。
「あ。あそこが丁度よさそうぞ」
ふと彼らの前方に切り取ったような空けた空間が出現する。二人はそこに羽のようにふわりと降りた。
 柱間は徐に腰のポーチに手を伸すと慎重な様子で中を探る。そうして出された手の中には……両手サイズの、長方形の包みが入っていた。